迷信

教室で一人写真を見ていると、後ろから声をかけられた。
親友のAだ。こいつは砂場を掘り進めたら温泉が出てくるとか、くしゃみしたら誰かに噂されてるってこととか信じてる。あとNIKEをニケって読んでる。とりあえず度が過ぎるほどのバカだ。

会話はいつもAから始まる。
「なあなあ、お前知ってる?写真を取られると魂抜かれるらしいぜ!」
「迷信に決まってるだろ?高校生にもなってそんなの信じてんのかよ(笑)」
「いや、だって俺のじっちゃんが言ってたんだぜ?お前、俺のじっちゃんを疑うのかよ!」
「いや、疑うってゆーか、お前のおじいちゃんも冗談で言っただけだぞ、たぶん。」
「いーや、俺はじっちゃんを信じるよ。そうだ、賭けしようぜ。俺がお前を信じさせられるか、できないか。もち、罰ゲームはありで。」
「罰ゲームって何すんの?」
「何でもいいよ!賭けに勝ったほうが決めよう。もちろんお前はできない方だろ?」
「当たり前じゃん。勝てると分かる賭けに乗らないわけねーよ。んー、そーだなぁ、罰ゲームはジュースでいいや。160円用意しといてね(笑)」
「まだわかんねーだろ!絶対証拠持ってくるから、顔洗って待ってな!」

Aは足早にどこかへ行ってしまった。「はいはい、『首』洗って待ってるよ」そう思いながら、画面のAに向き直った。話している時に無音カメラで撮ってやった。撮られたことなんて知らずに証拠を見つけようとしているAを想像するとニヤついてしまう。早くあいつの驚いた顔が見たいなぁ。



翌朝、いつものようにテレビを見ながら朝ごはんを食べていると、きれいな女性アナウンサーが聞き慣れた名前を言った。

「昨夜未明、高校2年生のAさんが自宅で倒れているのを父親が見つけ、病院へ救急搬送されましたが死亡が確認されました。」


俺は我を失い、朝食のパンも喉を通らなかった。
初めて学校を3日連続で休んだ。

翌日、久しぶりに学校に行った。
Aはいない。

休み時間。俺はいつものようにカメラロールを開いた。そこには楽しそうに笑うAがいた。
「ほらな、言っただろ?」自慢気に言っている気がした。

静まり返った一人ぼっちの空間。
「160円のために死んだのかよ。死んだらジュース飲めねーだろ。やっぱりバカだな、お前。」俺はそう思いながらAの写真を消した。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?