ミカに秘められた楽園
はじめに
初めまして。
エデン条約編が3章前半まで公開された段階ですが、みなさんは聖園ミカについてどう思っているでしょうか?
ゲヘナに憎しみを抱いていたり、ナギちゃんをおバカだなぁと思っていたり、監獄から無事に出られるのか心配だったり、人それぞれ思うことがあると思います。
彼女はトリニティ所属のティーパーティーの一員でしたが、ナギサへの襲撃においてトリニティの裏切り者として姿を現し、今はその罪によって監獄に幽閉されています。
裏切り者としての目的をゲヘナをキヴォトスから消し去ることだと言っていましたが、裏切り者としての言葉や行動に不自然な点も多く、本当は違う理由があるんじゃないかと気になっている人も多いと思います。
ミカの本当の目的……事実からは見えない真実は一体なんだったのでしょうか?
私はミカの本当の目的は「アリウスとの和解」だと思いました。
ミカ自身もそう言っていましたし、先生もそうだと思っているようです。
……そうは言っても本当にそうなのか、もしそうだとしたら今までのミカは何を思って行動していたのかがわからなければそれも信じにくいと思います。
なので、今回は「ミカの目的がアリウスとの和解であるということを前提」にして、もしそうなら今までミカは何を思っていたのか?ということを考えていこうと思います。
もちろん仮定の話が前提になるので全ての話が真実だとは言い切れないのですが、この記事を読んで少しでもミカのことが信じられるようになってくださればいいなと思っています。
最初の話は「ミカの目的がアリウスとの和解なら、裏切り者になるまでに何があったのか」ということを推測する内容になっていますが、その話の一番の目的は「ミカの目的がアリウスとの和解であることを信じられるようになってほしい」ということなので、そう思えるようになれたならそれだけでも十分です。
それでは、前置きはここまでです。
裏切り者になるまで
振り返り
エデン条約編におけるミカは「アリウスとの和解を願いつつも自分のやり方では動けず、アリウスのことをただ信じてしまったからこそ裏切られた少女」なのだと思いました。
まずは先述のとおりにミカの目的を「アリウスとの和解」だとして、物語の始まりから裏切り者になってしまうまでを推測して振り返っていきたいと思います。
ミカの心情にも触れながら推測をしますが、しばらくは振り返りの話になりますので、その時々にミカが何を思っていたのかを想像しながら読むのもいいと思います。
まず、ミカはトリニティの歴史について知り、その中でトリニティ生まれる要因となった「第一回公会議」やそれによってアリウスが弾圧されたことを知ったのでしょう。
そして、アリウスはゲヘナのことが心底嫌いでそれ以外はトリニティとあまり変わらないことや、アリウスはかつてトリニティによって弾圧され、今でも劣悪な環境で過ごしていることを知ったミカはアリウスとの和解を願いそれをティーパーティーに伝えましたが、政治的な理由もあり反対されてしまいました。
アズサの話からセイアはミカの意見を汲み取りアリウスの問題についても考えていたことがわかるものの、それはミカには伝わっていなかったのでしょう。
セイアがその為にエデン条約を推進していたこと、ミカがアズサの転校の話をナギサにしなかったこと、この時点でミカがエデン条約に反対だったことから、ミカがエデン条約によって「第一回公会議」が再現されると誤解してしまったのはミカがアリウスに接触する前であることもわかります。
話を戻しまして、ミカはナギサとセイアの意見もティーパーティーの立場として理解できたため受け入れたもののアリウスとの和解を諦めきれず、独断でアリウスとの接触をしました。
ミカは『お茶会でもしながら、お互いの誤解を解くこと』を願っていたことから最初はそれで和解したいと思っていたのかもしれませんが、相手のことを……特にアリウスの事情を理解できてしまうミカは和解の為だと信じてアリウスのやり方を受け入れてしまい、それによって動くようになりました。
ミカには和解の為にティーパーティーのホストになってもらうことを建前に説明したと思われますが、もちろんアリウスは最初からミカを利用してトリニティに危害を加えることが目的でした。
