モノガタリをもう一度

⚠演劇用に作っていた脚本です。使わなくなったのでこちらに投稿します。つたない文章ですが、万が一ご使用の際はひとことお声がけいただけると嬉しいです。
⚠高校生が作ったものなので舞台構成がめちゃくちゃかと思います。ご指導いただけるとありがたいです
⚠誤字脱字には気をつけていますがたくさんある可能性があります。気づいた際はこっそり教えていただきたいです

あらすじ
モノガタリが禁止された世界で生活する主人公たち。あるとき、失われたモノガタリを取り戻そうと立ち上がった人々がいます。これは、そんなむかしむかしの物語。

登場人物

カペラ・・・主人公1
リゲル・・・主人公2

シリウス・・・この世界の王様
カノープス・・・シリウスの側近

ビッグディッパー・・・仲良し7人組
ドゥーベ・・・ビッグディッパーのリーダー
アルカイド・・・しっかりもの1
メグレズ・・・陽気
フェクダ・・・お調子者
メラク・・・副リーダー
ミザール・・・しっかりもの2
アリオト・・・活発

[本編]

メラク「みなさんこんにちは。本日はお集まりいただき誠にありがとうございます。うわーすごい!こんなにたくさんの方に観に来ていただけるなんて!本当に嬉しいです」

メラク「さて、これから始まるお話は、ある小さな小さな国、ベロモクという場所で起こったお話です」

メラク「お話を進めるにあたり、みなさんにはお願いしたいことが三つあります。一つ、携帯電話は音が鳴らないように設定すること。二つ、自分の席からなるべく移動しないこと。移動する時は他の観客に配慮すること。三つ、目一杯楽しむこと」

メラク「良い舞台には良い観客を必要とします。みなさんが一緒に盛り上がってくださる楽しいお客さんであることを、わたしは切に願います」

メラク「それでは、準備が整ったようなのでそろそろ開演したいと思います(一礼)え、お前は一体誰なのかって?(ニヤっとしながら)それはいずれわかりますよ。それでは失礼いたします」

(暗転)

シリウス「おい、カノープスはいるか」

カノープス「はいシリウス様、こちらに」

シリウス「なぜ、なぜ我々の争いは一向に終わる気配がないのだ?これだけ色々な策を投じているというのに」

カノープス「シリウス様、それはこの世にモノガタリが存在するからに他なりません。モノガタリは人の心に邪悪な感情を生むものなのです」

シリウス「それはまことか?モノガタリは人の感情を豊かにしてくれるものだと思っていたが」

カノープス「このわたくしがシリウス様に嘘をついたことがかつて一度でもあったでしょうか?常にシリウス様に忠誠を誓うわたくしが嘘をつくなんてありえるでしょうか?」(胡散臭く)

シリウス「悪かったよカノープス。そなたの賢さに私は何度も助けられた。今回も信用してよいのだな?」

カノープス「はいシリウス様。お任せください」

シリウス「ありがとう。では民衆を広場に集めてくれ」

カノープス「かしこまりました」

住民たち(ざわざわ)(話し始めたら静かに)

シリウス「愛すべきベロモクの民よ!本日から個人でのモノガタリの所有を禁じ、図書館に厳重に保管するものとする!日没までに全てのモノガタリを国の中央図書館に集めるように!」

住民たち「そんなこと急に言われても!」「我々からモノガタリの世界を奪うなんて信じられない!」「陛下は一体どういうつもりなんだ!」

シリウス「民衆よ、静かにしてくれないか!」

住民たち(しーんとする)(決まり悪そうな顔)

シリウス「いきなりこんなことを言って皆を不安にさせてしまい申し訳ない。だが、もう長いこと争いが続いていることは皆も承知であろう。今回のモノガタリの禁止は、争いのない平和な国を作るための第一歩だと思って欲しい。私が信用するカノープスからの提言だ。どうか皆、協力してはくれないか」

住民たち「確かに説得力はあるな」「秀才で有名なあのカノープス様まで仰っているのなら間違いはないのではないか?」「陛下はいつだって私たちのことを気にかけてくれたわ」

住民たち(拍手)(だんだん増えてく感じで)

シリウス「では日没までによろしく頼んだぞ」

(場面転換)

(家の前で掃き掃除をしながら)

