(第3回)ITプロジェクトの状況・結果をどのように判断していけばいいのか 〜ベースライン〜
前回は、プロジェクトの状況を確認するための基盤となるプロジェクト計画について見てきました。
今回は、そのプロジェクト計画で作成されたベースラインについて述べていきたいと思います。
ベースラインは、プロジェクト計画で定義されるもので進捗状況を測定し比較するための基準点になります。
これにより、プロジェクトのパフォーマンスを測定します。
プロジェクトマネジメントのディファクトスタンダードであるPMBOKでは、以下のようなベースラインが挙げられています。
・スコープ・ベースライン
・スケジュール・ベースライン
・コスト・ベースライン
それぞれ順に見ていきます。
まずは、スコープ・ベースラインです。
スコープ・ベースラインは、スコープ記述書、WBS、WBS辞書の3つから構成されます。
要は、プロジェクトのスコープ(成果物やそれを作成するための作業)を計画段階で定めて承認されたものです。
これをベースに変更の状況を評価していきます。
計画段階のスコープに変更が入ることはあり得るという前提で、その変更をうまくコントロール出来ているかを評価することができます。
次は、スケジュール・ベースラインです。
スケジュール・モデルの承認されたものです。
モデルとは、PMBOK第7版では『プロセス、フレームワーク、または現象を説明するための思考戦略である』と定義されています。
スケジュールを管理するためには、クリティカルパス法やローリングウェーブ法などの手法があります。
クリティカルパス法では、成果物の完成まで見積もるのに対して、ローリングウェーブ法では直近のタスクだけを詳細化して、先のタスクは大雑把に計画し時期が近づいてきてから詳細化していきます。
また、その時のタスクの測定単位の設定としては、日単位や時間単位などです。
そして、所要時間を見積ったタスクをリソースやタスクの依存関係を考慮し、スケジュール・ネットワーク図などを用いてスケジュールとして作成していきます。
これをベースラインに、実際の結果と比較してスケジュールの遅延などを評価することができます。
そのために、計画段階でどのようなレベルで進捗状況を報告させるかも合わせて決めておく必要があります。
具体的には、
設計書を書いて、20%
レビューが完了して、30%
コーディングして、50%
単体テスト完了で、80%
受入テスト完了で100%
といったイメージです。
この基準が曖昧では進捗は把握できなくなりますので注意が必要です。
最後は、コスト・ベースラインです。
コスト・ベースラインは、時間軸ベースのプロジェクト予算について承認されたものです。
この工程のこの期間ではいくら必要といった感じに時間の推移に合わせて、その時に必要なコストとそれまでに必要だったコストの累計をベースとします。
これにより、どの時期にどれだけの予算が必要か管理できるようになります。
これにより、コストの状況を判断します。
コストは使い過ぎると取り戻すことは出来ません。その場合、追加の費用交渉やコストの安い要員への切り替え、効率化などの対応を迫られることになります。
プロジェクトマネジメントにとって、大きな負荷になりますので、注意が必要です。
以上3つのベースラインを見てきましたが、これらのベースラインは頻繁に変更してはいけません。なぜなら、プロジェクトの状況を正確に測定することができなくなってしまうからです。
そのため、プロジェクトに大きな変更があった場合にのみ、元のベースラインは履歴として残した上で、新たに新規のベースラインを再設定するようにします。
ベースラインは、プロジェクトを管理する上で非常に重要となるので、しっかり設定して活用していきましょう。
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