アリウススクワッドのリーダーであるサオリは、ミカにはアリウス生徒を率いてトリニティを襲撃してセイアを捕らえるようなことを指示しつつも(ミカの説明では「卒業するまで檻の中に閉じ込めておく」とのこと)、アズサには最初からセイアのヘイローを破壊することを指示していました。
その結果、その襲撃が成功したことでミカはアリウスの思惑通りにセイアの襲撃を成し遂げた責任者になってしまい、セイアのヘイローを破壊した責任を背負ってしまいました。
「人殺しは人殺しである」。その重みはセイアがアズサに語ったとおりであり、ミカの心を壊すには十分すぎるものでした。
ミカがアリウスの指示を受けてなかったら最初の状態から何も変わらなかった、セイアの元へ到達した人物がアズサだけであったことからもミカが襲撃に加担しなければアリウスの襲撃は成功しなかったはずですが、ミカはその襲撃によってセイアのヘイローが破壊されたという取り返しのつかない責任を背負ってしまったことで、後戻りが出来なくなってしまいました。
ですが残酷なことに、それだけでは最初の目的だったアリウスとの和解が叶わなくなっただけではありませんでした。
ナギサをホストの座から失脚させてミカがティーパーティーのホストになる。
アリウスとの和解の為に自分のやり方で動けなかったミカに残された道は、アリウスの指示に従い続けることだけでした。
その後、アリウスに従うしかなかったミカは、アリウスからの指示でアズサをトリニティに転校させました。
ミカはアズサに対して和解の象徴になってほしいという願いを込めていましたが、それは本来ならば叶うはずのない願いだったのでしょう。
それから月日は流れ、ナギサがエデン条約を締結させるまであと少しというところに、ナギサの襲撃を遂行する「トリニティの裏切り者」として姿を現しました。
その時のミカはエデン条約が平和条約であると認識しつつもエデン条約で和解ができるとは信じられなくなっており、ナギサの叶えようとしていることを創作の中の明るい学園物語じゃないんだからと、都合の良い話だと、現実には存在しない話だと否定するようになっていました。
そして、その壊れた心で語るミカの目的には、かつての目的は面影もありませんでした。
こうしてミカは行動からその動機まで、元々はトリニティとあんまり変わらなかった、それでいてゲヘナのことが心底嫌いなアリウスを体現するかのような「トリニティの裏切り者」になったのでした。
補足
ミカは感情や言動の真偽がその時の表情や言葉に出やすく、嘘を吐いても綻びだらけです。
ハナコとの会話においても推測がミカの心情を踏まえた時に驚いた表情をし、話を問いかけや言葉に詰まっていないところで遮ったことからもセイアのヘイローが破壊されたことを知って心が壊れたことやナギサがアリウスに襲われることを怖れたことは本当のことでしょう。
当たってないにしても心情を踏まえて話をされるのは気分のよくないことですが、それなら驚いた表情にはならないはずです。
もちろんセイアが生きていると知った時のミカの反応もそうだと思える理由のひとつです。
逆に、ハナコがミカのゲヘナが嫌いだということを踏まえて話を進めていた時のミカの表情には険しさも驚きもなく、ミカがゲヘナが嫌いだという可能性はなくはないですが、低いようには思えます。
理由を語るまでに言いよどむ様子も特徴的で、
『ナギちゃんもほんと、優しいっていうか優しすぎるっていうか……創作の中の明るい学園物語じゃないんだし。そんな都合の良い話、現実には存在しないのに。』
『それはね……ゲヘナが嫌いだからだよ。』
『私は本当に、心から……心の底からゲヘナが嫌いなの。』
というように、否定や嫌悪感を含む内容の前で歯切れが悪くなっています。
ミカはトリニティに深い憎しみを抱いているアリウスとの和解を望むような優しさを持っていますし、ゲヘナが嫌いな理由をツノが生えたやつらに背中を見せたらすぐ刺されると現実離れした内容しか言えなかったことからも、本当にゲヘナを嫌っているとは思えません。
あとはちょっとずるい視点からですが、今回の推測にはミカの銃のモチーフがミカに紐付けられていると思っているところがあります。
ミカの銃はドイツの銃のコピー品がモチーフになっているとされていて、私はコピー品であるところが気になりました。
裏切り者としてのミカの行動や動機は単にゲヘナを憎む者という捉え方ができつつも、アリウスからの受け売りだけで成り立っていることから、その銃を体現するかのようにミカの行動や動機はアリウスのコピーになったとも捉えられると思いました。
