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晴旅雨筆(エッセイ)

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これまでの人生で書き散らしてきたノートの切れ端をちぎれ絵のように張り付けたエッセイ。本を読み、山に登り、酒を呑み、街を歩く。
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記事一覧

【這っても黒豆】(新釈ことわざ辞典)記事版

選挙に強い政治家が討論会でしばしば披露するロジック芸  「いや、黒豆じゃないか、ほら!」  「うわーっ! 口に入れた!」  「そこまでやるとは!」  比較的マイナーなことわざですが、明らかに間違いとわかっても、自分の間違いを認めようとしないことです。 特に政治家どうしの討論会で、相手方から弱みを攻撃された時にこの『ワザ』がうまい者ほど支持者からは『強い/頼もしい』と思われたりしますね。これは、本人はもちろん、支持者の期待も、『正しいことを言う』のではなく、『ディベートで相手

学歴詐称はどこにでも(家で★深読み)

選挙のたびに経歴が問題になる人、いますね。 学歴なんてどうでもよく、仕事ができるかどうかが重要。 ただ、その仕事をする立場に就くため学歴・経歴を偽った、ということ、結構あるのでしょうね。 今から30年ほど前に参議院選挙(愛知)に立候補し当選したタレントが、選挙公報に「明治大学政経学部入学」という経歴を書き、「中学時代にスイスに海外留学した」と演説会で述べたことが虚偽であると告発され、有罪判決を受けました。 実際は入学などしていないのに、「政経学部」ということで単なる人気者

「母に花、父には酒」に少々変化

先週土曜に冷凍の荷物が届きました。 送り主には娘の名が。 「明日が父の日だからじゃないの?」 「え? ……でも……」 ── 娘たちは毎年母の日には花を贈ってくる。 費用は二人で出すようだが、手続きは国内にいる方が担当するらしい。もちろん、彼女たちの母はいつも喜んでいる。 そして、父の日にはこれまで、日本酒を送ってきていた。 「うーむ。ヤツらはオレがよほど酒好きだと思っているのだろうな」 「誰がどう見てもそうでしょ!」 それが、今年はなぜかラム肉である。 「お父さんに酒

【急がば回れ】(新釈ことわざ辞典)記事版

「大丈夫、時間取らないから」 「すぐ済むよ」 「実はね……」 急ぎの時を狙うかのように、どうでもいい話を長々としてくる人、いますね。目的地までの直線コースに《地雷原》があれば、大きく迂回するのが得策です。 会社勤めを始めた頃、趣味で書いていた小説はまだ商業誌デビューの段階には至っていなかったが、研究者でありながら社内親睦誌にショートショートを連載していた私は『珍獣』扱いされていた。 といってもほとんどの同僚は昼休みの食堂でたまに話題にする程度だったが、少数の例外もいた。

夢と現実の境

── よく夢を見ます。 夜中に1,2度必ず目覚めるため、その直前に見た夢を反芻しますが、やはり憶えているのは朝方近くに見た最後の夢です。 夢は脳が記憶の整理をしているのだ、と読んだことがありますが、確かに、まったく現実と異なる夢を見ることはなく、過去となんらかのかかわりがある夢が多い。 かかわりのない場合は、直前に観たり読んだりしたテレビ番組や本の情景と関係している。 以前、凡筆堂さんの夢エッセイに触発されて、夢を設計する小説を書きました。 子供の頃からほぼ毎晩夢を見てい

【一を聞いて十を知る】(新釈ことわざ辞典)記事版

その多くが単なる《早とちり》であることは言うまでもない。 私の評判は悪い ── 家族とTVドラマを観ている時は特に。 「こいつが犯人だ! 間違いない!」 「お! この事故であのヒト、記憶喪失になると見た!」 「この二人、幼い頃に生き別れになった姉妹 ── っていう設定じゃないかな!」 「この手術、そろそろ問題が起きるぞ ── 出血が止まらなくなるとか……」 「ああ、うるさい! ちょっと、黙っていてよ! 聞こえないじゃないの!」 さらに評判が悪いのは…… 「『僕が君を

【寄らば大樹の陰】(新釈ことわざ辞典)記事版

「就職では『大企業でも陰不足』と考え、猛勉強の末に国家公務員になりひと安心、その後はずっと陰に隠れていました。稀に木陰からでようと思うことはありましたが、日焼けが怖くて……。退職後ですか? 大樹の陰に小さな木がたくさんあるのでその陰で……」 社会人生活をほとんど大樹の陰で過ごした人の独白ですが、彼らにはオキテがあり、定年を待たずして大樹から離れなければならないことが多いとか。でも、大樹の陰にいくつもの木があって、今度はそれらの木の下に移るだけなんだそうです。しかも、以前の職

