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そうだ!地下遺跡を探索しよう

前のおはなし

ガラクタ城へ戻ると、そこにはポツコンしかいなかった。
ダストンはすぐにウルベア地下遺跡へ出かけたらしい。
娘のチリもこちらへ立ち寄り、その話を聞いた途端に飛び出したそうだ。
「仮面のあるなしで正体ってわからないものなのかな…?」
「その昔、タキシード仮面様っていう仮面を着けただけで別人として認識される人がいたんだ。これは相貌誤認誘発フィールドっていう視神経の信号に介入するチカラが働いているからなんだよ」
「ガタラの住人はみんなポイックリンがダストンの家の娘だって知ってるみたいだぞ?」
ダストンは興味のなくなったものへの記憶をすぐ失くすという。
チリのことは珍しく覚えている…とはいうものの、手放した手前、その容姿にはあまり興味が湧かないのかもしれない。


地下遺跡へ着くと、先に出たはずのポイックリンが走ってくるのが見えた。着替えの分、色々と後手後手になっているのではないかと心配になる。
彼女はボクたちに気付くと「天知る!地知る!…」といつもの決め台詞を放つ。

参上でございますわっ!

「ああっ こんなこと
してる場合じゃないのにっ!」
職業病のようなものなのだろうか。彼女も大変な業を背負っている。
「このままだと あの人は
とんでもない過ちを犯してしまう!」
と、彼女はボクたちに協力を願い出た。

ウルベア地下遺跡にはあの緑の石板でしか開かない扉があるそうだ。その中に眠るのは謎の古代兵器。
古代兵器を目覚めさせる前に緑の石板を奪い返してほしいと彼女はいう。
「確かに…古代のディアゴスティーニで、07系は好戦的な前機から人工知能に改良を加えた結果…理不尽な戦争に駆り立てた人たちへの復讐を企ててると読んだ記憶がある…」
適当なことを言うなとヒューザはボクを小突くが、これは史実だ。彼女は顔色を変え、ボクらを遺跡の奥へ急かす。

入り組んだ地下遺跡に道を間違えつつ、地下堂へ辿り着くとそこにダストンの姿はなかった。チリと共にほっと胸を撫で下ろしていると、ドタドタと大きな足音と共にダストンもやってきてしまった。
「わしより 早く来るなんて……
デキのいい助手は 好きじゃないですよッ!」
憤慨したダストンはこちらにポイックリンがいることに気付く。
「まさか……!
さては わしの石板ちゃんを
横取りにきたんですねッ!?」
「そやね」
「おいっ!そんなバカ正直に答えたら…」
ヒューザが口止めしようとするが、無駄なのだ。
ここで違うと答えたとて、こんな時だけダストンは勘が鋭いのだ。

この味は………ウソをついてる『味』だぜ……!

「なんて ヒドイ人ですッ!
ガラクタ好きを よそおって
わしを だますなんて……」
「ぱんイチさまは騙してなんかないわ!あなたが勝手に誤解しただけじゃない!」
何も聞いてもらえず、何も言わせてもらえなかったこちらに非があるというのだろうか。あれよあれよとこちらはポンコツと認定されていたのだ。
ダストンは「あびゃびゃびゃ」と威嚇し、こちらを振り払うと壁に石板と同じ窪みを見つける。
「あのくぼみに 入れればいいんですね!?」
そう言うと、壁をヌルヌルと這いあがる。ダメ!!と悲鳴のようなポイックリンの声と共にボクは「やっぱりゴキ…」と呟く。

「はぁぁあっ??
なんですかッ! 誰ですかッ! アンタ!!
ジャマですッ! うるさいですッ!!
今 それどころじゃ ないんですよッ!!」

ダストンは何かに向かって叫ぶと奇声を上げながら石板をはめ込んだ。
ガガゴゴゴ…
壁の奥で硬いものが動く音がして扉が開く。それと共にダストンは地下堂の中へ駆け出したので、ボクたちもそれを追いかける。

「すごい……!」

休日のお父さんのような寝姿ですッ!