なので、それを体現するのなら元々のミカはそれとは異なる考えを持っている必要があり、ミカはゲヘナを憎んではいないということにも繋がります。
……つまり、ミカはとっても優しいということです。
諦めなかった願い
こうして行くところまで行くしかなかったミカですが、最後までアリウスとの和解を諦めずに願い続けていたのだと思われます。
ミカはアリウスに裏切られたにもかかわらず、先生とプールで会った時にアリウスが抱える問題を先生に話しました。
その内容も、劣悪な環境の中で「学ぶ」ということが何なのかも分からないままでいることや、過去の憎しみが大きいことや誤解と疑念も多いことなど、アリウス側の解決するべき事情に多く触れたものでした。
ミカは先生から『私は、生徒たちの味方だよ。』という言葉を聞いた後に、2校の和解の象徴になってほしいという願いを込めたアズサのことを守ってほしいと先生に頼みました。
ミカにとってのアズサは、セイアのヘイローを破壊してミカが後戻りできない原因になった人物でもあったのにです。
ミカが襲撃において降参した後にアズサの今後について意志を聞いたことも、アズサの今後を心配していたからだと思われます。
ミカはアリウスがナギサを殺すことを怖れており、ナギサの襲撃時には「トリニティの裏切り者」としての利点を捨てた立ち回りをし、戦力的に敗北するかわからない段階でもセイアが生きていることを聞いた瞬間に降参しました。
エデン条約を妨害する者がいるという情報を流したのもミカ自身によるものだった可能性もあり、ナギサはミカのことを疑いませんでしたが、ここでナギサがミカを疑えば襲撃を事前に防げたかもしれず、それがミカの狙いだったのかもしれません。
ミカが戦線に赴いたのはナギサが襲撃されたこと知ったタイミングであり、それはナギサを守ろうとしての行動だったのでしょう。
ナギサが襲撃されたこと。
過去と同じ過ちを繰り返してしまったこと。
その時ミカの頭には何がよぎったのか。
自分のせいで大切な幼馴染を殺してしまったのなら。
そのことが、ミカにとってどれほどの重みがあったのかは計り知れません。
ミカはナギサの襲撃後にも諦めずに願い続けています。
ティーパーティーへの襲撃はアリウスの計画した襲撃にミカが騙されて協力させられたものでしたが、ミカは自分が計画した襲撃にアリウス協力してもらった計画として話していました。
皮肉なことにミカから手を差し伸べたことは事実ではありますが、「アリウスの襲撃にミカが協力した」ことと「ミカの襲撃にアリウスが協力した」ことではその意味は全然違い、ミカの話した後者の内容は、アリウスによる襲撃とその責任がミカにあることを意味します。
監獄でのナギサとの会話でも『もうアリウスのことなんてどうでも良くない?』と話を持ち掛けたことや、アリウスが脅威にならないことを説明した後に『ハッピーエンド、良かった良かった。』とアリウスの件を終わらせようとしていることからも、アリウスに危害が加わらないようにしようとしていることが窺えます。
そして、今のミカは誰にもそうだと言われていないのに、自分のことを「人殺し」だと言っています。
「人殺し」の罪の重さは、ミカはその身をもって知っています。
裏切り者として立ち回っていた時でさえ、ミカはセイアを殺すつもりじゃなかったことを、セイアの死は事故だということをセイアの体が弱かったことを理由に話して、「人殺し」として見られることを怖れていたほどです。
ですが、セイアが生きていると知った後には、『私は人殺しだよ?』『私があの子を殺そうとした』などと言い、最初からセイアを殺すつもりでいた「人殺し」として、自ら必要以上に罪を背負おうとしています。
ミカはスケープゴートについて『罪を被る生贄としての存在がいてこそ、みんなが安心してぐっすり眠れるの。』と言っていたことから、自分が罪を被る生贄になることでアリウスの安全を願っていたのかもしれません。
こうしてミカは自分の本心を隠したまま、自分が嫌われることを仕方が無いと思い、自分が犠牲になることを願っているのでしょう。
心の在り処
そんなミカの本心に辿り着くための鍵は、幼馴染との会話の中にありました。
『そう、だからいっそナギちゃんにでも、私が言ったことを全部そのまま流したりしてれば……多分今頃は堂々と、ここまで来た先生に笑って会えてたんだろうな。』
