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「Painful Rebuild」

長くなってしまったので、時間がない人は3章だけでも。急ぎで書いたので相変わらずグダグダした文章ですが是非。

序章 「Rebuild」

1節「Rebuild」とは

 「Rebuild」。直訳すると「再構築」。サッカー界では、スカッドのサイクルとチームの不振が重なった時に、チームの大規模な刷新を意味する言葉として浸透している単語である。
 スパーズ関連の話題においては、ポチェティーノ最終年となる19-20シーズン直前の夏の移籍市場に関する、「Now it’s about creating another chapter and to have the clear idea of how we are going to build that new project. We need to rebuild. It’s going to be painful.」という発言以降、チームが不振に陥るたびにしばしば用いられ、「painful rebuild」が必要だとサポーター間で叫ばれるようになった。しかし残念なことに、チームの不調が続くと「painful」の部分をあまりにも軽んじたような意見、直ぐに「Rebuild」をクラブに求める風潮が近年見られる。

2節 「Rebuild」における「Pain」

 「Rebuild」が大きな痛みを伴うものであることは自明であるが、その際に想定されるであろう「痛み」の部分について考える。
 まず1つとしては、「中心選手との別れ」であろう。長年クラブに貢献してきた選手であっても、新しい血を取り込むにあたっての必要な犠牲としての退団は余儀なくされる。それは衰えにより力に陰りが見えてきて次の「章」に進むにあたっての枷になってしまう可能性だったり、新加入選手獲得資金としての大きな価値、ネックである高額な給与等、様々な要因からそれは求められる。
 そして「余剰戦力の大量放出」。「Rebuild」にあたりその新しいクラブの戦い方にマッチしない戦力の「損切り」。これは後に触れる「資金」面と被るところもあるが、中心的な選手にはなりえないであろう選手は、枠を空けるためにも資金を回収するという意味でも、不満分子となる可能性を排除するという意味でも容赦のない放出は避けて通れない道であろう。「Rebuild」前にクラブが期待を込めて獲得した選手であっても。 
  次に考えられる「痛み」としては、結果が出るまでの「耐える期間」である。当たり前だが、監督の戦術を浸透させる時間、そして「Rebuild」によって新しく獲得された選手たちのプレミアへの適応する時間、更に数年後を見越して獲得された選手たちであるのでそれらの成長を待つ時間というのは必要な訳で、その時間は数年単位のものである。そして何より、その長い時間を耐え忍んだ後に待つのが「成功」である保証はないということを覚悟する必要がある。
 また「資金」面も「痛み」として考えられるものである。「Rebuild」における初期投資は、既存の選手売却である程度補うにしろ一定の額は求められるところだし、資金注入は数年単位で行われるべきものであるからである。そしてその資金注入は先述の通り、結果が振るわないであろう「Rebuild」の期間に求められるのである。プレミアに所属している限り莫大な放映権収入は見込めるにしろ、CLやEL等の大会収入はない可能性もあり経済的な面でも苦しくなる可能性がある。またCLブランドはなくなるため、その分有力な選手を獲得するには高額な年俸を提示したりする必要性もあり、経済的な苦しさに拍車がかかる。
  他にもサポーター離れだったり、最悪クラブの格が落ちたりなど様々な「痛み」は考えられるが、上記の3つが大きなものであろう。クラブの不振、停滞感を打破する方法として「Rebuild」を決めたクラブは、これらの「痛み」を踏まえたうえで監督や選手をサポートする覚悟が必要であるし、「Rebuild」を掲げるサポーターはまずこれらの「痛み」を理解するところから始めるべきである。その「痛み」を理解せずに「Rebuild」と叫ぶのは、クラブの「supporter」とは言えない。

1章 スパーズにおける「Rebuild」

 この章では先の章を踏まえて、スパーズの過去における「Rebuild」と呼ばれるものについて見ていく。と言っても、僕自身中学生の頃ベイル退団直後のシーズン(監督なんて知らなかったのでAVBとシャーウッド期に被っていたことが驚きだった)から少しずつ見始めて、しっかり内情を追えるようになったのはその後少し経ってからなので、この後扱うポチェ初期に関しては朧げな記憶と昔の雑誌を参考にしますが、間違ってたら古参勢の意見が欲しいです。

