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ソーシャルライブドメインにおける前例のないマーケティングへの挑戦

日本には多くのクリエイターエコノミープラットフォームがあります。特に動画・ライブストリーミング・画像といった領域に絞ってみても、そのプラットフォームのユーザー数は平均にして5,192万人* にのぼります。

*nana music 1,000万人/ニコニコ動画 8,000万人 プレミアム148万/ピクシブ 7,100 万人/ツイキャス 3,360万人/Youtube 6,500万人(各社IR情報より抜粋)

そう考えると、Pocochaはまだまだこれからのフェーズだといえるでしょう。
今回の記事ではPocochaがロングテールプラットフォームを目指す上で、最も重要かつ緊急度・難易度ともに非常に高いと判断しているライブドメインのマーケティング手法についてお話ししていきます。
これまでにもPocochaでは多くのPR施策を打ち出し、その効果を検証してきました。その上で、これから挑戦していかなければならない領域について議論していきます。

この記事の登場人物

エモーショナルベースのサービスは多くの可能性を秘めているが、サービスの価値に気づかせるのが難しい

ーーPocochaのブランドマーケティングが難しいと語る要因は何でしょうか。

水田:Pocochaのブランドマーケティングが難しい理由の1つは「プラットフォームビジネスだから」です。プラットフォームはユニークバリュープロポジションを訴求されたから使うようになる、利用意向度が上がるといったサービスではないんです。MixiからFacebook、FacebookからTwitter、Instagram、TikTokへと広がっていく中で「こっちのプロダクトの方が承認欲求をより満たせる」とか、「画像より動画の方が」とか、「動画の次はショートムービー」とか、そういうものを訴求されてプロダクト利用が進んだマーケティングPR事例はないと思うし、正しいことを丁寧にやっていけば自ずと浮かび上がってくる、最強かつ王道のフレームワークがいまいち効かない。一方で、この手のプロダクトや事業の場合、手本となるようなフレームワークが巷に転がっていないから学習もしづらい。
齋藤:マーケティング的にいうとGAFAのうち3つは「ファンクション」がメイン。Googleは「検索がしやすい」、Appleは「プロダクトが素晴らしい」、Amazonは「買い物がしやすい」から始まっていますが、全て「ファンクションベネフィット」の話です。GAFAの中で唯一Facebookだけが「エモーショナルベネフィット」で「人と人を繋げる」という話をしている。Pocochaも「エモーショナルベネフィット」。Facebookは「人と繋がる」という誰が聞いても分かりやすいサービスですが、Pocochaがウリにしているのは「コミュニケーション」です。「コニュニケーション」は訴求がさらに難しく「あなた、コミュニケーション足りていませんよ」と言われても、その状態をイメージできない。「エモーショナルベネフィット」はそもそも売るのが難しく、その中でも「コミュニケーション」を売るのはさらに難しい、という前提がまずあると思います。そしてGAFAというレベルで言うならば、今のGAFAではなくて伸びていく盛りのマーケティングは特に難しく、Googleが「検索がしやすい」と訴求しても検索エンジンなんて既にいくらでもあるし、Facebookが「人と繋がるって素晴らしいよね」と言ったって、「いや、今も普通に繋がってるし」となるだけでした。Pocochaは今まさにそのステージにいるんですよ。伸び盛りのGAFAのフェーズにいる今のPocochaでPR・ブランディングを成功させるのは圧倒的に難しいと思います。