ここでの「笑って」という感情は、喜びや嬉しさを表すものではないでしょう。
ミカを裏切りナギサにミカの言ったことを全部そのまま流すこと想定していることから、ミカの話を全部信じずに裏切ること対する諦めの感情、あるいはミカの想定内の動きをする先生に対してなら笑顔で感情をごまかしきれるという意味を表すものだと思われます。
きっとミカは様々な想いを笑顔に込めており、その笑顔で心を隠しています。
それは周りはもちろんのこと、たとえ自分が犠牲になっても他の誰かや願いが守れるのならそれで幸せだと、本当の気持ちと偽りの気持ちを同じ笑顔でごちゃまぜにして、自分の心さえも騙しているのかもしれません。
そうやっていつも笑顔でいたからこそ、裏切り者として振る舞っていた時にもミカは笑顔でいたのでしょう。
明るさ、楽しさ、喜び、諦め……
ミカが笑顔で嘘を隠せなくなった時、そこにあるものはきっと、
暗さ、苦しさ、悲しみ、そして……諦めきれなかった本当の願いなんだと思います。
前に進むために
次に、これからのミカについてを考える為にエデン条約編3章後半のミカがどうなるのかを考えていきましょう。
まずは物語の大筋についてです。
こういうのは結論から先に考えるのがいいと思います。
今回でエデン条約編が一区切りになる以上ミカが釈放されることは必然と言っても過言ではないはずです。
あとはミカと先生に焦点を絞ってその結論に至るようにシナリオを組み立てると、
まず、先生が回復した後にミカに会いに行く。
ミカは今までは先生と会うことを拒んでいたが、ナギサを心配なこともあり先生と会うことにする。
ミカが本当のことを先生に話して先生はそれを信じ、先生によってミカが一時期に釈放される。
先生によって戦場へ赴いたミカはアリウスを鎮圧し、事件を解決する。
事件を解決した後にミカの話がアリウスの鎮圧に貢献したことによって信じられて釈放される。
というのが大筋だと推測しました。
次は目的についてです。
目的は何かを成し遂げる為にあるものなので、今までのエデン条約編を振り返って、これからミカはどうするべきかを考えていきます。
エデン条約編におけるミカの一番の間違いは自分のやり方や役目を見失ってしまったことでしょう。
相手を思いやることや相手の立場や心境を理解することが出来ることはいいことですが、それで自分の意見をただ押し殺してしまったり、それでも叶えたい願いを独りで抱えてしまっていたのは、ナギサとは別の意味で相手と向き合ってなかったとも言えます。
また、先生にアズサを守ってほしいとお願いしたり、ナギサにこれ以上アリウスに危害が及ばないように話していたことにおいても、ミカは行動を相手に委ねることしかできず、本当に叶えたいことに対して、自分で行動することが出来ていません。
そして、願っていたことではないにしろ、アリウスの襲撃を招くきっかけとなってしまった張本人でもあります。
以上のことからこれからのミカには、自分のやり方や役目を見失わないこと、願うだけではなく行動すること、アリウスの襲撃を止めることが必要だと思います。
幸いなことに、今のミカには自分のやり方を持って向き合うべき相手が戦場におり、自分で行動して戦況を変えられる力があり、自分の手で止めるべき復讐が揃っています。
戦場においてミカがアリウスと対峙することは和解とは遠いように見えますが、ミカの和解のやり方である『お茶会でもしながら、お互いの誤解を解くこと』への一歩としては必要なことだと思います。
最後にミカが目的を行動に移す為に何が必要かについてです。
今のミカは物理的にも監獄に囚われていますが、心の面においても周りから自分を隠し続け、願うことしか出来ないでいます。
なので、自分のやり方や役目の大切さを、行動することの大切さを、迷っているミカはそれを知る必要があります。
そして、その為にはミカの本心に辿り着き、ミカにその大切さを伝える必要があります。
あとは誰がミカを救えるのかですが……
自分のやり方や役目を見失わずにみんなと向き合い、その先にあるものが見たいものや信じたいことだけでなくても、信じるべきことを信じ続けた「先生」なら、ミカに必要なことの大切さを伝えられるでしょう。
そして、
ミカの事情を知る前から、ミカが裏切り者としての姿を見せた後も、自分は生徒たちの味方だと、ミカの味方だと手を差し伸べ続けてくれた「先生」なら、かつてミカが想ったあったかもしれない世界に、ミカを導いてくれるでしょう。