1節 ポチェ初期~最盛期

 クラシカルな4-2-3-1を用いて当時の強烈な個のパワーを活かしてある程度の結果を残したレドナップに変わり、超攻撃的とも称される攻守の連動性が高い、ハイラインを敷いた即時奪回型サッカーを信奉するアンドレ・ヴィラス・ボアスを監督として登用したところから始まったと考えられる「Rebuild」を引き継ぎ、前進させる役目が与えられた当時のポチェティーノ。ベイル退団資金で獲得した「Magnificent Seven」をチームに組み込みつつ、サウサンプトンで築き上げたような「ハイラインハイプレス」の攻撃的なチーム作りが求められていた。またAVBが失敗した人心掌握の方面でも期待されていたかもしれない。
 「Rebuild」における痛みに注目しながらポチェ政権を簡潔に見ていくと、まずドーソンやレノンといった「中心選手との別れ」、そして戦術的な面や監督との相性面からの「余剰戦力の大量放出」(タウンゼント、キャプー、パウリーニョ、ソルダード等々)がまず最初の「痛み」として挙げられる。大量放出された選手たちに関しては不良債権になる可能性も高かったが、若い選手が多かったのと今ほど他リーグと資金格差が今ほど開いていなかったため放出が上手くいったという恵まれた面もあった。それと同時にその放出資金を元手に獲得していったダイアー、デイビス(以上14/15)、デレ(実質15/16)、ソン、アルデルワイレルド(15/16)の活躍と既存の若手であるケイン、ウォーカー、ローズ、メイソンの成長で、14/15シーズンのポチェ初年度は失点数が多く5位止まりだったものの、15/16シーズンには終盤までレスターと優勝争いを繰り広げるなど大躍進。その後の過程は省略するが、CL準優勝、3年連続CL圏内という結果を見ればクラブ史に残る成功であったと言える。「Rebuild」における「痛み」の部分も、近年ほど下位クラブが力を持っていなかったというのもあり、ポチェは初年度から結果を残していて、「耐える時間」がほぼなかった。そして「資金」に関してもポチェ初期から最盛期(個人的にはCL準優勝の前年頃まで)で考えると、大きなクラブからの投入はなく資金面でクラブ側が苦しむことはなかった。
 まとめに入ると、正直上手くいきすぎていた面はある。「耐える時間」と「資金」という痛みを伴わずに成功を勝ち取ってしまった(敢えてこの表現を使わせてもらう)「Rebuild」だった訳である。余剰戦力の売却が尽く上手くいき、既存の若手がリーグで使えるレベルになって更に成長する時期に丁度被り、エリクセンやデンベレといった「Rebuild」全段階からの選手もハマり成長し、主力の長期離脱も少なく、補強も当たり、プレミア中下位のレベルも今ほど高くなく、コケるビッグ6もいるという条件として全てが整っていた。「Rebuild」の成功例ではあるが、同条件を意図的に作り出すことは不可能に近いので参考にすべきではないというのが僕の意見。