新規事業と既存事業のブランディング領域と比重
ベネフィットと訴求の一例

水田:例えばエスタブリッシュメントなドメインに「飲料」がありますが、その中でも比較的新しいブランドマネジメントの成功事例として、Red BullとMonster Energyがあります。Red Bullは栄養ドリンクという既存カテゴリをエナジードリンクとしてリフレーミングしたところに大きな功績があるし、Monster Energyは後発ながらも多様化・成熟するエナジードリンクカテゴリにおいて、ある種、ラストムーバー的な成長を実現しようとしているように見えます。どちらも偉大な事例ですが、やはり明確な「機能価値」に裏付けされているプロダクトではある。「機能価値」の説明コストは小さかったのではないかと思います。一方、Pocochaのような「エモーショナル」がベースになるプロダクトは最初から機能価値自体を訴求のしようがないので難しいですよね。
魏:加えて、たとえばFacebookは「実際に自分が知っている人とつながる」という使い方だったので、「エモーショナルベネフィット」の中でもまだ分かりやすかったと思いますが、Pocochaには「知っている人とつながる」という前提がありませんよね。知らない人と時を過ごすことによって、「エモーショナルベネフィット」が増幅していくサービスなので、入り口にあるベネフィットがゼロだと思っています。体験やコミュニケーションも、そもそもそのサービスを触ってみないと分からないものなので、そこを分かりやすく伝えることが必要なんですよね。
齋藤:一方で、社会的に孤独感が取り沙汰されているし、グローバル的にもコミュニケーションが足りていないのは明らかです。「人とのつながり」が多くなっているからこそコミュニケーションの不足を感じやすい面はあり、社会的なニーズもある。
魏:まさにそうだと思います。ただ、ストレートに「あなた孤独ですよね?Pocochaで誰かと話しませんか」と言ってしまうと「別にそんなことないし」と反感が働きやすくなる。「人とつながりたい」という欲求は誰にでもあると思いますが、潜在的であるため無自覚なことが多く、顕在化すると陳腐な言葉になってしまう。人と一緒に体験したり共有する時間が1番のバリューになっていると思いますが、それが価値になり、経済活動にも繋がるって、他のサービスではない。前例がないって改めてそういう部分だよな、と。

キャンペーン化している日本企業のブランディングと一線を画したいPocochaが目指す方向

ーーPocochaのブランドマーケティングがチャレンジングであることは分かりましたが、既存のマーケティング手法ではどうして太刀打ちできないのでしょうか。

齋藤:Pocochaのような新規領域で従来のPR手法が通用しない理由は2つあります。1つは「コミュニケーション」を売っていくような既存手法がなかなかないこと。もう1つは、Pocochaに限らず世の中の変化が早いことで、既存の手法がどんどん通用しなくなっていることです。以前Pocochaで、マスマーケティングがまだ通用する層という仮説をもとに、4〜50代の方々にインタビューをしたことがあります。その結果多くの人はテレビをあまり見ていなかったし、CMも記憶していない、そのメディアに対する信頼度も低かったんです。時代の移り変わりと共に、人々が見るものが変わり、信頼するソースが変わっていきます。そんな状況下で今まで通りのマーケティング教科書をそのまま採用したって全く使えないということです。
魏:一般的には、意識を制して、場所を制して、体験を制しますが、この一連の流れにおける変数が昔と比較しても多くなってきていると感じます。狙っているターゲットに対して、どうレバレッジが効くアプローチができるのか、それを考える上での複雑性がかなり増しています。
水田:確かにそうですね。たとえば、中国企業ってXiaomiとかHuaweiといったグローバル企業は確かにあるんですけど、それらよりもっと小規模のあまたあるサービスにおいてはPRがあまり上手くいっていないケースが多いような気がしていて。たとえば、シリコンバレー含めてその周辺から出てくるプロダクトに共通するのは、ベンチャーマネーで強力な資金力があるにせよそれ以上にPRブランディングやイノベーティブなソリューションやサービス、プロダクトをPRする人材や経験が、市場の流動性の中でそれなりに担保されているように感じていて。同じような価値観の人たちが集まってやっているんだな、というのが伝わってくる。AppleやGoogleは、何かにつけてよく分からない技術にユニークかつ大仰な名前をつけるじゃないですか。 Retinaディスプレイ、Apple A5、Neural Engine、、、。AppleやGoogleはそれらの命名もブランドエクイティとして育てている感じがするんです。それとは対照的に、中国系のプロダクトにはブランドストーリーを感じないものが多い。命名しても、それが浸透する前に別の名前に変わってしまっているような気がして、結果的にどこも勢いと力で押し切っているように感じます。ライブストリーミングサービスは中国が起源で、業界を一緒に盛り上げていく、ある種競合になるサービスのほとんどが中国企業なわけなんですけど、なんか……心許ないなぁ(笑)。
齋藤:今の話をマーケティング的に考えると、そういった企業に多いのはブランディングがキャンペーン化しているパターンです。Appleの例でいうと、AppleがRetinaディスプレイを売り出す時には、後続製品にもある程度活用されていくことが想定されています。一方で、日本企業が採用しているブランディングは「このシーズンのこのキャンペーン」として区切られてしまっているため、期間が終了したら「はい、次」という空気になっています。連続性がないからキャンペーンと化しているということです。ブランディングとは本来そうではないはずなんですけどね。

