個人的によかった映画・ドラマ・アニメ7選【2022年塩谷的10大トピック②】
2020年の会社のボスによる苛烈なキメハラ(『鬼滅の刃』をめちゃくちゃ勧めるハラスメント)をきっかけにAmazonのprimeビデオを見始めた私。結果的には、様々な映像作品を楽しみ人生が豊かになった。なんて素敵なハラスメントなんだろう。
というわけで、映画館で見た映画なども含めて、今年見て感銘を受けた映像作品を振り返ってみようと思う。全体的に、「思ってたのと違う!」という展開の作品に魅力を感じる傾向が見てとれた。全く単純な人間である。
ちなみに、今年の公開作というわけではないのと、順不同なのでご容赦を。
1.平家物語(アニメ)
主人公の”びわ”を軸に平家一族の盛衰を描いた作品。
幼い頃から見てきた登場人物たちの命が戦乱の中で消えていくはかなさ。平家は滅亡する、という結末がわかっているからそこの切なさ。言いようもない悲しさが涙を誘う。
何となくSpotifyで聞き流して好きだった『parkside in bloom』の作曲者・牛尾憲輔さんが音楽を担当しており、それもよかった。そして改めて平家琵琶ってかっこいいと思った。
そういえば、国立劇場に歌舞伎『義経千本桜』を見に行った時に、平家の人物の名前が多少わかったのも助かった。
2.マイ・インターン(映画)
2015年公開作。とにかくおじいちゃんが素敵、な作品。
ファッション業界で起業しバリバリ働きつつ家族も大切にしたいジュールスの元にシニアインターンのおじいちゃん、ベンがやってきて、さてどうなるでしょう?というお話。ジュールス役はアン・ハサウェイ、おじいちゃん役はロバート・デ・ニーロ。
テーマは、いわゆる「温故知新」というところだろうか。でも、おじいちゃんが過去に固執せずに現代に食らいついていこうとする姿勢があってこそ、ジュールスのベンに対する信頼はどこまでも厚いものになっていく。とても失礼だとは思うけど、「おじいちゃん」ゆえに性別を超えて心を許せる部分があるのだろう、ということは強く感じた。ベンがジュールスと同年代の男性だったら絶対に成り立ち得ない関係性だった。
ただし、そこのところは油断ならぬ、モテるおじいちゃんだった。おじいちゃんには亡くなったおばあちゃん一筋でいてほしい気もするけれど、これで年齢に関わらず“人間”としてバランスがとれるのかなとも思っている。
物語終盤、プライベートで起こった事件でいよいよ心がくじけてしまった主人公ジュールスへの同情と、ジュールスをとにかく優しく受け止めてくれるベンの姿に感涙を抑えられなかった。「なんなんだこのジジイ…!!」って言いながら一人で泣いた(お口が悪い)。
あんな年の取り方をしたい。素敵なおじいちゃんでした。
3.きょうの猫村さん(ドラマ)
YouTubeでループ放映されていた時に見た。1話5分程度のショートドラマだ。猫の猫村ねこさん(本当に猫)が家政婦派遣事務所に入って奉公するというお話。
で、問題は、この猫村さんを松重豊が演じているということ。
あの松重豊が猫の役ってどういうこと!?とあまり期待せずに見たのだが…とんでもない癒し系ドラマだった。
猫の被り物を被った猫村さん役がはまり役すぎた。松重豊といえば、大河ドラマ『八重の桜』で厳格な父親役をしていたイメージが強かったのに(記憶が古すぎる)、その色は一切見えず。あの松重豊が「かわいいねこちゃん」でしかないのだ。それが、信じられないほどに、この世のものとは思えないほどに、かわいい!
