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帰路

青々とした田んぼの一辺で

一羽の白鷺が大あくびをしていた

近づくと

白鷺はふうわりと

スキップでもするように飛んで

少しばかり田の中に入った

こちらの様子を窺っている


白鷺を見ながら 田の横を歩く

白鷺は く、く、と首をまわしてこちらを見る

たぶん目が合っている たぶん


白鷺の真うしろにきた

一本の白線になる白鷺

にんげんを見失う白鷺

そうして今度は 反対側に

く、く、と首をまわしてこちらを見る

また目が合った おそらく


にんげんも振り返り気味に 

白鷺を見ながら歩く

首をすうー、となめらかに動かして

やはり目が合っている ほぼ確実に


「じっ」

『じっ』


サア見合ツタ見合ツタ

両者一歩モユズラヌ

御立チ合イ! 

御立チ合イ!


田の横の水路の上をとんぼらが

我関セズ、と舞っている


にんげんは 前を向いた

ふん、と鼻からすこしだけ息を吐いて

(とめていたのだろうか?)

(首がつかれた だけかもしれない)


通り雨は いつのまにか止んでいた

折りたたみ傘を閉じる

もう 振り返らない


自作の本づくりなど、これからの創作活動の資金にさせていただきます。ありがとうございます。