カペラ「おはようスズメさん。今日もいい天気だね。こんな日は太陽の光を浴びながらモノガタリを楽しみたいのに……。どうして図書館の中でしか読めないんだろう。自分でモノガタリを持ち歩けたらもっと素敵なのに」

スズメ「(声だけ)カペラ、なあカペラ」

カペラ(きょろきょろ探す)

スズメ「カペラ、こっちだよ!」

カペラ「ス、スズメさんが喋った!?」

リゲル「(勢いよく登場)そんなわけないだろ。お前が単純なの忘れてた俺が悪かった。イタズラしてごめんな」

カペラ「なんだリゲルだったのか。もう、すんごいびっくりしたんだからね」

リゲル「ごめんって。なあカペラ、そんなにモノガタリを持ち歩きたいならいい案があるぞ」

カペラ「ほんとに!?」

リゲル「ああ。王様に直接交渉しに行くんだ。門番に止められなければ本人と直接話せる仕組みがあるってのはお前も知ってるだろ?それを利用するんだ。ま、それが嫌ならモノガタリは諦めな」

リゲル「(観客のほうを向いてフラグを立てます)まあ流石に王様と話すのは勇気いるから諦めるだろ。あいついつもうるさいんだよな。モノガタリを外で読みたいって。法律なんだから仕方ないっつうの。我慢しろよな」

カペラ「そうか、その手があったのか! ありがとうリゲル! わたし王様のところ行ってくる!」(走り出す)

リゲル「いやちょっと待てって」(腕を引いて止める)

リゲル「お前な、いくらなんでもそれは無謀すぎるだろ。やめておけ、ただの冗談だ」

カペラ「無謀じゃないもん! 王様優しいもん! カペラのお話ちゃんと聞いてくれるもん!」

リゲル「あーもう!(頭ガシガシ)なんなんだよ」

カペラ(ムスッ)

リゲル「わかったよ、そんなに言うなら行ってこいよ。気をつけてな」(背中を向ける)

カペラ「いやだ! リゲルも一緒に行くの!」(ついに座り込んで)

リゲル「あのなぁ、お前ももう14歳だろ?」

カペラ「まだ13歳だもん」

リゲル「だとしても! いい加減にそうやって駄々こねるのやめろよ。恥ずかしくないのか? みんな見てるぞ」

カペラ「恥ずかしくないよ。好きなものは好きだし、そんな簡単に諦められるわけないじゃん。なんでリゲルはそんなに冷たいの? 好きなもののために抗わないの? リゲルはもうつまらない大人になっちゃったの? 3つしか違わないのに」

リゲル「俺はまだ大人じゃない。カペラが、おそらくこの国の誰よりもモノガタリを愛していることも知ってる」

カペラ「じゃあ!」(怒った感じ)

リゲル「でも! でも駄々をこねるのは違う。お前は王様にもそうやって主張するつもりか。モノガタリ禁止令を解除してくれなきゃヤダって言って通用すると思ってるのか」

カペラ「むぅ……だってさ、いつもさ、そうやって頭使わなきゃいけないのはさ、リゲルが助けてくれるじゃん。だからさ、カペラはいいんだもん」

リゲル「俺のせいかよ。嗚呼こうなるんだったら小さい時からずっと、かわいいからって甘やかすんじゃなかった……」

リゲル「とにかく! 今回は俺は行かないぞ。お前ひとりで頑張ってこい」

カペラ「そんな冗談言ってもカペラ泣かないよ?」

リゲル「残念だけど俺は本気だ」

カペラ「そんなこと言って、結局ついてきてくれるんでしょ?」

リゲル「だから、行かないって言ってるだろ」

カペラ「ほんとのほんとに来ないの? カペラいなくなっちゃうの寂しくないの? 心配じゃないの?」

リゲル「寂しいし心配だけど、俺はお子ちゃまと一緒に出かけるつもりはない。王様のところなんて尚更行きたくないよ。それとも俺がついていかないと会いにいけないのか? まさかそんなことないよな?」

カペラ「むぅ一人でもできるもん。リゲルなんかいなくてもちゃんと王様と話しにいけるんだもんね!」

リゲル「そうか、それならよかった。じゃあ頑張れよ」

カペラ「ふんっ」(拗ねてる感じで舞台袖へ退場)