2節 ポチェ末期

   チーム状況が悪化した中、「Painful Rebuild」を説きクラブの再構築を図ったポチェティーノだが、19/20シーズン途中に敢え無く解任。結果として上手くいかなかった「Rebuild」について考える。
 クラブは、新スタでフルシーズンを戦う初年度として、ポチェティーノという監督の首は切らずに「Rebuild」を図った。緊縮財政を強いられていたがために補強が0だった前年の18/19シーズンから打って変わり、クラブ史上最高額で獲得したエンドンべレ、ロチェルソを獲得、ポチェティーノ自身も4-3-1-2という新たなフォーメーションの構築を模索した。しかし結果としてはCLでも大敗を喫し、リーグも14位と落ち込む中、クラブはポチェティーノを解任し、「Rebuild」は座礁した。ポチェティーノ解任の直接的な理由は成績不振であるが、その成績不振の要因は何層にも連なっていた。戦術的な幅の狭さ、主力に怪我人が出ると極端にパワーダウンする選手層の薄さ、全盛期を作り上げた選手たちの劣化、主力の勤続疲労によるパフォーマンス劣化、補強が全くハマらなかったこと等々、挙げ始めればきりがない。しかし結果としては失敗に終わった訳である。
 この「Rebuild」が失敗した要因としてはポチェティーノというよりは、クラブ側の「覚悟」が足りなかったからではないかと僕は考える。「Rebuild」の必要性を繰り返し叫んだポチェティーノに対するサポートの少なさ、そして「Rebuild」する際の「Pain」を最小限に抑えてできるだけコスパよくそれを実現しようという、結果論でしかないが見立ての甘さが招いたことである。要は、「中心選手との別れ」「余剰戦力の大量放出」、「資金」という痛みを避けようとした中途半端な「Rebuild」だった訳である。
 まず「資金」面。これは19/20シーズン前の夏み限った話ではなく毎シーズンの積み重ねであるが、まず選手獲得への資金投入がそもそも少ない(新スタ建設や元の資金力的に仕方ないので悪いとは言っていない)、そしてそれが効果的ではない(16/17以降)ので無いに等しいことがまず問題として挙げられる。具体的に述べると、ワニャマやモウラ、ジョレンテといった短期的な貢献はした選手たちはいるものの、シソコ、ヤンセン、エンクドゥ(以上16/17)、サンチェス、オーリエ、フォイス(以上17/18)、ZERO(18/19)、エンドンべレ、ロチェルソ、セセニョン、クラーク(19/20)と、新加入選手が尽く期待外れの出来で終わったがために持続可能なチーム作りに欠かせない新陳代謝が図れなかった訳である。ポチェ期を通して給与水準を上げたりだとかで、そちらに費やした金もあるだろうが、「Rebuild」における「Pain」として結果だけでみると資金投入がほぼないに等しいと言っても過言ではないレベルであったということである。
 そして次に「中心選手との別れ」。ケインに対する判断はここで記すには長くなるので省くとして、まずはエリクセンについて触れる。結局半年後200m£という格安の値段で放出することになるが、退団希望まで表明している契約年数が残り一年のエリクセンを売れず(売らず)、「Rebuild」の旗手としてはおろかそれを妨げるようなパフォーマンスの悪さを見せた彼を残したことはクラブ側の判断として間違っていたことを示す(結果論だしパフォーマンス低下は予測できなかったしオファーが来なかったのだろうということは理解してます)。
そしてローズ、アルデルワイレルド、フェルトンゲンといった全盛期を支えた功労者。
 ローズに関しては前年に負い手術まで受けた膝の怪我の影響で急激な劣化、鬱病も患い、かの有名な「Googleで検索しなくてもわかる有名選手が必要」という発言を残したりだとか、そういった中で19/20シーズン目の移籍市場では交渉がまとまらずクラブに残しておいたがために移籍金を残しての退団とは至らなかった。
  次にアルデルワイレルド。絶対的な立場ではあったが、年々スピードの衰えは隠せなくなりプレミアでは限界を感じるシーンというのも見られるようになってきたスパーズ晩年。契約延長交渉ももつれたりする中、19年夏までの250m£の契約解除条項を使わせることなく保持し、最終的に20-21シーズン前の夏に130m£での放出に踏み切る。
  そしてフェルトンゲン。退団後のインタビューで明かしたように、頭部の負傷の後遺症に悩まされ目眩や頭痛が残っていたことと身体的な衰えによるパフォーマンス低下。記憶によると売却の噂は上がっておらず、ただスパーズが彼の提示する条件を飲まずに契約更新に至らなかっただけの円満な退団ではあったかもしれないが、結果移籍金0での退団となっている。
 要は陰りが見える選手たちを大した額で売れないところまで使い切り、今後数年間を託す新しい選手を獲得するために切れなかったことが「Rebuild」をする上では問題だったという訳である。その時々の強さだけを考えれば衰えてきたとはいえ先に挙げた選手達の安定感は絶対だったし、後任がいなかったという事実は否めない。売れなかった要因も沢山考えられる。しかしここでは「Rebuild」する上でというのを前提にしてるのでそこは度外視する。
 また「余剰戦力の大量放出」という面でも足りなかったことが否めない。例えばシソコ、ラメラ、ダイアー、オーリエ、デイビス、ルーカス、ワニャマといった面々。ここに挙げた選手はポチェティーノの戦術面との相性であったり、当時見せていたパフォーマンス等を考えて列挙してみた。各々売却に至らない状況(契約年数とか枠とかクラブの期待とか)があったのは理解できるので、「Rebuild」を掲げるならこのような選手たちの売却まで進めるべきだよねって話。実際これらの選手たちは輝く瞬間はあれど、言っちゃ悪いが使わないといけない状況だったから使うレベルであって、当然「Rebuild」後の新しいクラブのチャプターで核となりえる選手ではなかった。そこを彼らの売却費で選手の新陳代謝を図るべきだったねって。
 一応最後に「耐える期間」について触れる。結果半年も経たずにポチェ解任へと繋がる訳だが、クラブは待てなかった、というよりも成果を上げる期待値が低くなったことによる損切りをした、と言うべき状況であったので、「Rebuild」の「Pain」としての「耐える期間」が少なかったのではないかとは僕は思わない。何故なら監督の限界値は見えていた中で閉塞感はどうしようもないレベルまで達していたから。
 長々と書いてしまったので何が言いたかったのかをまとめると、「痛み」を伴わない「Rebuild」は無理があるよねって話。元も子もないかもしれないが、「Rebuild」が成功したかどうかの次元の話ではなく、ポチェ末期に関してはそもそも「Rebuild」と言えるのかどうかっていう話だったのではって。どちらにせよクラブの中途半端な姿勢によりポチェティーノの物語は終焉を迎えたという事実が存在するのみである。

