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『ソウルメイト』

韓国映画『ソウルメイト』を試写会で観た。
原作である中国の作品も観た。
とてもシスターフッドで、文学的な作品ではあるが、私は感情移入ができずに終わったのが正直な感想である。
ほとんど同じストーリーだが、印象はだいぶ違った。
それを表しているのは、キャッチコピーである。
今回はキャッチコピーから映画を考えていきたい。

中国版『ソウルメイト 七月と安生』

「大好きで、大嫌いで、私の全てだったあなたに。」

ソウルメイト 七月と安生(中国版)

中国版は、句読点で終わっており、「あなたに」何をしたいのか、何をあげたいのかが明記されていない。
私は、このキャッチコピーの主語が安生だけでなく七月でもあるように感じた。
安生が七月がこれから歩むはずだった人生を小説に残すことで、彼女の物語を終わらせないようにした。
七月の娘の瞳瞳のために七月の物語を記しているようにも考えられるし、心の支えを失った自分のためにも思える。
「人はみんなから忘れ去られた時が本当の死」というように、七月が永遠に生きていけるように一生確実に残るWEBに残したのだろう。
七月が主語であった場合、「あなた」は安生である。七月は安生に瞳瞳を残し、七月の人生そのものを残した。
とても嫌な見方をすれば、自由奔放な安生にあこがれながらも、家明を最終的に取られたことに傷ついて、安生の人生を縛り付けるために瞳瞳を残したようにも考えてしまうし、娘を父親ではなく、安生に託すのもそこそこ意地悪なようにも思ってしまう。

結果的に、彼女たちの人生が入れ替わっている。
それを踏まえてみるとポスターは二人を重ねることで、それを暗示しているように見える。

韓国版『ソウルメイト』

「その"秘密"がわたしを強くする」

ソウルメイト(韓国版)

一方で、韓国版は、ミソの言葉である。
「秘密」というワードを使うだけで、少しミステリーさを演出させている。
その秘密がどれだけ大きいものなのか、私は気になり、それを求めてみていた。
そこに私の感情移入ができなかった原因がある。
彼女の「秘密」に正直拍子抜けし、そこまで頑なに「秘密」にすることでもないと感じた。
むしろそれは共有したほうがいいのでは?と感じてしまった。

私の感想はさておき、
「秘密」について考察していきたい。
ハウンが亡くなったことが秘密だと思った。
だが、改めて考えると彼女との思い出そのものが秘密なのではないか。
二人だけの思い出が二人だけでとどめられている限り、それは「秘密」になるのだろう。苦い思い出も楽しかった思い出も、彼女の存在すべてがミソを強くして、明日を生きる活力になるのだろう。

この作品で重要なアイテムは「絵」である。
それに伴う”視線”である。
人の”目”には、真実や強い気持ちが込められる。
ハウンもそのようなことを言っていた気がする。(2週間前に鑑賞したので記憶が曖昧だ)
ハウンが描いたミソの写真は、二人の関係が変わり始める瞬間の象徴なのか。
一番楽しかった瞬間でもあり、一番憎んだ瞬間でもある気がした。
最後のカットもハウンがこっちを見つめている。
それなのに、ポスターは二人が視線を外している。
このバランスが絶妙。

中国版も韓国版のキャッチコピーもどちらも
安生/ミソがこれからも生きていくことを表している。
一方で、それぞれのキャッチコピーから予想できるもの、余白部分は違う。
与える側か与えられる側か、という余白がある。
映画の印象がこれによって、また変わってくるのだろう。

今回はキャッチコピーから考えてみた。
映画の内容からキャッチコピーを考えているのに、逆の作業を行うという、
ちょっと謎の思考をしてみた。
ちょっと楽しかった。

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