梨木香歩と植物と私

ペンネンネンネンネン・ネネムズの林です。
インターネット上でまとまった量の文章を書くのはいったい何年ぶりでしょうか。

ここ何年も「好きな作家は誰?」と聞かれる機会がなかったのですが、もし今聞かれたら「梨木香歩」と答えるでしょう。

かつてやっていたアルバイトの関係で、ベタに『西の魔女が死んだ』から入ったのですが、その次に読んだ『家守綺譚』でドハマりしました。

文明開化からしばらく経ったとおぼしき日本を舞台に、亡くなった友人宅の家守をすることになった男が、友人の幽霊や、犬や、サルスベリの木と心を通わせていく物語です。

この作品の良いのは、幽霊だの、河童だの、鬼の子だのが、ひょっこりと現れるところです。
幻想的ではあるんだけど、非現実的というわけではない。
「未知」と「空想」の境界が曖昧なところに、そういった連中がふらっと訪れる。
主人公の綿貫もそんな状況に驚きはするんだけど受け入れちゃう。
その感じが心地よいのです。

さっき「ドハマりした」と書いたものの、実はあまり読書熱心なタチではないもので、その後は『家守綺譚』の続編である『冬虫夏草』ぐらいしか読んでいなかったのですが、数カ月前にブックオフでたまたま見かけた『f植物園の巣穴』を手に取ったのがきっかけで梨木熱が再燃し、続けて『海うそ』も読みました。

この2作は、心に傷を負った男が、植物のもさもさしたところに分け入っていくという点が共通しています。
『海うそ』は、もさもさしたところへ行った後、場面が50年も一気に飛んでラストへ向かうのですが、派手ではないけどドラマチックなラストシーンが素晴らしすぎて「ホゲーーー!!!」ってなります。
空間と時間の中に自我が融和していく感じ、とでも言えばいいのか…。

今は『からくりからくさ』を読んでいます。
読みはじめてすぐ、それが『りかさん』の続編らしいと気づいたので、さっき『りかさん』を買ってきました。

梨木作品の特徴は、とにかくやたらとたくさんの植物が出てくるところです。
なんかもう、「植物小説」と呼んで差し支えないのではないかと思うほど、いろんな種類の植物がもっさもっさと登場し、登場人物たちと同じ程度に物語の中で大きな役割を果たします。

そんな小説を読んでいると、身近な植物に興味が湧いてきます。
それまで気にもとめなかった草木の名前が気になります。
しかし悲しいかな、私は草木の名がさっぱりわかりません。
そんなとき役に立つのが、公園の木や街路樹によくかけてある、その木の名前を記したプレートです。
それを読んで名前がわかると、その木が古くからの友人のような気がしてきます。
木の方ではきっと「あつかましい野郎だ」と思っていることでしょう。

身近な植物をなんとなく意識して見るようになると、季節の感じ方が細かくなってきます。
気温の変化にばかり気をとられていると、急に暖かくなったり寒くなったりしたとき「季節がとんでしまった」ように感じたりしますが、季節ごとの花が咲いて散っていくのを見ていると、ちゃんと季節がつながっているように感じます。

昨今、「四季があるのが日本のよいところだ」みたいなことが言われたり、それに対して「いやいや、わりかしどこにでも四季あるから」みたいなツッコミが入ったりします。
それって、本当は日本独特の四季の感じ方が無数にあるのに、「春は桜、秋は紅葉」ぐらいのざっくりした認識しか持てない人が「四季があること」自体を誇るようになり始めたってことなのかな?などと思ったりします。

身近なものへのほんの少しの興味が、自分の世界を大きく広げるのかもしれない。
梨木作品を読んでいると、そんな考えが浮かんでくるのです。

家守綺譚
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海うそ
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ペンネンネンネンネン・ネネムズ新曲たっぷりお披露目会~入江陽さんをお迎えして~

日時:7/22(日)


open/16:00 start/16:30

会場:八丁堀七針(https://t.co/fCoLLHY0Yx)

出演:ペンネンネンネンネン・ネネムズ
入江陽

チケット:2000円(ドリンクチャージ無し)

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