そして次に章立てして他チーム、特にアーセナル、リヴァプール、(シティ)辺りの「Rebuild」について触れたかったんだけど、時間が足りないため割愛。でもここで言いたかったことは、彼らの成功は僕が大きく分けた4つの「痛み」を通った上で成し遂げたものであるということ。

2章 今のスパーズにおいて「Rebuild」は可能か

 そろそろ本題に入ろう。今という時代にプレミアリーグに所属してプレミア優勝(CL圏)を狙い、差は縮まっているとは言え給与水準も使える資金額もトップとはまだ開きがあるスパーズが「Rebuild」を行うことの難しさを考える。それにあたっては、僕が提示した「Rebuild」の4つの「痛み」の側面から見ていく。

1節 「中心選手との別れ」

 現在のスパーズのスカッド内における、別れを考えるべき選手として挙げられるのは何といってもケイン、ソン、ロリスの3人であろう。そしてこれらの選手との別れを「Rebuild」に当たって決断できるか、ということを考えると答えは「Yes」であり「No」でもある。それはクラブが彼らを放出することを決断することは大いに考えられるフェーズには入っているが、実際問題それが可能か(特にケイン)を考えると僕は「No」であると考えられるからだ。
 まず簡単にケインについて。彼は今自己記録更新レベルでプレミアでゴールを積み重ねていて見方によれば絶頂期であろう。しかし運動量の低下、アジリティ不足などの身体的な衰え(?)がチームの重荷になってきているのは否めない。前線からのプレッシング力の低下だけではなく、全盛期と比べての話であるが、起点としての働きも低下している現状。未来のための「別れ」として、莫大な移籍金が見込める彼の放出をクラブが認める可能性はないとは、彼のスタンスを見ても言えない。もし仮にクラブの象徴であるケインの放出を認めるとしよう(99%ないといえるんじゃないかとは思ってるけど一応)。そしてその時に問題として挙がるのが、彼の移籍先である。ここで彼の選手としての目標を推測ではあるがまとめると、プレミア優勝とアラン・シアラーの持つプレミア最多得点記録(260得点)の更新、そしてCL優勝であろう。そしてこれらが達成可能なクラブ、且つ彼の獲得資金があるチームとなると、シティ、レアル、バイエルン、PSG辺りになるだろうか。シティは彼の目標全てを達成可能な環境でもあり絶対的なCFがいなかった状態でもあったため、彼の移籍先としては最適であった。しかしご存じの通り移籍交渉は破断し、シティはハーランド獲得。移籍の線は0になった。そしてレアルに関してもベンゼマ健在、ロドリゴも台頭してきて、数年後ムバッペ獲得(?)も考えられる中、落ち目のケインに大金を使う可能性は低い。そしてバイエルンに関してもパリに関しても、リーグレベルを下げてまで彼がCL優勝に固執するとは考えられず、結果としてスパーズ残留の道しかないだろうと考えられるのが現状。
 そしてソン。彼に関しては「Rebuild」をするのなら放出に踏み切る可能性がなくはないのではと考える。今季だけの不調、勤続疲労などの擁護の声も見られるが、急激なパフォーマンス低下(点が取れないとかではなくすべてのプレー面に関して)は看過できないレベルまで達しており、後釜とも考えられるリシャルリソンの獲得、トロサールへのオファーの噂などから考えても、クラブが売却に踏み切ってもおかしくない状況は出来上がっている。そして個人的な意見を述べると、感情度外視で考えてクラブの「Rebuild」だけを考えるのならば、高額な移籍金収入が見込め、30歳を迎えプレースタイル的にもこの先下降線の一途を辿るであろう彼の放出に僕は賛成である。
 最後にロリス。相変わらず抜群の反射神経を活かしたセービングは衰えを知らないが、特に今季の失点に直結するミスの多さと、これも相変わらずではあるが足元に期待できない彼からの世代交代にクラブが踏み切る決断をすることは容易に想像がつくだろう。なのでこんなもんでいいか。移籍金云々の話もこの年齢ではないし。
 このようにスパーズで「Rebuild」を行うことを考えた場合、少なくともケインは残った状態で始まるであろうと考えられる。