リゲル「なんか悪いことしちゃったかな。でも、甘やかしてばっかりじゃカペラのためにならないから、いつかこうしなくちゃいけなかったんだきっと」

リゲル「いややっぱりついていったほうがよかったのか?」(カペラが去った側に歩く)

リゲル「いやでもそれはカペラのためにならないんだってば」(逆側に歩く)

リゲル「でもやっぱりカペラが心配だな」(また逆に歩く)

リゲル「いやだから、ついていかないって決めたばっかりじゃん」(また歩く)

リゲル「あああもう! やっぱりダメだ心配で気になっちまう! 今ならまだ追いつくか? おーいカペラー」(カペラ側に走る)

(場面転換)

(カペラside)

カペラ「ふぅ……あっつい。ちょっと休憩しようっと。(座る)それにしてもなんなのあいつ! あんなに言わなくてもいいじゃん。なんにも、わかってないくせに、ひどいよ」(下を向く)

ドゥーべ「ふぃい、流石にこんだけ歩くとちょっと暑いな。なあ休憩してこうぜ」

アルカイド「そうだな、一旦休憩してくか」

フェクダ「もう疲れたよ。本当にまだつかないの?」

メグレズ「フェクダは最初から疲れてたでしょ。前日ちゃんと寝てないからそうなるんだよ」

フェクダ「なんで僕が寝てないこと知ってるの!?」

メグレズ「やっぱり寝てなかったのかよ。まあ長い付き合いだからそんくらい顔見たらわかるわ」

ドゥーべ「あれ、なああそこに誰かいないか?」

アルカイド「あほんとだ。なあ声かけてみようぜ」

ドゥーべ「あのう、こんにちはあ」

カペラ「(きょろきょろ)わたしですか?」

ドゥーべ「そうですあなたです。今何されてるんですか?」

カペラ「えっと……今は休憩してるところです」

ドゥーべ「あー俺の質問の仕方が悪かったですね。これからどこかに向かわれるんですか? それとももう用事済ませて帰るところですか?」

カペラ「あ、えっと、これから王様のところに行こうと思ってます」

アルカイド「ちょっと待て、誰か君と一緒に行く人はいないのか? いくらなんでも危ないと思うぜ」

メグレズ「俺らもこれから王様のところに向かうつもりなんだ。もし仲間がいないなら一緒に行かないか?」

フェクダ「こんなむさ苦しい中に放り込んだらかわいそうじゃないか。まあ、でも、この子を一人で置いてくのは、確かにちょっと心配ではあるけどね」

カペラ「あの、心配してくださるのはありがたいんですが、みなさまの邪魔をするわけにはいきません。一人で大丈夫です」

ドゥーべ「邪魔? キミみたいな美しい子ならむしろ大歓迎だよ。反対意見ある?」

三人「(首を振る)」

ドゥーべ「な。キミさえよければぜひ一緒に行こう」

カペラ「本当にいいんですか?」

メグレズ「もちろんだよ」

アルカイド「おいてくほうが心が痛む」

フェクダ「一緒にいけるなら疲れも吹っ飛びそうだなあ」

ドゥーべ「こんな俺たちだけどついてきてくれるか?」

カペラ「ありがとうございます! ぜひご一緒させてください!!」

ドゥーべ「よっしゃ。じゃあさっそく自己紹介させてもらおうかな。俺はドゥーべ。一応このグループのリーダーをやらせてもらってる」

アルカイド「オレはアルカイド。よろしく」

フェクダ「はい! 僕はフェクダ。虫が苦手だから外に出るのは苦手なんだけど、ドゥーべの頼みだからついてきちゃった。よろしくね」

メグレズ「みんな優しくないな。俺はメグレズ。そんで俺らはビッグディッパー。仲間は俺らの他にもう3人いる。ひとりひとりの友人たちが集まって、同世代だったからか自然にグループになったって感じ」

