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【ライターの仕事】とびらを開く~利府町民劇団ありのみ

2024年3月25日付河北新報夕刊に、取材記事を書きました。
毎週月曜日に掲載されている、宮城県内の市民団体・NPOの活動を紹介するコーナーです。

ーNPOの輪ー
私たちの周りでは、たくさんの市民団体・NPOが地域課題の解決などを目指して活動しています。「認定NPO法人杜の伝言板ゆるる」と「NPO法人せんだい・みやぎNPOセンター」が交代で担当し、さまざまな団体の活動や地域課題について伝えていきます。

河北新報ONLINE

利府町の町民劇団

利府町民劇団ありのみは、利府町の歴史や民話を題材にした創作劇を手がけ、年1回の公演を中心に活動を続けている町民劇団です。
2024年3月16日、17日に第27回公演を利府町文化交流センターリフノスで開催しました。題目は「大公孫樹遥か 利府寺子屋物語」。町内の館山公園(利府城跡)の一角にある銀杏の大木と、宮城県内で最初の寺子屋と言われる「笹町塾」を開塾した人たち、そこに通った子どもたちの物語です。毎年公演を楽しみにしている町民も多く、両日合わせて約600人が来場しました。

1996年旗揚げ

町の西部の新興住宅地を中心に人口増加が続いていた頃、町では新旧住民の交流を図り住民参加型のまちづくりを目的に、利府町公民館主催が講座を企画実施しました。その受講生有志によって町民劇団が結成されたのです。
当初から団長を務めている赤間長悦さんは、「団員一丸となって芝居を作り、舞台に立った時の感動は格別でした。ありのみの活動は、世代を超えて交わることができる貴重な機会になっています」と劇団の良さを語ります。
 現在団員は、30人。町民を中心に、年齢は1才から80才と幅広く、兄弟、親子など家族ぐるみで参加している団員もいます。副団長の石川茂子さは、「娘や孫たちと一緒に活動していますが、演劇を通して、自分の経験を伝えられるのが強み。稽古の合間には、団員の話しにも耳を傾けるように心掛けています」と、多世代が交流する地域の社交場としての役割を果たしていることが分かります。

芝居作りは、すべて手作り

劇団の一番の特長は、役者はもちろん、脚本、小道具、衣装、舞台製作、プロデュース広報にいたるまで団員の手で作ることです。脚本・演出を担当する伊澤美樹さんは、「歴史資料を基に町内を取材して歩き素材を集めています。町民が語る話や想いを劇の中で伝えていきたいです」と、埋もれている町の宝を発掘し、光を当てることの重要さを強調します。
 その一方で、今年は町外での公演にも挑戦しました。宮城県内の演劇コンクール「伊達の劇王」への出場です。応募条件は、3人で演じる20分以内の作品。11団体が参加した中で、劇団ありのみの「センシティブな乙女たち」がみごと優勝しました。利府町を舞台に、東日本大震災時の町民が感じた複雑な心情を描いた作品です。「演劇界で認められたことは、自信につながり励みになりました」と伊澤さん。


何度も劇団存続の危機を乗り越えて

劇団設立から、27年間活動を継続してきました。現在、劇団が抱えている課題の一つは、資金調達。一回の公演に係る費用を、入場料や団費だけで賄うことは難しく、利府町から会場利用料の減免、町内企業事業所から協賛金を集めて開催しています。
利府の歴史や伝説、名所などを題材にしている作品は、町のPRにも役立つものと実感しています。今後も行政と連携を図り、地元企業に対しても活動の理解を深め協働の糸口を探っていくことが、自立への鍵となっていきます。
また、団体の後継者育成も悩みのひとつ。役者希望者はもちろんですが、運営や制作に関わる人材が足りていないのが実情です。
劇団では、団員を募集しています。オトナ世代とコドモ世代が演劇を介して融合するおもしろさを体感してみてはいかがでしょう。

(ウチソト編集室ライター葛西淳子)

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(ウチソト編集室ライター葛西淳子)

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