インビンシブル #9

「はあ、んむっ、はっ、ちゅっ、ぴちゃ……」

 高級マンションの一室に、水蜜の絡まるひそやかな吐息が充満している。
 詩織は制服のスカート以外は全裸になって、しなりと体を斜めに崩しNの股間に美顔を埋めていた。
 右手でシャフトをあやしながら、陰嚢をペロペロ舐める。とりつかれたように男根を見あげた。
 袋の裏スジに沿って舌先で刺激する。愛情たっぷりに口に含んで洗いしゃぶった。左手で邪魔な耳元の髪をかきあげる仕草も板についてきた。

 ブブブ……と無機質な音が響いている。
 詩織の秘唇とアナルの両方に、それぞれイボ付きのバイブレーターが装着されているのだ。後ろと前でローリングしている。もうずっとこうしてNの股間を舐め続けている。

「ウヒヒ、見てみろ。この新聞もこの新聞も、どれも俺のドラマをトップに持ってきてるぞ」

 Nはキングサイズのベッドにドッカと腰を下ろし、満悦至極に今朝のスポーツ新聞を並べて読みふけっていた。
 どれもセンセーショナルに<b>『藤崎詩織初主演ドラマ、視聴率42%!!』</b>と書いてある。最高瞬間視聴率にいたっては空前絶後の50%超を叩き出した。文字通り日本中が釘付けとなったわけだ。

「どうした浮かない顔をして。喜べ。勝ったんだぞ、世間に。それも大逆転のサヨナラ満塁ホームランだ。もうきらめき高校のマドンナじゃない、日本を代表するスーパーヒロインだ」
「ええ……」

 そんなふうに手放しに褒められても詩織は喜べる気にはなれなかった。
 この数字は、まさに血の涙を流して獲得した数字なのだ。薄い毛布一枚越しの生本番を全国放送されたかと思うと暗澹たる気持ちにならざるをえない。

「ここにも書いてある。
『新人アイドルでありながらヒロインに抜擢された藤崎詩織の才能にはまさに目を見張るものがある。話数を重ねるごとの成長も驚きだが、それ以上にラストで見せた鬼気迫る迫真の演技は賞賛を超越して驚嘆に値する。今年のJポップとドラマの賞レースを総なめにするのはもはや誰の目にも疑いがない。卓越した演技力だけでなく、男性の理想そのままの容姿とプロポーションも魅力的だけに、色々な意味で今後の成長と活躍が楽しみな逸材だ』、だとよ」

 どの新聞にも詩織の演技を絶賛するコメントが書かれていた。
 ワイドショーでは詩織の主演したドラマを特集として取り上げている。世間は詩織の話題でもちきりだけに、もはや社会現象とさえいえる。
 そのせいでネットには、ただでさえ多かった詩織のファンサイトが激増して、ドラマの名シーンや雑誌のグラビア、コンサート、きらめき高校でのプライベート動画まで違法にアップロードするアングラサイトが登場した。
 なかにはいかがわしいアイコラを掲載するサイトもあって、ターゲットにされた詩織が制服姿でファックされたり、ザーメンをぶっ掛けられて精液まみれになっているなどの写真が多数合成されていた。

「これからまだまだ忙しくなるな。うちの社長も大喜びだ。
 映画も決定した。次はスクリーンデビューだ。それにCMもな。この勢いで末はハリウッド女優でも目指すか」
「すべてNさんのおかげです」
「あたりまえだ。俺の女になって良かったろう」
「……はい。詩織はNさんの女になれて幸せです。これからも詩織をいっぱい可愛がってください」
「ずいぶんと殊勝な言葉づかいがうまくなったじゃないか。前はあんなに反抗的だったのにな」

 Nに肩を抱かれ、詩織は気恥ずかしそうにはにかんだ。
 ドラマが大成功したせいで、事務所には仕事が次から次へと舞い込んでいる。雑誌対談、野球の始球式、写真集、新曲レコーディング、CM、ドラマ、そして映画初主演だ。
 昼間はきらめき高校に通い、あいた時間にはこうしてNとの密会で調教を受けている。
 そして夜の肉体接待である。ついに詩織も体を売る日が近づいてきたのだ。さすがにいまや人気ナンバーワンの美少女アイドルであるだけに、何人もの資産家が買い手として名乗りをあげた。

(詩織のこの体ならどんな金持ちも骨抜きにしてメロメロにできるさ。悪く思うなよ。これも芸能界でのし上がるためだ)

 Nは藤崎詩織という圧倒的なソフトを武器に芸能界の頂点へと三段跳びに駆け上るつもりでいる。

(伝説のスーパーアイドルか。詩織なら本当になれるかもな)

 背中を優しく撫で、キューティクルなさらさらの赤い髪に触れた。
 せっかく手に入れた詩織が他の男に抱かれるのは惜しいがしかたない。
 どうせまたすぐに新しいアイドルがデビューする。それこそ雨後の竹の子のように。
 その頃には詩織はどうなっているだろうか。トップアイドルとしてさらに輝きを増しているか、それとも落ちぶれて芸能界から去っているか。以前思ったように、闇社会に落ちてヤクザ者の真珠入りのデカマラで犯されて廃人同然になっているかもしれない。
 それほどこの世界の生存競争は厳しく、詩織ほどの絶世の美少女といえど将来に絶対はないのだ。
 だからみんな体を売ってでも成功を手に入れたいと願う。それが芸能界だ。

「どうだ、美味いか、詩織」
「ふああ、オチンポ美味しい」
「よく味わえ。あとでご褒美にアナルバージンをファックしてやるかな」
「ああ、嬉しい。詩織、Nさんに後ろのバージンも捧げれるのね」
「肛門がめくれるまでぶち込むから覚悟しろ」
「は、はい。お尻の奥まで、詩織を愛して」

 うっとりとしゃぶり上げて唾を吐きかけ、いっそう熱を込めてご奉仕フェラをする。
 ジュブジュブと音をさせる。優しいキスをしながら愛しげに頬擦りまでした。
 バイブがブンブンと鳴っていた。

 おわり

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