フェクダ「あ、そうか。その話をしてなかったね。僕らはもう10年くらいの付き合いになるのかな?」

アルカイド「多分そうだと思う。オレら全部で7人いるから自然と名前がビッグディッパーになった」

ドゥーべ「そんでキミは? 名前と、あと言いたくなかったら聞かないけどよかったら年齢も教えてほしい」

カペラ「名前はカペラって言います。年齢は言いたくないですけど、みなさんより10個くらい違うんじゃないかと思います」

ドゥーべ「俺らが何歳に見えてるかがわからないからなんとも言えないけど、キミはまだ、子どもとして守られる立場の人間だってことだね?」

メグレズ「しっかりしないといけないってことか。気をつけろよフェクダ」

フェクダ「え、僕!? そういうメグレズこそ気をつけてよ?」

アルカイド「いや、メグレズはこの中じゃ一番しっかりしてるよ。気をつけないといけないのはオレとフェクダ。」

フェクダ「アルカイドまで僕を責めなくたっていいじゃん。まあでも確かにメグレズはしっかり者だもんな」

ドゥーべ「はいはいお前らストップストップ。カペラが困ってるよ」

メグレズ「ちゃっかり呼び捨てで呼ぶんじゃないよ」

カペラ「全く気にしてないのでいいですよ。むしろ呼び捨てのほうが嬉しいです」

アルカイド「まあ本人がいいって言うならいいが、調子に乗りすぎるなよ」

ドゥーべ「わかってるよ。それで、カペラはなんの目的で城に向かうんだ?休憩してたってことはそんなに近くに住んでるわけではなさそうだから、ただの散歩ってわけじゃないんだろ?」

カペラ「わたし、モノガタリが好きなんです。それで、こういう晴れててのどかな日には外でモノガタリを読みたいじゃないですか。だから、モノガタリの所有の許可を王様に直接お願いしにいきたいんです。」

ドゥーべ「……これはひょっとすると天の導きかもしれないな」

カペラ「どういうことですか?」

メグレズ「俺たちの親は、モノガタリが禁止される前までは作家をやってたり、翻訳家をやってたりしたんだ」

アルカイド「仕事が急になくなって、笑ってるところを見かけなくなった」

フェクダ「モノガタリが禁止されたときは結構悲しかったんだけど、でもそれで争いは終わったから仕方がないことだって受け入れてたんだよね」

ドゥーべ「そうそう。でももう、争いがおわって何年も経った。子どもだった俺たちも大人になった。そろそろモノガタリが戻ってきてもいいんじゃないかって思ってたんだ。そんで今日城に向かうところだったってわけさ」

カペラ「そうだったんですね! じゃあきっと、ここで出会ったのも何かのご縁ですね。あれでも、そういえばみなさんって7人組なんですよね? 他の方は一緒じゃないんですか?」

ドゥーべ「ほらあれだ、船頭多くして船山に上るって言うだろ? だからお留守番してもらってる」

メグレズ「でもさ、あの調子だと追いかけてきそうだよな」

フェクダ「えーそうかな?」

アルカイド「まあ確かにあいつらならやりかねない」

カペラ「みなさん仲がいいんですね……」(寂しそうに)

ドゥーべ「そういうキミはどうなんだい? 誰か仲のいい友人が一人くらいはいるだろう? 一緒に来なかったのか?」

カペラ「小さいときからずっと一緒にいる幼馴染がいるんですけど、わたしが王様のところに向かうって言ったら無謀だからやめろって言って、喧嘩しちゃって。結局ついてきてくれなかったんです」

ドゥーべ「そうか。それは残念だったな。でもまあきっとその幼馴染も心配してるだろうし、なるべく早く用事済ませて帰るぞ」

フェクダ「じゃあもう出発しますか!」(めっちゃ元気な感じで)

メグレズ「お前さっきまでの疲れはどこに行ったんだよ」

アルカイド「まあオレも回復したし、そう言うことならさっさと行くぞ」

全員「おー」

アルカイド「なんでオレがリーダーみたいになってんだよ」(つぶやく感じ)

(全員退場)

(セットはそのまま。明かりもそのまま)

(数秒だけ誰もいない状態)

(リゲルside)

リゲル「はあ、はあ。カペラは今どこにいるんだ?まだ追いつかないのか……」

リゲル「道の分岐はほぼないから追い抜いたってことはないはずなんだよな。少し休憩してまた追いかけるか」

メラク「(リゲルが来たほうから走って登場)あ、こんにちは! あの、私たちと同じくらいの年齢の四人組を見かけませんでしたか?」

リゲル「こ、こんにちは。えっと……見てないです、ごめんなさい」

メラク「そうですか。こちらこそ、急にお声がけしてしまってすみませんでした」

リゲル「あの、僕も人探しをしているんですが、これくらいの子(示す)を見かけませんでしたか?」

メラク「すみません、見てません」

ミザール「メラク? そっちにドゥーべたちいた?」(言いながら登場)