…その感想は合っているのだろうか。ダストンが「ガラクタ」に近寄ろうとするのをポイックリンが制止する。
「危ないっ 逃げて!!
それは 恐ろしい兵器なのよ!!」
ガラクタはガタガタと音を立てて立ち上がり、崩れバラバラになっていたパーツがその体に吸い寄せられるように組み上がっていく。

「侵入者 ハッケン…… 侵入者 ハッケン……
タダチニ 排除シマス……」
抑揚のない音声が響く。
と、その兵器はダストンに向かってオノを振り上げる。
「お父さんっ!!」
ポイックリンはダストンの方へ飛び込むと間一髪斬撃を逃れる。
切先がかすめ、かいとうの仮面がヒラリと舞う。
「お前は…… チリ!?」
呼ばれたポイックリン、チリは構わず「早く 逃げて」と叫ぶ。

太古の帝国、ウルベアで開発されたウルベア魔神兵。戦闘に特化した破壊魔神兵と呼ばれる機体だ。
「ポツコン2号!
命令ですッ!
あの魔神兵を倒すんですよッ!」
「フウラちゃんは回復を!回復したら怒るからヒューザは最速で倒して!」
ダストンに命令されるが早いか、ボクはふたりに指示をする。
「なんでパターンわかるんだよ!」
「ディアゴスティーニに書いてあった!」
ヒューザが小さくマジかよと呟いていた。


「やった!
でかしたですよ ポツコン2号!!」
ダストンが口を開く。
「魔神兵が ガラクタに戻ったですッ!!」
あ。ガラクタになったことが嬉しいんだ…ボクたちは呆れ顔でダストンを見るが、身内であるポイックリンは違う。
「よろこんでる場合じゃないでしょ!?
死ぬかもしれないところだったのよ?
自分の命が 大事じゃないのっ!?」
追い出された…とは言っていたが、ずっとダストンのことを案じていたのだ。
「まさか……!
そんな心配のために うちから 3回も
ガラクタを盗んでいったんですかッ!?」
「そ そうよ! だって……」
「く〜〜〜っ!
わしは 自分の命なんかよりも
ガラクタの方が ずーっと大事なんですッ!!
命のが大事だなんて 甘っちょろい価値観に
わしを はめ込まないでくださいッ!
余計なコトしねえでくだせいッ!!」
捲し立てるダストンにポイックリンは怒りの表情で押し黙る。
「ぷっ……」
と、吹き出し「あははははははは!」と大きな声で笑い出した。
「ガラクタが 命よりも大事なんだ!
あはは ごめんっ!
そこまでとは思わなかった!」
そう言いながら目元を拭うのは本当に可笑しさからだったのだろうか。
「まったく! 何年 わしと暮らしてたんです?
アンタも意外と 半人前ですねえ!」
ダストンは本当に呆れた顔でポイックリンを見ている。
血の繋がりがなく、追い出し、追い出された関係であってもふたりは親娘なのだ。
「ねえ お父さん。
ウルベア魔神兵を ガラクタにしてくれた
ぱんイチに……
お礼に お父さんの持っている
キーエンブレムを あげたらどうかな?」
ポイックリンはこちらににっこり微笑む。

「お父さんは知らないだろうけど
今は 世界中の人たちが 名を上げるために
キーエンブレムを求めているのよ」
渋るダストンにポイックリンは続ける。
「キーエンブレムを持っていると
ウデききと認められ 王様や賢者様から
頼りにされる時代なのよ」

「うおおお やめてくだせえッ!
そんな恥ずかしい目には あいたくねえです!!
わかりましたよッ! キーエンブレムは
ぱんイチに ゆずるですよッ!!」
ボクたちは顔を見合わせなんとか旅を進められることを喜ぶ。
「まったく!
いつも わしの大切なガラクタに
世紀の大発見だ なんだのと 価値を見出して
役立たずさを 台無しにする……。
アンタは 本当に 親不孝な娘ですよッ!」
まだ娘と呼んでくれることにポイックリンは「ありがとう お父さん」と小さく返す。
ドルワーム王立研究院でも解明されていない部屋に留まり続けるのは危ないと、ボクらは地下遺跡を後にした。

[次のおはなし]


【おはなしの補足(蛇足)】
相貌誤認誘発フィールド
『魔法特殊戦あすか』で語られた「ほぼ素顔なのに何故、魔法少女は別人と認識されるのか?」に対する解説。本人の自己申告などで一致させる(と言っても違和感があるらしい)ことは可能。
つまりタキシード仮面様も魔法少女…?

この味は………ウソをついてる『味』だぜ……!
ジョルノ・ジョバァナ!!
ジョジョ5部、ブチャラティの初登場時の名言。いきなり手の中に目玉が出てきて、更に初対面の人にペロペロされて、体をジッパーだらけにされて…「ブチャラティ優しい!部下になる!」っていうジョルノってすごいな。

ディアゴスティーニ
全部買うと何か作れる…というのは興味湧かないけれど、読み物系のヤツは何か昔親が買っていたのを読んでいた。読み応えあった。
最近のだとスターウォーズのビークルコレクションのAT-ATとかスヌーピーのパンチニードル付きの回だけは欲しいと思っている。
ちなみに作中のディアゴスティーニは『週刊ウルベア魔神兵』という6巻揃えると1/30スケールウルベア魔神兵が作れる本。定価は2000円。

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