見終わったら、本当に心が丸くなった。多少イライラすることがあっても「なにさなにさ!」って心の中で猫村さんが爪を研ぎながらかわいく怒ってくれる。家事をしていると「猫村さんのうた」を口ずさんでしまう。その後、触発されて作ってみた「ネコムライス」はおじゃこが香ってとっても美味しかった。もう、私は猫村さんになりたい。
絶大なる癒しをもたらしてくれたので入選。ありがとう猫村さん。
4.スクール☆ウォーズ(ドラマ)
「俺はこれからお前たちを殴る!」というセリフだけは知っていた古いドラマ。パロディはよく見るけれど、本物は見たことがなかったので見てみた。高校時代、何かの授業でその元ネタとなった先生のドキュメンタリーを見たような気はする。
このドラマ、生徒たちが成長する話なんだと思っていたら、全然違った。
もちろん生徒も成長するが、山下真司演じる滝沢先生が、長い年月の中で色んな人たちとぶつかって、たくさん泣いて、それでも諦めずに向き合い続けて、何物にも代えがたい信頼を構築していくという物語だった。「信じること」を信じてみたいと思わずにはいられなかった。
確かに、登場人物の命が軽すぎる部分には時代を感じてしまったけど、何か壁にぶつかったとき、特に人間関係での壁にぶつかったときには見返したい。やはり不朽の名作だ。入選です。
あとは、とんでもない不良から立派なラガーマンに成長した大木大助がめちゃくちゃかっこよかった。悪そうだけど。いや悪かったけど。でも格好いい。
5.ふるさと(映画)
なんとなく気になって見てみた。こちらも1983年公開と古めの作品。
とある田舎の村がダムの底に沈んでしまうまでの物語で、息子夫婦とともに暮らしている認知症のおじいちゃん・伝三と、その隣の家の少年・千太郎を中心に進んでいく。
伝三は、息子のお嫁さんの顔もわからなくなってしまったけれど、釣竿を持たせれば右に出るものはいないほどの釣りの名人。釣りをしているときの姿はとてもしっかりとしたもので、「まだ大丈夫なんじゃないか」と思わされるが、やはりそうはいかない。
そんな姿が、消えゆく村と重なる。もう誰も戻ることができなくなるけれど、美しい自然や生き生きとした人間の暮らしがまだ残っている村。不可逆的な盛衰を見せつけられ、胸が痛む。
だんだんと映画であることを忘れてしまうように引き込まれるような作品だった。
6.俺の家の話(ドラマ)
宮藤官九郎脚本のドラマ。2021年のドラマだけど、今年になって見た。能楽師の家に生まれたがプロレスラーになった寿一が、父親で人間国宝の寿三郎が倒れたのをきっかけに実家に戻るお話。
能は何度か見たことがあるのと(起きていられなかったけど)、学生時代から狂言師の先生にお世話になっているのもあって、能楽師を演じる西田敏行の謡がすごいなぁ…と思った。プロの目線だとどうなのかわからないけれど。
語弊があるけど何も考えずに楽しく見られるドラマで、単純に面白い。そのくせ、最後にはあまりにも受け入れがたい結末が待っていた。本当に信じたくなくて、悲しすぎて泣いた。フィクションなのに、ここまで受け入れられないと思う結末はあっただろうか。だけど、そんな結末が最高に良かった。
ちなみに、宮藤官九郎作品でいけば『真夜中の弥次さん喜多さん』も見てみたが、中村七之助の得も言われぬ色気にノックアウト。ぜひ歌舞伎の舞台で彼の姿を見てみたいと思った。
7.SLAM DUNK(アニメ&映画)
世代問わず愛されるスポーツ漫画の王道を今更ながら。品川の3x3バスケ選手の取材をしたのをきっかけに、アニメ版を見てみることにした。
勝手に熱血スポーツ漫画なんだと思っていたけれど、全く思っていた展開とは違った。めっちゃ喧嘩するし、ギャグばっかりだし、主人公の桜木くんは全然バスケのルールわかってなかったし。イメージとは全然違った。とは言え、キャラクター一人一人の苦悩だったり、背景だったり、その上で生まれてくるプレーが何ともドラマチックだ。スポーツには疎い私でも、とてつもなく楽しめた。
アニメを一通り見て満を持して見に行った映画『THE FIRST SLAM DUNK』には、30年分の感動を一気に摂取したと言っても過言ではないほどの衝撃を受けた。漫画を読んだことがなく結末を知らないばかりに一つも気が抜けない。スリリングな試合展開に思わず声が出てしまいそうになるのを抑えるのに必死だった。見終わった頃には酸欠で、でもマスクの下ではニヤニヤが止まらなかった。
帰ってきて、改めてアニメを見てみると「そうだった、あの子はただのおバカさんだった!」と安心する一方で「この裏ではあんな話があったのか…」と深みが増す。ますます好きになってしまう。
これは漫画も読まざるを得ない。
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