ありがとうのつかいかた
2歳の娘の「お礼」が進化した。
ほんのひと月ほど前までは、そもそもどんなときに「お礼」を言うのか、その概念が彼女にはまだなかったように思う。
ひとに何かをもらったり、またはしてもらったりしたとき。親であるわたしから「ほら、『あーと』だよ?」とうながされ、ぽけっとした表情のまま、ようやく「あーと」と言う。一瞬だけぴょこっと、うなづくくらいのしぐさを添えてさ。
意味はよくわからないけれど親のまねをする、そのようすもまた微笑ましい。ただそのときはおそらくまだ、自分の気持ちと「あーと」ということばは、彼女のなかで結びついていなかった。
変化がおとずれたのは、つい2週間ほど前のこと。
娘がしばらく入院していた病院を、いよいよ退院する、その晴れやかな朝だった。
わたしは確か、いつものようにお茶かなにかをコップに注いで、ベッドにちょこんと座る彼女に手渡したのだ。
カップを受けとった彼女は、首をかしげてこちらを見上げる。
そうして言った。
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