世界をリードするプロダクトのPR・ブランディングが乗り越えなければならないHard Things

ーーPocochaはブランドマーケティングにどのような理想を抱き、現在進めているのでしょうか。現状についても教えてください。

齋藤:これまでに2つの課題をクリアしていて、これからまだ2つの課題を解決しないといけない。クリアしたものの1つは、他のライブストリーミングサービスとマーケティング手法を差別化したこと。Pocochaには「コミュニケーション」という差別化されたベネフィットがありますが、以前は他のライブストリーミングサービスと同じマーケティング手法を採用していました。基本的に他のサービスは「コミュニケーション」をとることを主眼に置いているわけではないから、「数を集めたら良し」となるんですよね。その手法ではPocochaのベネフィットが伝わらなかったためマーケティング手法を差別化することにしました。もう1つは、リスナー視点がなかったことです。ライバーの話はよく出てくるけど、リスナーの話はあまり出てこない。コミュニケーションにおいて片方だけが満足しているという状態はあり得ない、両方満足している必要がある。2022年の3月から着手して、チーム全体のリスナー理解が深くなったことを実感しています。
水田:そうですね。
齋藤:解決すべきことの1つ目は、前例の少ないエモーショナルベネフィットを売る過程では当然失敗もするし、リスクを取る必要もあるという意識をチーム全体として持つことです。失敗は誰でも怖いし勇気が入ります。でもそこを越えなければ成功もないし、失敗しなければ成功もありません。それを後押しする必要があって、その点はまだまだ足りないと思っています。
これまでメディアといえば、テレビや新聞などの「媒体」と認知されていた時代から、「プラットフォーム」と呼ばれるFacebookやTwitter、YouTubeに移り、今はそこから「人」に移ってきている。リサーチ結果からわかったことですが、「YouTubeを見ています」という人に「何の動画を見ていますか」と聞くと、10年前だったらTOP10に入ってるような動画を視聴していることが多かったのですが、今は人の名前が出てくるんです。人軸で決まったコンテンツを見ている。
ということは、いかにこの「人」をメディアとして活用するか、を考える必要があるのですが、PocochaのPRにおいて「誰をどう起用したらいいんだっけ」と考えても、全然わからない。
その課題とどう向き合い、どういう人が誰にインフルエンスを持っていて、どういう人がなんと言ったらPocochaのベネフィットを伝えられるのか、それを見つけてマッチさせるためのチャレンジをする必要がありますね。
もう1つ解決しなければならないことが、業界を批判するわけではないですが、ここ10年ぐらいでマーケティング業界全体にデジタルマーケティングのようなすぐに結果の出る効率性思考が表れているんです。一方でGAFAクラスは新たに事業を立ち上げていくときに、「マーケティング手法も含めて新しく見つけてやっていこうぜ」となっているケースが多い。なので、精度のいいマーケティング手法の新仮説を立てることができるリーダーシップを持った人材が、チームを牽引しながら実行を含めてコミットする傍ら、自分達の仮説を立証できるパートナーを探していくことも重要です。
魏:確かにそうですね。組織の話は一旦置いておいて、施策部分でいうと、理想からみた進捗は5〜10%程度だと思っています。デジタルの施策においては早めに手をつけていてPDCAも回しやすい環境だったことから、獲得手法や価値伝達の方法、差別化ポイントの訴求は徐々に肌感として掴めてきたなというのが最近の状況です。
TikTokerやライバーを起用するなど、これまでは微妙とされてきていたものが数字として成果を出し始めています。これはまさに前半で話していた「差別化しづらい、伝えづらい情緒的価値をどう伝えていくのか」のヒントになり得てきている。
ただ実態として、それ以外の施策の部分にはあまり着手できていません。大きくわけると、ライブ配信全体とライバーとリスナーの二つの軸があって、「どんな認知をどう形成していくのか」や「どうやって選んでもらうのか」、「どうやって出会ってもらうのか」というような市場形成をもっとやる必要があると個人的には思っています。
Pocochaは今伸びてはいますが、この獲得状況はコロナの影響という外的要因の後押しが一番大きい。自分たちで市場に新しいファクトをマーケティングとして提示できているのかと言われるとできていません。選ばれる必然性や想定できるユースケースを形成して、Pocochaの価値を認知させていく必要があるなって思っています。その施策の1つにナラティブアプローチがあります。