メラク「ドゥーべたちはいなかったけど代わりに旅人拾った」

ミザール「旅人?(リゲルを発見)どうも。ミザールです。以後お見知り置きを」

リゲル「こんにちは。リゲルと言います」

メラク「おっと失礼。名乗っていませんでしたね。私はメラクと言います」

アリオト「ちょっと先まで見に行ってきたけどいなかった〜やっぱりもう、そろそろお城についてるんじゃないかな?」

メラク「そっか。ありがとね」

ミザール「それにしてもあんた、そんだけ歩いてよく疲れないね」

アリオト「まあね。日頃から運動はしてるから二人よりは体力あると思うよ。ところでこちらの方は?」

リゲル「初めましてリゲルと申します」

アリオト「初めましてアリオトです」

メラク「私たちはこれからお城のほうに向かうんですが、リゲルさんはこれからどちらに向かわれるんです?」

リゲル「奇遇ですね、僕もお城へ向かうんです。ご一緒してもいいですか?」

ミザール「へー、リゲルさんもお城に。すごい偶然ですね。私は大歓迎ですよ」

アリオト「私も賛成。人数は多いほうが楽しいし」

メラク「じゃあ、追いつけなくなる前に出発しますか」

リゲル「ありがとうございます。よろしくお願いします」

(退場)

(明転)

(お城の前にて)

門番1「ようこそシリウス様のお城へ」

カペラ「王様とお話がしたくて来たんですけど、会えますか?」

門番2「申し訳ありません。現在シリウス様は出かけております。ミルザム様にはお会いできますが、いかがいたしますか?」

カペラ「みるざむ様ってどなた?」

アルカイド「自分の国の王子の名前くらい覚えておけ」

フェクダ「まあまあそんなに不機嫌そうにしなくてもいいじゃん。カペラだって流石にシリウス様はわかるんでしょ?」

カペラ「はい。それはわかります」

フェクダ「ミルザム様はシリウス様の後継者に当たる方だよ」

メグレズ「確かまだ17歳くらいじゃなかったかな? 本当に優秀なお方だよ」

カペラ「そうなんですね! フェクダさん、メグレズさん、教えて下さってありがとうございます!」

門番1「それで、どうなさいますか? シリウス様もそろそろお帰りになると思いますが」

ドゥーべ「どうするカペラ。王様帰ってくるまで待っててみるか?」

カペラ「(首を振る)ミルザム様? がいるなら行きましょう。みなさまがよければ、ですけど」

フェクダ「僕らは別にいいけど……」

メグレズ「君はいいのか?」

カペラ「どう言うことですか?」

アルカイド「幼馴染。今頃追いかけて来てるんじゃないの?」

カペラ「まさか。そんなわけないじゃないですか」

ドゥーべ「いやぁそれが、そうでもないみたいだよほら」(指差し)(客席のところを通ってこれるならそうしたい)

リゲル「いた! カペラ!」

メラク「やっぱりついてきちゃった」

アルカイド「なんとなくそんな気はしてた」

カペラ「リゲr…」(言い切らないうちに)

リゲル「カペラ! ごめんな。本当にごめん。カペラが本当に出発しちゃって不安で心配で仕方がなくて、やっぱり追いかけちゃった。ひどいこと言ってごめんな?」(できればガバッと抱擁しながら言ってほしい)