2節 余剰戦力の大量放出

 僕の懸念点の内の大きな一つがこの部分。スパーズというクラブの立ち位置的にも難しい部分でもあるし、それと同時にスパーズが苦手にしているからだ。まずそもそも近年のプレミアバブルとも言える現象により他リーグとの経済的格差は開く一方であり、またプレミア上位陣と差はあるものの近年給与水準が上がっているスパーズというこの2つの現象が売りオペを難しくさせている。簡単にわかりやすく言うと、スパーズを余剰戦力として放出される選手というのは他リーグの中堅レベルで活躍できる程度の選手くらいで、そのくらいのチームには給料を同レベルで払ったりスパーズが要求する移籍金を払う余裕はないよ~ってこと。近年の例で言うと、エンドンべレ、ロチェルソ、ヒル辺りがそれを示している。それこそポチェ初期はこの格差が開いておらず、余剰戦力を他リーグに売り払うことができたが、昨今の環境では難しい。「Rebuild」を行うとしても、望むような移籍金を残して余剰戦力を放出することは不可能に近いと思われる。それが意味するところは移籍金収入の減少、最悪残留であり、「Rebuild」を妨げる存在になってしまうということである。この後扱う「資金」面と繋がるが、移籍金収入をある程度諦め、ただ地道に「Rebuild」に当たっての余剰戦力の放出を繰り返すしかないのである。

3節 耐える期間

 これも大きな懸念点。近年の上手くいきすぎた結果以上のことを期待するクラブ、サポーターは、どうせ「待てない」でしょってこと。
 まずクラブ。元来監督に見切りをつけるのが早いとして批判されることも多かったレヴィ会長だが、近年もその節が見える。短期間で結果を残すことだけを求めたモウリーニョ、(ヌーノ)、コンテ。そして彼らが就任するまでに具体的な候補として挙がった監督もフォンセカ、ガットゥーゾ、テンハーグ等々様々なスタイルの監督ばかりであって、全く一貫性がない。(そしてどうせこの後トゥヘルとかマルコ・シウバとかトーマス・フランクとか出てくる。)このような前の積み上げが無に帰すような監督人事を繰り返し、1からのチーム構築を求められ、結果が1~3年以内に出なければ首を切られるという現状を見るに、クラブ側はまず「耐える期間」をサポートしながら辛抱強く待てないとは僕は思う。
 そしてサポーターに関して。これは現地や日本国内含めて。まだシーズン中でありコンテもまだピースが足りないと何度も何度も繰り返しているのにも関わらず、コンテに既に見切りをつけたかのような人間の多さ、彼の周辺に波風を立てるスパーズに近しいメディア、近年の補強に使う金に関してはスパーズの規模を考えたら文句は言えないにも関わらず油資本になることを奨励する人の多さ、論拠に乏しい#Levyout,#Enicoutを唱える人の多さ。コンテに関する多くの意見に僕は納得いっていないし、ここは長くなりそうなのでこれくらいにしとくが、現状「耐える期間」を耐えられるサポーターであるとは言えない。

