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晴旅雨筆(エッセイ)

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これまでの人生で書き散らしてきたノートの切れ端をちぎれ絵のように張り付けたエッセイ。本を読み、山に登り、酒を呑み、街を歩く。
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記事一覧

【下手な鉄砲も数打ちゃ当たる】(新釈ことわざ辞典)記事版

恋愛や就職がなかなかうまくいかない人を、こう言って励ます人がいます。 でも、目標を明確に定めずに数打つよりは、射撃の腕を磨く方がいい。 下手な鉄砲は流れ弾で、周りに迷惑を、そして自分自身の未来に禍をもたらすのみです。 この項目を書いたのはちょうど2年前になります。 いつもの『ことわざ辞典』と異なり、ことわざの新釈説明文それ自体が『記事版』になってしまっています。 次のように書き換えた方がいいかもしれません: つまりこのことわざ、正確には: 【下手な鉄砲を数打ちゃ ──

『セラミックス』ってな〜に?

私のクリエーターページの冒頭に、 『作家、材料研究者』とあります。 でも、あまり『材料研究者』の顔はnoteに出てきません。 『材料』といっても、鉄や銅のような金属材料、プラスチックやゴムのような有機材料ではなく、無機材料の研究開発をやっておりました。 学生時代から現在に至るまで会員になっているのが『日本セラミックス協会』という学術+業界団体です。 最近その業界では、 「『セラミックス』ってあんまり世の中に知られていないよね」 的問題意識を持っているようで、遅まきながらY

【顔で笑って心で泣く】(新釈ことわざ辞典)記事版

サラリーマンの日常生活(こんなことばかり……)。 でも、サラリーウーマンは、もっと……。 組織に所属する人間がこの状況に陥るケースは、 ① 辛いことがあった。 ② でも、弱音を吐いたり反撃することができない。 場合が ── どうでしょうか ── 8割ぐらいを占めているのではないかな? ①の多くが、 A.上司などから批判・叱責された(パワハラ級を含む)。 B.顧客からクレームを付けられた。 なのではないでしょうか。 もちろん、ケースAは辛いけれども、たいていはさらに上の上

諏訪大社上社の回廊(夏の1コマ)

とにかく暑い! 本殿に向かう敷石の道には大型扇風機が置かれ、そこにホースで水が供給されていた。 『ミスト』どころか、『しぶき』に近かったが、子供たちはそこから離れない。 『涼』を求めて信濃路に来たが……『涼』はいずこに……? #夏の1コマ

【降れば土砂降り】→【口を開けば最上級】(新釈ことわざ辞典)記事版

ポピュリスト政治家の演説内容。 政敵はやることなすこと何でも「最悪!」「最低!」、もちろん自分は「全てが最高!」 使う形容詞が全て『最上級』の政治家には要注意。 ドナルド・トランプ氏の演説には、さらに「never」「ever」が加わります。 この格言は、英語の、 It never rains but it pours. を和訳したものです。 不運なことが同時に同じ人 物に起こる時、このことわざを使います。日本のことわざ「泣きっ面に蜂」にあたりますが、さらに「いつもそうだ

【這っても黒豆】(新釈ことわざ辞典)記事版

選挙に強い政治家が討論会でしばしば披露するロジック芸  「いや、黒豆じゃないか、ほら!」  「うわーっ! 口に入れた!」  「そこまでやるとは!」  比較的マイナーなことわざですが、明らかに間違いとわかっても、自分の間違いを認めようとしないことです。 特に政治家どうしの討論会で、相手方から弱みを攻撃された時にこの『ワザ』がうまい者ほど支持者からは『強い/頼もしい』と思われたりしますね。これは、本人はもちろん、支持者の期待も、『正しいことを言う』のではなく、『ディベートで相手

学歴詐称はどこにでも(家で★深読み)

選挙のたびに経歴が問題になる人、いますね。 学歴なんてどうでもよく、仕事ができるかどうかが重要。 ただ、その仕事をする立場に就くため学歴・経歴を偽った、ということ、結構あるのでしょうね。 今から30年ほど前に参議院選挙(愛知)に立候補し当選したタレントが、選挙公報に「明治大学政経学部入学」という経歴を書き、「中学時代にスイスに海外留学した」と演説会で述べたことが虚偽であると告発され、有罪判決を受けました。 実際は入学などしていないのに、「政経学部」ということで単なる人気者

