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【読書ノート】村田紗耶香の沼にハマる

こんにちは。言葉をあつめて編む仕事をしています。本のこと読書のこと、気軽に語り合えたら楽しいですね。ウチソト編輯室の編集人ジュンコさんの本箱の中をご案内します。

村田紗耶香さんの本を一気読み


きっかけは昨年のクリスマスに、村田紗耶香×松岡正剛の対談を聴いたこと。すっかり村田ワールドに引き込まれてしまったのです。

でもその時はまだ、彼女の凄さをまったく把握していなく、作品についても『コンビニ人間』で芥川賞を受賞したということくらいしか知りませんでした。強いて言えば村田さんの「声」に惹かれたのかもしれません。

「クレージ紗耶香」の片りん


村田さんはこんなふうに、自身の経験を語っています。

こんな風にぺらぺらと喋っていいことなのか分からないんですけど、私はとても性の目覚めが早かったんです。肉体的な意味で、達するということを幼稚園に入る数年前から知っていました。物心がつく前から達していたので、性の目覚めが何によってだったのか、よく分からないんです。まず肉体的なものが先にあり、その後、小学生になり『魔女っ子メグちゃん』とか『まいっちんぐマチコ先生』とかのアニメを見て興奮を感じるようになっていったわけですけど、その興奮はどこか後付けであって。

違和感と異質感


対談相手の松岡さんは自身が執筆する「千夜千冊」の中で、「(村田紗耶香は)愉しみな作家だ。書くたびに小さな魔法を大きくつかう」そして「村田の発想の起点は、異質感や違和感にもとづいている」と語っています。

村田さんの世界観は、既存の価値観を揺さぶりぶっ飛んでいます。しかし登場人物の描写は、現代人の奥底に潜んで闇なる心情を的確にとらえているようにも感じます。村田さんが作り出すある種奇妙な世界に、読み手である私は、ちょっと戸惑いつつも、いかんせん所どころの描写に激しく頷きながら、どっぷりハマってしまったのでした。

ただ、読後感の良さは期待しないこと(一気に読みしたせいもある)。でも、また読みたくなる中毒性があります。性、恋愛、家庭とは何ぞや、普通や常識とは何かを強烈に問いかけてくる作品たちです。

『丸の内魔法少女ミラクリーナ』


私が最初に読み始めたのは、ポップでキュートなタイトルと表紙が目に留まったこの本。さまざまな世界との対峙の仕方を描く、村田沙耶香ワールドの神髄を堪能できる短編4篇が収められています。

▲KADOKAWA(2020・02・29)


【著者略歴 】

村田沙耶香(むらたさやか)
1979年、千葉県生まれ。玉川大学文学部芸術文化学科卒。横浜文学学校にて宮原昭夫に学ぶ。2003年、『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビューした。2009年、『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、2013年、『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島賞、2016年、『コンビニ人間』で芥川賞受賞。同作は累計発行部数100万部を記録した。その他の著書は『マウス』『星が吸う水』『タダイマトビラ』『地球星人』『殺人出産』『消滅世界』『生命式』などがある。


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