こんな解釈も
ひとまずはミカのこれからについての話も終わったところですが、せっかくなのでいろいろな理由で説明には組み込めなかったものについて話していきたいと思います。
まず一つ目の話は、この記事ではミカはアリウスに従うしかなかったから自分を偽るしかなかったという解釈で話しましたが、それとは別にミカがアリウスと同じになることをミカなりにアリウスに寄り添ったと捉えた解釈についてです。
ミカにはセイアのヘイローを破壊してしまった後にも逃げるという選択肢もあったのではないかということもこの解釈の補足としてありつつも、セイアのヘイローを破壊したことやその責任を背負うこととは相性が良くなかったので従うしかなかったほうの解釈で進めましたが、この記事では別々に扱った壊れた心と優しさが同時に感じられるぶん破壊力が凄かったです。
最後まで責任を持ってやりきる強いミカの解釈も好きですが、ボロボロになった果てに自分を偽りで塗りたくる弱いミカの解釈もそれはそれで……
幸せになって……
次は二つ目の話は、この記事ではミカは笑顔で本心を隠しているという解釈のほうが内容がわかりやすいかなと思いそちらの解釈で話を進めましたが、こちらは「ミカは裏切り者として振る舞った時でさえ、先生がミカに向けたような怖い眼ができなかった」と捉えた解釈についてです。
他の場面においても、ハナコの表情には「そんな目」と、ナギサの表情には「綺麗な目」言ったのに対して、先生の表情には「良い眼」と言っていることから同じ部位にも言葉の違いが見られ、ミカにとっての関心の大きさや表情の違いが感じられるところもいいです。
ミカが相手の目を見て会話をしていることがわかるのもいいですね。
そして、この解釈は他にも考えられることが多く、例えばミカがナギサやコハルについて話す時に言ったおバカという言葉も、「ミカの黒い一面にも可愛さが含まれている」のではなく「裏切り者として言わなきゃいけない言葉も頑張っても可愛さを含んでしか言えなかった」とかだったらまた別の可愛さが感じられると思います。
ゲヘナが嫌いな理由などもこの解釈と相性が良いです。
ツノが生えたやつらに背中を見せたらすぐ刺されるって言っていた時なんかは、ミカはツノで突いてくるのを想像しているのでしょうか?
逆に相手を倒すことに関しては語彙力が増すあたり、ミカは戦うことについて強さを持った子特有の戦闘を遊び感覚に思っていたりするのかなというところも気になるところです。
こちらの解釈はわかりやすさで優先しなかっただけなので、笑顔で本心を隠している解釈との両立があり得るぶん今後に期待したいところです。
そして三つ目の話は、ミカは笑顔で本心を隠していることの説明として使いたかったのですが、状況の説明自体が長くなるせいで組み込めなかったものです。
以下の画像は監獄でハナコとの会話を終えたミカの表情の移り変わりを順番に並べたものです。
1枚目はハナコと会話する時の険しい表情、3枚目はハナコの残酷さを口にするところですが、それならその間の2枚目の表情は普段どおりに自分を隠す為の笑顔じゃないかなと捉えました。
ミカの心情はこんな感じで何気ないところにも表情に出ていますが、この場面はミカの言葉がないぶん、心情がそのまま表情に反映されているんだと思います。
最後に四つ目は、こちらはミカが先生と会うことを断るのが大変だというのは手間がかかるという意味ではなく、本心を打ち明けたくなるから大変だったと捉えた解釈についてです。
先生はプールでの会話の時にはミカが選択肢としてあげなかったミカの心配をしてくれたり、ミカが先生からは何も聞きたくないと言った時には何も言わなかったり、先生は自分のやり方を大切にしつつも、その時々のミカに必要な対応で接してくれていて、そういうところからもミカは先生がどういう存在なのかを感じたんだと思います。
また、先生はミカに『私は、生徒たちの味方だよ。』と言いましたが、その言葉はミカにとってはミカの味方でもあるというだけでなく、他校と和解しようとした自分と同じものを大切にしているという意味もあったんだと思います。
終わりに
ここまで読んでくださりありがとうございました。
ずっとミカについての話をしてきましたが、みなさんのミカに対しての印象は変わったでしょうか?