「母に花、父には酒」に少々変化

先週土曜に冷凍の荷物が届きました。 送り主には娘の名が。 「明日が父の日だからじゃないの?」 「え? ……でも……」 ── 娘たちは毎年母の日には花を贈ってくる。 費用は二人で出すようだが、手続きは国内にいる方が担当するらしい。もちろん、彼女たちの母はいつも喜んでいる。 そして、父の日にはこれまで、日本酒を送ってきていた。 「うーむ。ヤツらはオレがよほど酒好きだと思っているのだろうな」 「誰がどう見てもそうでしょ!」 それが、今年はなぜかラム肉である。 「お父さんに酒

【急がば回れ】(新釈ことわざ辞典)記事版

「大丈夫、時間取らないから」 「すぐ済むよ」 「実はね……」 急ぎの時を狙うかのように、どうでもいい話を長々としてくる人、いますね。目的地までの直線コースに《地雷原》があれば、大きく迂回するのが得策です。 会社勤めを始めた頃、趣味で書いていた小説はまだ商業誌デビューの段階には至っていなかったが、研究者でありながら社内親睦誌にショートショートを連載していた私は『珍獣』扱いされていた。 といってもほとんどの同僚は昼休みの食堂でたまに話題にする程度だったが、少数の例外もいた。

夢と現実の境

── よく夢を見ます。 夜中に1,2度必ず目覚めるため、その直前に見た夢を反芻しますが、やはり憶えているのは朝方近くに見た最後の夢です。 夢は脳が記憶の整理をしているのだ、と読んだことがありますが、確かに、まったく現実と異なる夢を見ることはなく、過去となんらかのかかわりがある夢が多い。 かかわりのない場合は、直前に観たり読んだりしたテレビ番組や本の情景と関係している。 以前、凡筆堂さんの夢エッセイに触発されて、夢を設計する小説を書きました。 子供の頃からほぼ毎晩夢を見てい

【一を聞いて十を知る】(新釈ことわざ辞典)記事版

その多くが単なる《早とちり》であることは言うまでもない。 私の評判は悪い ── 家族とTVドラマを観ている時は特に。 「こいつが犯人だ! 間違いない!」 「お! この事故であのヒト、記憶喪失になると見た!」 「この二人、幼い頃に生き別れになった姉妹 ── っていう設定じゃないかな!」 「この手術、そろそろ問題が起きるぞ ── 出血が止まらなくなるとか……」 「ああ、うるさい! ちょっと、黙っていてよ! 聞こえないじゃないの!」 さらに評判が悪いのは…… 「『僕が君を

【寄らば大樹の陰】(新釈ことわざ辞典)記事版

「就職では『大企業でも陰不足』と考え、猛勉強の末に国家公務員になりひと安心、その後はずっと陰に隠れていました。稀に木陰からでようと思うことはありましたが、日焼けが怖くて……。退職後ですか? 大樹の陰に小さな木がたくさんあるのでその陰で……」 社会人生活をほとんど大樹の陰で過ごした人の独白ですが、彼らにはオキテがあり、定年を待たずして大樹から離れなければならないことが多いとか。でも、大樹の陰にいくつもの木があって、今度はそれらの木の下に移るだけなんだそうです。しかも、以前の職

あんこは自販機だけじゃなかった(街で★深読み)

名古屋市北区天道町の館林製餡さん前に置かれた『あんこ自販機』について、これまでに①目撃情報と②購入&食レポ記事を書きました。 それまでは自販機しか見たことがなかったのですが、たまたま通りかかったこの日は、対面販売も行っていました。 普通の小倉あん、粒あんなどの他に、抹茶、紅芋、コーヒー、ブルーベリー、チョコ、ゆず、……とにかく、ありとあらゆる種類のあんこがあります。 HPによれば、土日の11-13時の2時間、対面で量り売りをしているようです。 北海道産小豆・大手亡10

会社員でよかったかどうかはわからないけれど

25歳から会社勤めを始めた。 国家公務員になる選択肢もあったが、自分との『相性の悪さ』を感じて企業を選んだ。 その時点で、もう趣味のモノ書きに使う時間はないだろう、と諦めていた。というより、既に結婚していたこともあり、生活の糧を得るための仕事に専念しよう、とモノ書き世界には決別するつもりだった。 実際、研究開発系の仕事は忙しく、残業はほぼ毎日で、土日もどちらか出勤していた。 ところが、どういったいきさつだったか、入社1年目から労組機関誌の編集部員を頼まれ、特集企画を発案し