ナラティブアプローチ

水田:自分が抱いている理想というか、マーケットの刈り取りが終わり始めてから、マーケットの拡大を始めるというか、追い詰められてからPRブランディングに注力するみたいなサイクルは脱したいと思っています(笑)。会社とかでもあるけど「そろそろネタ切れか?」みたいになってから新しい商品カテゴリに突っ込むというのは組織としてかなり無理がある。
Appleとかって、ハードウェアベースだとそれなりに苦しいのかもしれないけど、とはいえApple Watchはグローバル的に順調に売れていて、Apple Musicのようなサブスクリプション系も大きな利益を出せていて安泰。
そういった、自力があってそのサイクルが回っている中で、余裕を持って次の一手、次の一手を打てるサイクルに早く持っていきたいですね。
Pocochaの場合はPR・ブランディングに注力するためのチームビルディングとか人材を揃えていく取り組み自体が遅かったと思っていて、危機感をちゃんと持つに至るに時間がかかってしまった。そういった反省があります。
齋藤:そうですね。
水田:そのしわ寄せや負債がまだ残っていて、今やっていることって本質的には人員の採用なので、周回遅れが過ぎる現状があります。採用も、試行錯誤や、良いタレントがいて、良いタレントが活かせるチームビルドが必要です。Pocochaチームとしてより、マーケティングチームとしての組織のありようとして磨き込んでいく必要もある。スタープレイヤーを揃えれば勝てる、というわけでもないから、そこの科学も求められてくる。
そして、良いアイデアを実際に試していく中で、Pocochaとしての正解を検証するのにもそれなりに時間はかかるから、人が揃うこと、チームとして形を成すこと、アイデアを試して正解を発見すること、このいくつかのステップの中でまだファーストステップをやっているところがある。ファーストステップをゼロの状態にして、体全体をセカンド、サードに送りたい。理想は、アイデアを出して試して、が3周くらいしている状態ですが、今は実質1周目というのが現状です。それもアイデアに全力投球ではなくて、関心ごとの半分は採用だったりもする。

前例のないチャレンジができるのはここだけ!勇気と仮説をもって門を叩け!

水田:最後に僕から、言いたいことは1つです。
イノベーティブかつグローバルなプロダクトの価値訴求、PRブランディングは、エモーショナルベネフィットなどの国を問わず普遍的な価値を持つものであることが多いというのは、Snapchat、Instagram、TikTokみたいなサービスがグローバルに通用している以上、歴史的にそういうものなんだろうと受け入れざるを得ないのかなとは思っています。
コミュニケーションやつながりを売るということはFacebookやTwitter、Instagram、Snapchat、Fortnite、Minecraftのようなプロダクトに共通するテーマで、その正解に辿り着くための正しいプロセスは1度見つけてしまうと、あとは磨いたコミュニケーションプランとかPR・ブランディングプランを、イギリス、オーストラリア、日本など他の国でも展開すればある程度解決できるんですよね。
一度離陸してしまえば、一定のカルチャライズは必要だったとしても、その時に得た答えをひたすら配っていけば「ここもここもこれである程度通用するね」みたいな状態になる。
ということは、最初の伸び盛りの時に経験したものがコアで、難易度でいってもそのフェースが1番難しいはず。
今日本にいるほとんどの人材は、そのコアな部分ではなく、ほんの少しのカルチャライズだけをやってきた人たちなはずです。
ヘッドクォーターが日本にあるからこそ、日本からグローバルを目指すからこそ、できるチャレンジがPocochaにはあるんです。

Pocochaの事業領域

失敗したとしても恥じるものは何もないですし、今までのキャリアを否定されるわけでもありません。Pocochaでのチャレンジが一筋縄でいかなかっただけの話です。Pocochaを腕試しというか踏み台にしてもらえるといいのかなって思います。
GoogleやAmazon、Netflixのような企業で日本のマーケティングリーダーとかマーケティングヘッドみたいなポジションにならなくても、Pocochaのマーケティングリーダーないし、リーダーに匹敵するようなポジションで腕を磨く方が採用難易度は低いので、逆にPocochaでキャリアを飛び級する、2段階ぐらいの下克上を起こすぐらいのチャレンジができるのもキャリアとしてレバレッジがかかるオポチュニティだと思います。
社内外からそういう挑戦者を待っています。
ローリスクハイリターンにかけるなら今ですよ。

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