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大学に進学のため、息子は今春から一人暮らしを始めた。周りの人は「寂しいでしょう」と私のことを気遣ってくれるのだが、どうもピンとこない。寂しくないといえば嘘になるが、受験生を抱えた暗くて長い毎日が終わり、ホッとしていると言った方がしっくりする。それどころか、気の合う友人と食事をしたり旅行に出かけたりと、寂しいと思っている暇がない。息子から便りのないのも、元気な証拠と思って過ごしている。 そんなことを話していたら、年上の知人が「上手に子離れできたってことだよ」と言う。なんだ
行きつけの美容院の向かいに「山猫軒」というカフェがある。ずっと気になっていたが、小さな窓からは中の様子を窺うことはできず、入るタイミングもなかった。 先日、美容院でカットをしてもらい、店を出ようと時計を見ると午後一時過ぎだった。お腹もちょうど空いている。思い切ってそのカフェに入ってみることにした。 ドアの横にはイーゼルがあり、置かれた黒板には「お一人様もお気軽にどうぞ」と書かれている。まさか……と一瞬立ち止まった。 あれは息子が小学校6年のときの、参観日だった。国
「どう思う?」と言う友人に勧められ、村上春樹の短編小説、「バースデイ・ガール」を読んだ。 主人公の女の子はその日、二十歳の誕生日だった。ボーイフレンドはいるが、彼とは最近修復不可能な喧嘩をしたばかりだ。おまけに熱を出した仲間に代わって、バイト先のレストランで仕事をすることになった。 さて、私は二十歳の誕生日を、どうやって過ごしていただろうか。多くの人は、正々堂々とお酒を飲んだとか、彼と食事をしたとか、記憶に残る一日なのだろうが、何も覚えていない。もうずいぶん昔のことで、忘