本当はゲヘナが嫌いだなんて思ってなかったり、ナギちゃんのことを大切に思っていたり、監獄から無事に脱出できてハッピーエンドまでの未来を確信したり、そう思えるようになったでしょうか?
初めに言ったとおり仮定を前提にしていたり、情報量が多かったり、人によっては解釈違いがあったり、私がnoteでまとめるのが初めてなぶん伝えたいことが伝わっているか不安もありますが、少しでもミカのことが信じられるようになってくださっていれば嬉しいです。
また、この記事は内容が伝わることを第一にして内容を選んだぶん扱いきれてないものも多くありますので、本編を振り返ったりこの先の物語においてもミカの言葉や表情に気持ちが表れているところを探すと新しい発見があるかもしれません。
ここまで考察を重ねても最後にはミカのことを信じることまでしかできませんが、だからこそ「ミカを信じたいと思う」こと、それが一番大切なんだと思います。
「信じられる」か「信じられない」かよりも、「信じたい」か「信じたくない」か。
最後に大事になるのは、それを選択することだと思います。
裏切られる時は私も一緒ですので、ミカが優しい少女であることを、いつかミカが幸せで笑顔になれる日が来ることを、そんな真実と未来が待っていることを一緒に信じましょう!
願いの果てに
ミカはアリウスとの和解を願いつつも自分のやり方では動けず、自分で願いを叶えることが出来ませんでした。
では、今までのミカの行動や想いは全て無駄だったのでしょうか?
「願いを叶えられなかった」ということは、「願いが叶わなかった」ということなのでしょうか?
白洲アズサはミカによってトリニティの世界を知り、トリニティで生活することが出来ました。
その生活の中で、アズサは補習授業部との生活で何かを学ぶことやみんなで何かをすることの楽しさを知ることが出来ました。
そして、アズサはキヴォトスの平和や友達との楽しい時間が続くことの為に足搔くことを選びました。
「vanitas vanitatum」。その考え方では辿り着けない未来へ進めるようになりました。
たとえやり方が受け売りだったとしても、その物語はミカの願いやミカからの関わりがなければ始まらなかったでしょう。
『アリウスの生徒がトリニティでもちゃんと暮らしていけて、幸せになれるんだって……みんなに証明してみせたかった。』
ミカはアズサに……かつてアリウスの生徒だった彼女にそんな願いを込めていました。
そんなミカにとって、あの時のアズサの答えはきっと、
ミカの心に「アリウスの生徒がトリニティでもちゃんと暮らしていけて、幸せになれる」ことを、証明したのでしょう。
おまけ
以下の考察はミカに関わりはあるものの、それ以外の要素が強くなるからと組み込めなかったものです。
ナギサのこれから
エデン条約編3章前半においてのナギサは、アズサと先生に向き合えていないことと、『私たちは他人だから』という言葉を前にしてミカの本心に辿り着けなかったことから、3章後半ではその2つがナギサの話の鍵になると思います。
ナギサがその2つの問題に行うべきことは、アズサと先生には向き合うこと、ミカに対しては心の中身を証明できなくても向き合うことを諦めないことだと思います。
そして、ナギサはそれが大切だということを、見たいものや信じたいことだけに囚われず、証明できないものに向き合い続けた「先生」によってわかるのでしょう。
ナギサにとってのアズサは自分がアリウスの襲撃から助かったきっかけになった人物でもあるので、そういう意味でもナギサはアズサに向き合う必要があると思います。
セイアのこれから
まず、セイアは自分を救ったのが誰なのかをミカに伝える為に眠りから覚めるのでしょう。
今は意識が回復していないままの状態ですが、セイアは予知夢を使える他に夢の中で先生に会っていることから、夢で先生と会う為に眠り続けている可能性もあり、それが理由なら事件が終息する頃には意識が回復するはずです。