あんこは自販機だけじゃなかった(街で★深読み)

名古屋市北区天道町の館林製餡さん前に置かれた『あんこ自販機』について、これまでに①目撃情報と②購入&食レポ記事を書きました。 それまでは自販機しか見たことがなかったのですが、たまたま通りかかったこの日は、対面販売も行っていました。 普通の小倉あん、粒あんなどの他に、抹茶、紅芋、コーヒー、ブルーベリー、チョコ、ゆず、……とにかく、ありとあらゆる種類のあんこがあります。 HPによれば、土日の11-13時の2時間、対面で量り売りをしているようです。 北海道産小豆・大手亡10

会社員でよかったかどうかはわからないけれど

25歳から会社勤めを始めた。 国家公務員になる選択肢もあったが、自分との『相性の悪さ』を感じて企業を選んだ。 その時点で、もう趣味のモノ書きに使う時間はないだろう、と諦めていた。というより、既に結婚していたこともあり、生活の糧を得るための仕事に専念しよう、とモノ書き世界には決別するつもりだった。 実際、研究開発系の仕事は忙しく、残業はほぼ毎日で、土日もどちらか出勤していた。 ところが、どういったいきさつだったか、入社1年目から労組機関誌の編集部員を頼まれ、特集企画を発案し

【鉄は熱いうちに打て】(新釈ことわざ辞典)記事版;オスマン帝国《イエニチェリ》のことなど

暴力教師やパワハラ上司の自己弁護。 このことわざには二つの意味があるそうです。 A. 精神が柔軟で、吸収する力のある若いうちに鍛えるべきである。 B. 物事は、関係者の熱意がある間に事を運ばないと、あとでは問題にされなくなる。 意味Bは特に問題はない。まあ、そうでしょうね。当たり前すぎて、なぜわざわざ諺に?と思うくらい。 問題は意味Aです 。部活担当の暴力教師や新入社員を指導するパワハラ上司はこのことわざを引用して自己正当化するかもしれない。 しかも、それは、ある意味、

【口自慢の仕事下手】(新釈ことわざ辞典)記事版

有能な経営コンサルタントに惚れ込んで後継者に据え相談役に退いた創業者が、権限移譲後ほどなくして直面した会社存亡の危機に、頭を掻きむしりながら現社長に浴びせる罵声。 30代の終わり頃、所属企業の業務改革の一環として、外部の経営コンサルタントと合同チームで仕事をしたことがある。 その時に感じた有能なコンサルタントの条件は、 ① 多種多様なデータを保有し、クライアント経営陣を説得するのに最適なデータを即座に取り出せる状態にしてある有能な組織と、 ② クライアント企業のデータをフ

リモート講義は『パケ死』など学生側の負担も大きかった;でも「Let's look at the bright side!」(家で★深読み)

リモートで学会に参加するのは、遠隔地に住む参加希望者にとって、時間もお金も節約になり、いいことばかり!という記事を書きました: ただしこれは、学会や講演会を聴講する場合であり、学生がリモート講義を受ける場合は事情が異なります。 2020年にコロナ禍が始まり、対面講義が制限された時、私は大学院で英語による科学技術論文作成・プレゼン発表に関する講義を持っていました。 もちろん、コロナ禍で突然始まった、という事情がありますが、通信環境や端末の有無という、『環境格差』によって学

大谷翔平選手のドジャース入団会見で…残念だったこと(家で★深読み)

今朝、大谷翔平選手のドジャース入団発表記者会見中継を見ていました。その映像の中で期待を裏切られ、たいへん残念に思ったことがありました。 中日ドラゴンズのユニフォームはドジャースと激似(許可を得て真似てデザインしたので当然ですが)で知られていますが、今から33年前の今月、入団記者会見の会場に、ただひとり、球団の手違いでドジャースのユニフォームを着て(着させられて)出席した選手(富永章敬さん)がいたそうです。 驚くことに、その場にいた人は誰も気付かなかったんだって。 この『珍

平手政秀の志賀城址近くで、久しぶりの名古屋モーニング (街で★深読み)

会社勤めをしていた40代後半の頃、子供たちが家を出たこともあり、毎週土曜の朝は喫茶店のモーニング・サービスで済ませる、という習慣がありました。 名古屋のモーニング・サービス競争は激しく、いや北西の尾張一宮や南東の豊橋ではもっと熾烈と聞いていますが、中には『一日中モーニング』という、一体どうなっているのかわからないお店もあるようです。 織田信長の傅役として知られ、その『大うつけ』ぶりが治まるようにと願って諌死した、と伝えられている平手政秀の居城・志賀城址である志賀公園(名古屋