4節 資金

 そして最後に資金面で「Rebuild」が可能か検討する。結果論で言うと、ここの面も厳しいと言わざるを得ない。これはスパーズが金を出さないとかの話ではなく、近年の移籍金バブルを考慮すると難しいのではないかと思った次第である。スパーズで今後数年核となるような選手の獲得は勿論、若手の有望株でさえ数年前では考えられないレベルの移籍金がかかるわけで、一度に大量の新戦力をチームに迎えることは難しくなっている。「スパーズの」「Rebuild」において求められる選手の質はそれ相応に高いので、ノッティンガムフォレストが今夏23人の選手を獲得したのとは訳が違うのである。そして1,2節で触れたようにスパーズの選手でそれをまかなうことができる選手の数は少なく、移籍金収入もあまり期待できないことも根拠の一つ。
 以上のことから、今のサッカー界におけるスパーズ程の規模のクラブの「Rebuild」は数年前と比べて、さらに長い期間をかける必要性がある中、スパーズの状態を鑑みると大きな入れ替えを行うのではなく徐々にそれを行うしかないのではないかと。

5節 果たして「Rebuild」は可能か

 以上のことから、この章の章題でもある疑問について、僕は今のスパーズにおいて「Rebuild」は不可能に近いのではないかと考える。この論に至った流れとしては、中心選手(特にケイン)や余剰戦力の大量放出は期待できない→移籍金収入は望めない→資金面でも苦しい→徐々に血の入れ替えを行うしかない→それをクラブ・サポーターは待てないというものである。簡単に結論付けたところで最終章に突入しようと思う。