(セイアの能力についてはこちらの考察を参考にしました)
セイアと先生はミカやナギサと比べても繋がりが薄いですが、先生はセイアが予知夢で見た暗雲が立ち込める未来に足掻き続けていることから、先生がその先の未来へ辿り着いたのなら、それはセイアにとっても影響の大きいことになるでしょう。
エデン条約編の終着点
補習授業部、ティーパーティー、正義実現委員会、シスターフッド、救護騎士団、アリウススクワッド、風紀委員会、万魔殿、救急医学部、美食研究会、温泉開発部……。
いくつもの学園とそれらの間における平和や和解が物語の中心になっていたエデン条約編には多くの組織が登場しました。
そして、それらの組織は平和の為に、復讐の為に、野望の為に、様々な理由で組織と組織が協力したり対立することはありましたが、組織内での対立やすれ違いはありませんでした。 ティーパーティーを除いては。
ティーパーティーは学園同士の間を繋ごうとしていたにも関わらず、ミカはアリウスとの和解を、ナギサはエデン条約の締結を、セイアはエデン条約の締結とその先のアリウスとの和解を、それぞれの想いや責任や使命を独りで抱えてしまい、肝心のティーパーティー同士の間に隔たりがあったのです。
また、エデン条約編において先生は「楽園」と「誰かの本心」を同じものと考えており、他人の心を証明出来ないからと信じて向き合い続けることをやめないでいます。
以上のことからエデン条約編の終着点は、平和や和解を目指して諦めない為に、その為の一歩としてまずは「ティーパーティー同士が互いに向き合い信じられるようになること」だと思いました。
ティーパーティーのこれから
ティーパーティー同士が互いに向き合い信じられるようになったなら、それからどうなっていけばいいかについてです。
まず、ナギサはエデン条約の為に補習授業部の生徒を退学させようとし、ミカは自分のやり方ではなかったもののアリウスとの和解の為にティーパーティーを襲撃をしました。
どちらも平和や和解とは反する手段であり、それでは平和を叶えることも和解もできるはずがありません。
平和や和解を目指す為には、かつてミカが和解の方法として考えていた『お茶会でもしながら、お互いの誤解を解くこと』こそが「ティーパーティー」の名に相応しい手段で、「ティーパーティー」らしくあること、自分たちのやり方を見失わないこともまた大切なことなのでしょう。
また、ティーパーティーは順番にホストの権限が回るようになっていますが、エデン条約編においてのティーパーティー同士の隔たりには「ホスト」が絡むことが多くありました。
ミカは自分のやり方ではなかったもののアリウスとの和解の為にセイアとナギサをホストの座から失脚させて自分がホストになろうとしました。
ナギサは自分がホストだからとミカの意見を退けようとしたこともありましたし、ミカは自分がホストじゃないからナギサに対して邪魔も何もできないと言ったこともありました。
セイアやナギサが想いや使命を独りで背負ってしまったことも、ホストとしての責任を感じていたからなのかもしれません。
なので、ホストという制度をあらため、3人で1つのことに向き合うことが大事になると思います。
ミカには優しさが、ナギサには慎重さが、セイアには知恵と能力があります。
ミカとナギサの叶えたいことをセイアが知恵で支えたのなら、
セイアが暗い未来を見た時にはミカとナギサも一緒になってその未来へ向き合ったのなら、
3人が互いに向き合うことで力を合わせれば、少しずつでも平和を叶えたり和解を進めることが出来るでしょう。
今回はこれで以上です。
おまけまで読んでくださりありがとうございました!
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