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前座応援会

都の休業要請にともない、ゴールデンウイークに詰め込んでいた落語まわりの予定が軒並み中止・延期となった。急にできたヒマをつぶすのに躍起になっていた折、綺羅星さながらタイムラインに流れてきたのが「前座応援会」だ。


柳亭小痴楽師匠の発案で企画された、この前座応援会。わたしのようなヒマを持て余すフッ軽ホイホイである。

もちろんヒマなので、8・9日両日とも視聴することができた。んもう、めっちゃ楽しかった。この会の雰囲気がどうだったかについては、詳しくはTwitterでのハッシュタグ「#前座応援会」を追ってくれ。答えはそこにある。


ちょっと話がかわるが、このゴールデンウィークにYouTubeで「伯山ティービー」の2020年12月中席の模様を見直して学んだことがある。それは「知らないと見えない」ということだ。

2020年12月中席の動画はリアルタイムでチェックしていたので、初見ではない。演芸ド初心者だった当時でも、寄席の楽屋の様子は十分に楽しめた。しかしこのたび見直したら、前回は多くのことが「見えていなかった」ことに気づいた。当時から半年ほどのあいだに、落語会や寄席に通ったり、ファンの方と交流したり、お気に入りの落語家を追いかけたりしてからあたらめて同じ動画を見てみると、「解像度」が全く違ったのだ。「あれ、この噺家もいたんだ?!」「あーこの方のあの時のあれ、良かったなー」「そうそう、この方のこういうところが好きなんだよなー」などなど、当時の比にならない奥行きが感じられるようになっていた。どうやら「知らないと見えない」「見ようとしないと見えない」ということがこの世にはたくさんあるらしいことを知った。

そんな折のこの「前座応援会」だ。この配信を視聴してよかったと思う理由のひとつが、前座さんたちのことが「見える」ようになったことだ。というのも正直、寄席で見たことのある前座さんが何人かいたが、この配信を見るまでは、なんというか、そこまでちゃんとは「見ていなかった」ように思う。どこの一門で、どの先輩とどんな関係性で、どんなお人柄で、どんなことを考えていて、なんてほとんど知る由も機会もなかった。

それがこの配信を見たことで、今回ご出演の前座さんをどこかで見かけたら「あ、あの時の、」と気付けるようになった(と思う)。日々更新される莫大な情報の中でもその存在が「見える」ようになったわけだ。これから彼・彼女たちが経験を積んで成長していくのをリアルタイムで目撃できる、同じ時代を生きることができる。わたしはそれが何だかうれしい。

今は一人一人を熱量もって追いかけるとまではいかないまでも、いつか、深く感銘を受けたりとんでもなく夢中になったりする時がくるかもしれない。この伏線を回収するその時が楽しみでならない。今回は、そんな「種まき」の会だったように思う。


それに今回知ることができたのは、前座さんのことばかりではない。企画・運営した先輩たちのまなざし、その場にいない芸人さんたちについても色濃く伝わってくる横・縦のつながり、演芸ファンたちの盛り上がり……若い芽を中心に、落語そのものの魅力が渦巻くような、実にいい時間だった。演芸ファンとして貴重な経験値を積ませてもらった。

素敵な機会に、ただただ感謝するばかりだ。


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▼後日アフタートークもある模様


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▽ご出演はないものの、A太郎師匠の名言は記録しておかねばなるまいよ。


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