カペラ「は、離してよ。恥ずかしいよ」

リゲル「おっとごめん。でもよく無事だったな」

カペラ「もうそんなに子どもじゃないもん。リゲルに心配されなくても一人でできるの。わかった?」

リゲル「ああよく分かったよ。本当にごめんな」

ドゥーべ「感動の再会を果たしているところ悪いけど、そろそろいいか?」

カペラ「す、すみません……」

メグレズ「ちょっと待った、俺たち何人いる?」

フェクダ「えっと……9人かな?」

メラク「ちょっと流石に多すぎない?」

ミザール「確かにこの人数で同時に向かったら話がまとまりそうもないわね」

アリオト「4人くらいがちょうどいいんじゃないの?」

アルカイド「それならとりあえずドゥーべとカペラがいけ。そんで、一人ずつ自分が連れていきたい人を選べばいい」

フェクダ「ひょっとしてアルカイドって天才?」

ドゥーべ「俺が行っていいんだな? じゃあメラク、一緒に来てくれ」

メラク「まあドゥーべの頼みなら引き受けますよ」

メグレズ「そんで? カペラは誰を選ぶの?」

カペラ「あの、本当にわたしが行ってもいいんでしょうか?」

フェクダ「僕はカペラが行くべきだと思う」

ミザール「私はあなたのことをあまり知らないけど、悪い人じゃないのは見てすぐ分かったし、反対はしない」

アリオト「うーん。カペラさんが行きたくないって言うなら無理に行かせるつもりはないよ」

メラク「もし一緒に来てくれるって言うなら嬉しいな」

アルカイド「お前ならきっと大丈夫だ。行ってこい」

カペラ「みなさん……ありがとうございます! ねえリゲル(リゲルのほうを向く)一緒に来てくれる?」

リゲル「本当に僕でいいのか?」

カペラ「リゲルだからいいの! だって、近くにいて落ち着くのはやっぱりリゲルだもん」

リゲル「そうか。じゃあみなさん、行ってきます」

ドゥーべ「メンバーは決まったな? それじゃあ俺たちは行ってくる。時間がかかるかもしれないが、いい知らせを持って帰ってくるから待っててくれ」

(行かない5人が大きく頷く)

(「うん」とか「おう」とか言ってもおけ)

ドゥーべ「お待たせしてすみません。中に入ってもいいですか?」

門番1「かしこまりました。どうぞこちらへ」

門番2「先ほど王様が戻られたそうです。ご案内いたします」

(ドゥーべ、門番2とともに退場)

カペラ「みなさんここまでありがとうございました。それじゃあ行ってきます!」(満面の笑みで)

(カペラ退場)

リゲル「メラクさん、ミザールさん、アリオトさん、本当にありがとうございました。お役に立てるかわかりませんが、精一杯頑張ってきます」

(リゲル退場)

メラク「……このまま行かなくてもいいかな?」

アルカイド「ドゥーべが心配するから早く行け」

メラク「分かってる。ちょっと冗談言っただけだよ。行ってきます」

(メラク退場)

フェクダ「なんか、みんなして一生の別れみたいな雰囲気出してたよね」

メグレズ「確かにな。別にモノガタリ取り戻せなかったからって死ぬわけじゃないのに」

アリオト「まあ覚悟が決まってるってことはいいことなんじゃないの?」

ミザール「それもそうだね」

アルカイド「お前らうるさい。ここにずっといても迷惑だからさっさとどくぞ」

(アルカイド退場)

(追いかけるようにして退場)

門番1「何事もなければよいのですがね」(何かあるぞと思わせる感じで)

(暗転)

(場面転換)

(舞台上にはシリウスとカノープス)

(門番2が舞台袖から登場)

門番2「失礼いたします。シリウス様、来客でございます。お連れしてもよろしいでしょうか」

カノープス「見てわからないのか? シリウス様はまだ休息中だ」

シリウス「ありがとうカノープス。だが私は構わない。待たせているのだろう? 早く連れてきたまえ」

門番2「かしこまりました」

(門番2は一度はける)

カノープス「シリウス様、本当にお休みしていなくてもよいのですか。急な来訪ってことは相手は庶民ですよね。対応ならわたくし一人でも十分だと思いますが」(少し庶民を軽蔑する感じで)

シリウス「心配してくれるのはありがたいが、私はまだ落ちぶれてないぞ。それに、客人の対応をするのも国王としての立派な仕事だ」

カノープス「ですが、」

シリウス「大丈夫と言ったら大丈夫だ。それとも私が信用ならないかな?」(怒りめで)

カノープス「いえ、そのようなことは。大変失礼いたしました。ではわたくしはこれで」

シリウス「待て。一緒にいてはくれぬか? やはり、そなたがいると幾分か心強い」

カノープス「もちろん、シリウス様のお頼みならば、たとえ火の中水の中、どこまででもお供いたします」

門番2「失礼いたします。お客様をお連れしました」(声だけ)

シリウス「承知した。中に入れてくれ」

門番2「かしこまりました」

(門番2がまず登場し、ドゥーべ、カペラ、リゲル、メラクの順に登場)