3章 今スパーズは「Rebuild」をするべきか

 NLDで敗北したことにより一気にメディア方面からのコンテのネガティブな面の報道、そしてサポーターからのコンテに対する不満の噴出が止まらなくなってきた雰囲気のある現状。
 話の組み立て的に僕の結論は見えているだろうが、その通り、僕はコンテを切っての「Rebuild」をするべきではないと強く思う。2章で考えたように、まず今のスパーズにおいてのそれは「不可能に近い」と考えるのがまず一つの大きな論拠。無理やりコンテを切って大型刷新を行おうとしても結果中途半端なそれにしかならず、ポチェ末期のような結末に終わる可能性が高い。
 そしてもう一つはコンテを待つことがより良い結果をもたらすのではないかと考えるからである。コンテ就任後のスパーズは確実に前進していると僕は考える。戦術的にも5-4-1という守備ブロックの構築は簡単に破られることのない強固なものを作り上げたのは間違いない。コンテのこのブロックの肝はボランチ二枚を中心に据え続けること。彼らがサイドにカバーしにいくことを制限し、脆弱なバック人を晒さずに確実に中央のエリアを制限する。ポチェ期は言わずもがなではあるが、モウリーニョ期、ヌーノ期といった守備に重きを置いた監督の下でも課題となっていた部分である。そして攻撃面でもコンテお得意のサイドの菱形(WG,WB,ボランチ,HV)を使った前進の形。まだ改善の余地はあるものの、ビルドアップもくそもなかった状態のスパーズにおいてロングボール以外の前進の形を生み出したことは称賛に値される。そして何より今コンテはチーム作りの真っ最中である。あと3回の移籍市場が必要という何度も見た発言の通り、実際問題としてベンチメンバーだけではなく、スパーズの選手はプレミアのタイトルを狙えるレベルに達していないと言わざるを得ない。そしてこの部分も選手の質的にさらに改善される可能性が高いことは自明(特にRWB,LWGのとこ)。
 また更に、これは僕の主観的なものが大きく入るのだが、コンテのクラブやサポーターに対する態度が柔軟になったのではないかと思えるからだ。例えばコンテの消極的な姿勢に不満を抱き退屈だという声が噴出してきた時、体感として前々回のNLDで5-4-1ブロックを敷き負けた試合の後頃からだろうか。コンテが時折前プレを促すシーンが見られるようになり、(最終ラインの選手の特徴、そして最前線の運動量の少なさからみて僕は反対だが)ハイプレスを仕込み始めたのである。そして前回のNLD。序盤からハイプレスをかける姿勢を見せるなど、明らかにダービーであることと前回引いて守って負けたことを意識した戦い方を選択したのである。要はコンテがクラブ、サポーターに歩み寄る姿勢を見せているのである。そして若手の起用に関してもそのような姿勢が見られ、RWBに対する不満が高まった際に短い時間ではあるもののスペンスを出したりだとか、負け確の試合で数人投入したりなど、そういった面でも歩み寄りが見える。クラブとサポーターからの印象回復は監督に求められることでもありそれの一環、また戦い方の変更や若手の起用も悪ーい見方をすれば口うるさいサポーターへの当てつけとも見て取れるが、どちらにせよ頑固な彼がそのような姿勢を見せ、パレス戦前の会見で「強固な土台作り」について言及したようなところからも、スパーズでの未来を描いてくれようとしているコンテを個人的には応援したい。
 コンテはスパーズの現状を客観的に冷静に分析した上でトップとの差を明確にし、そこに対する要求(無理難題はスパーズで突き付けていない)を的確に上層部にしてくれて、戦術的な練度の高まりもこれから期待できる。使える駒で結果を残せよという意見もわかるが現状5位につけCLもグループに恵まれたとはいえベスト16進出。前半塩漬けで後半出力を上げる戦い方に関しても、「負けない」堅実なチーム作りで結果を残してきたコンテは変にサポーターの圧力に屈して前プレをしたり自チームの選手のミスで失点さえしなければ僕は成功に繋がると思っている。ようやく正面からタイトルを狙える規模感のチームになってきて、それをコンテという劇薬で急速に進めている最中、それこそ土台作りの最中であり、コンテという監督だから1、2年目で結果を残さなければ意味がないという謎の評価基準によって判断するのは偏見に固執し過ぎではないか。監督交代を叫ぶことは簡単である。何故ならそれによるマイナスはほぼ考慮せず、考えたとしても自らの理想に近づけた楽観的な分析であり、プラスの面ばかり強調することができるからである。そして何度も繰り返すが、「Rebuild」が今のスパーズにおいて成功する可能性は低いと僕は考える。僕たちサポーターは安易に「Rebuild」という都合の良い言葉を使わずに、コンテの下で「待つ」選択肢を持つことが求められるのではないか。というより、「待つ」べきであると強く思う。

おわりに

 結章書く体力はないので3章に言いたいことは書いた。コンテに対する評価は人それぞれだろうし、色々な人の意見を聞いてみたいところであはある。あとモウリーニョ期から続く問題として、見ていて面白くないと言う、そしてそれを論拠の一つとして解任を望むサポーターが多いのは、単に自分の好きなサッカーと彼らの信奉するサッカーが合わないだけでしかなくない?とは思う。自分の好きなサッカーで自分の好きなチームが優勝を狙うのがもちろん理想ではあるけれど、優先順位が違くないか、と。自分自身全盛期シメオネアトレティコや一時期のバーンリーのようなクラブが好きで、モウリーニョやコンテのサッカーに耐性がありすぎるのもあるかもしれないとは思うけど。
 そして最後に復帰が噂されるポチェティーノについて触れよう。どうしてもポチェティーノの個人サポーターであるレヴィが彼をどうしても招聘したいのなら、せめてケインやソンのサイクルが終わってからにしてあげて欲しい、選手たちのためにもポチェのためにも。そしてポチェティーノとは戦術的に合わない選手を多数抱えている現状から見ても、それこそ彼を呼ぶ時が「Rebuild」の時であると思うので、そこに対するサポートは全力でして頂きたい。
 貴重な時間を使って読んでくれて、ありがとうございました。結局コンテを続投すべきという僕の論も、個人的な感情や主観的に情報を取捨選択して出来上がっているものなので、改めて客観的な立場から見た皆さんの意見を聞いてみたいところです。もしよければまたRT等で広めていただければなと思います。それでは。



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