やさしさ

「優しくない」とクレームを受けた。
コロナ禍で、病院では検温をするために入口を限定しているため導線を区切っており、少し遠回りな道ができてしまった。
足の悪い方にとっては辛いだろう。
でも大きな建物を壊す訳には行かない、導線も何度も変えたが限界があった。
コロコロ変えることにすらクレームが来る始末。
あなた1人の足のために、一日に何千人と訪れる患者を感染症のリスクに晒す訳にはいかない。
優しくないですね。
鬼でしょ?
でも私たちは病院の入口で発熱患者を弾くために、一生懸命戦っています。
自分の心ともね。

優しいって何?
看護師=白衣の天使のイメージで
少しでもイメージと違うことを言うと激高されることが多い。
入院や治療で看護師と深く関わった方ならわかると思うが
患者さんのいのちを守るために、本人にとってはきつい事をお願いしたり守って貰わなくてはならない時がある。

簡単に言うと、採血時に動かないでね!とか。
他人に針を刺されるなんて誰でも嫌だし
痛いことから逃げるのは本能。
でも針刺しの瞬間に動かれて
万が一周りの動脈とか神経に針が当たってしまったら
それこそ一生残る障害を産む可能性だってあるから
怖くても痛くても動かないで欲しい。
そう、私は吸血鬼🧛

外科ではお腹を切った翌日から、早期離床のために歩かされる。
優しくないでしょ?
泣いてても歩かせるよ?
鬼でしょ?
でもこの1日も早い離床が患者さんの回復を早めることを知っているから
心を鬼にして「頑張ろう」と声をかける鬼看護師👹

私は癌末期の緩和ケア病棟にいたので
初めましての挨拶がわりに
「みんなに聞いてるし、後で変えてもいい。今の段階でどうやって生きて、どうやって死にたいか、希望はありますか?」
と聞いていた。(もちろん患者さんにもよりますが)
後々関係ができてくると逆に聞にくいから、軽い感じで。
鬼でしょ?
癌だって言われてただでさえ辛いのに、死をあえて意識してもらう。
でもそれは最期の時に本人も家族も、望むように生きた!と思って欲しいから。
死ぬのは怖い、なんで自分が、まだやり残したことがあるのに、辛い治療なんてしたくない...
そんな思いをかかえたまま、失意の中に亡くなる方も多い。
でも「手がしびれて魚も触れないような治療はやらねぇよ!」と抗がん剤を止めた魚屋さんは、望んだ自宅で笑いながら亡くなった。最期まで自分の仕事を大切に生きた魚屋さんは、あえて死に方を看護師と考えることで、最期まで本人らしく生きられた。

「大丈夫だよ」「もう少し治療頑張ろう」
優しく看護師が言えば、抗がん剤治療をしてもう少し魚屋さんは長生きしたかもしれない。
本人の望まぬ、病院のベッドの上で。

それは「やさしさ」ですか?
何度でも言おう、看護師は鬼です。
あなたを守るための、鬼にわたしはなるよ。

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