「その人らしさ」とは何か

私は介護の仕事を10数年経験してきました。

同じ法人内でデイサービス、グループホーム、従来型特別養護老人ホームをそれぞれ数年ずつ経験させて頂きました。
その中で「認知症介護実践者研修」「認知症介護実践リーダー研修」というプログラムに参加する機会がありました。
この研修では現場で感じた事をシェアしたり、認知症の方との関わり方やそれを指導、けん引するリーダーとしての考え方等を学びました。

研修だけでなく、現場でも特に重要視されていたのは認知症の方の「その人らしさ」を共有し大切にする事でした。
認知症の周辺症状と言われる徘徊や被害妄想など表面的な行動だけでは無く「その人」の背景(歴史、家族関係、既往歴など)を考えて対応する事が「その人らしさ」を考える事だと言われていました。
そんな中、当時の私は「その人らしさとはなんだろう」と素朴な疑問が沸いていました。

例えばAさんに息子が居て、息子から見たAさんの「その人らしさ」とは厳しい親だったり社交的で強い人だったりするわけです。
しかし私から見たAさんの「その人らしさ」は職員に対して甘え上手な面白い人だったり思い通りにならないと怒る短気な人というものでした。

つまり見る人付き合う人によって違ってくるのではないか、そんな変化するものを単に「その人らしさ」とひとくくりにして考えていいのかと思ったわけです。

実際その研修中に講師をしていた方に質問してみました。
「その人らしさ」とは何なのか、と。
しかし当時は明確な返答は得られずもやもやしたまま終わりました。
現場に帰ってから上司や同僚に質問しても明確な答えを持っている方は居ませんでした。

私の仮説は「その人らしさとは人によって異なる、特殊な事柄」というものでした。
なので情報として「その人らしさ」の共有は出来てもそれを大切にした介護なんてものは確立できないのではないかと考えていたのです。

しかし当時の現場の方々は口をそろえて「それでもその人らしさを大切にしないといけないんです」と言っていたと思います。
一部の上司や先輩方は一緒に考えてくれていましたが、答えは出ずといった所でした。


古くからの親友とはこういった結論が出にくい議論を交わしていたのですが、先日この仮説に一つの答えが出ました。

その人らしさとは「他者がその人に期待する一貫性」だと。

「あなたらしい考え」「君らしくない言い方」と言うように、その人らしさとは自分では無く他者が創る又は求めるものなのではないでしょうか。
つまり「その人らしさ」とは自分自身には無く、他者の中にある。普遍的ではなく特殊な「その人らしさ」が様々な人の視点で創られていくものなのだと気づいたのです。

とすると「その人らしさを大切にする介護」とは一体何なのでしょうか。

これについての仮説はまた後日記そうと思います。

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