ドゥーべ「初めまして、ドゥーべと申します。こちら仲間のカペラ、リゲル、メラクです」

カ&リ&メ「よろしくお願いいたします」(ピッタリ揃ってなくていいから同じタイミングくらいで)

シリウス「よく来てくれた。ありがとう。それで、どんな用件で来たのかね」

全員(誰が話す? みたいな雰囲気)

リゲル「カペラ」(小声でつんつんして)

カペラ「あの、えっと、シリウス様。わたしたち、モノガタリの禁止を解除してほしくてお話に来ました」

シリウス「ほう、モノガタリ禁止令を廃止してほしいと」

カペラ「はい!」

カノープス「正気で言っているのか?ふっ、なかなか面白いことを言うじゃないか。まさか知らないわけじゃないだろう?この法令を作ったおかげで争いが終わったことを」

ドゥーべ「もちろん存じ上げております」

カノープス「それならなぜ? まさか、再び争いを起こそうとしているのか? おお怖い」(目一杯バカにする感じ)

シリウス「やめないかカノープス。そなたが言いたいこともわかるが、まあまずは話を聞こうじゃないか。カペラと言ったかな? 詳しく話を聞かせてくれ」

カペラ「はい。わたしはモノガタリが好きです。図書館で楽しめるのがありがたいことなのは分かっているのですが、自分の家でも楽しみたいし、外でも触れたいんです」

シリウス「ふむ。君の言いたいことは分かった。それで、君たちは他に何か言いたいことはあるかね? ドゥーべと言ったかな? 君は何か言いたいことがありそうだね」

ドゥーべ「はい。僕の両親はモノガタリが禁止されるまで翻訳家として活動していました。禁止されてから、両親はあまり笑わなくなりました。そろそろ、両親の笑う顔が見たいんです。モノガタリを戻していただけないでしょうか」

メラク「私からもお願いします。私の父親は小説家として働いていました。やっぱり、モノガタリを書いているときの生き生きした顔が一番好きなんです。お願いします、モノガタリを戻してください」

リゲル「僕は、そこまでモノガタリに思い入れはありません。ですが、僕の周りにはモノガタリを愛して止まない人がいます。その人のために、モノガタリを解放していただきたいんです。よろしくお願いします」

カノープス「貴様ら黙って聞いてれば好き勝手言いやがって」

シリウス「やめないかカノープス」

カノープス「なぜシリウス様は平気なんですか! こいつらは! 自分の欲望のために国民の安全を脅かそうとしていると言うのに! さっさと追い出すべきです!」

シリウス「カノープス。怒りに任せて判断をするのはよくないぞ。一度落ち着け」

カノープス「はっ失礼いたしました。ですが、」(シリウスがサッと手で静止する)

シリウス「君たち、うちのカノープスが失礼なことをしてすまない。だが、申し訳ないが私もカノープスと同じ気持ちだ。君たちの提案には応えられない」

カペラ「そんな……!」

ドゥーべ「どうしてですか」

シリウス「モノガタリを再び世に放てば、新たな争いが生まれる」

メラク「それならば、平和なモノガタリだけを解放すれば問題はないのではないでしょうか」

シリウス「そうは思わない。たとえ平和なモノガタリだったとしても、それは人の心に邪悪な感情を生むものであることに違いはない」

リゲル「モノガタリが邪悪な感情を作り出す? 何馬鹿なことを言ってるんですか! カペラは、モノガタリが大好きだけど、どこまでも純粋なやつだ。純粋すぎて俺の冗談にも簡単に騙されちゃうようなやつだ。そんなやつのどこが邪悪だって言うんだ!」

メラク「リゲルさん落ち着いて」

カノープス「へぇ邪悪ではないと。どこがかな? 現に今、新たな争いを誘発しようとしているではないか」

リゲル「そもそもの最初の仮定がおかしいだろ。どうしてモノガタリが争いにつながることになってるんだ」

カペラ「リゲル、さっきから口が悪いよ」

リゲル「わ、悪い。失礼いたしました」

カノープス「ほら、モノガタリを読んでいるからそうやってひねくれた考えになってしまうんだ」

リゲル「うっ」

シリウス「なぜモノガタリが争いにつながるかと聞いたね。それは二つある。一つは情報源が信頼できるカノープスからであったこと。もう一つは、実際に効果があったことだ」

カノープス「本当は図書館でさえ許可したくなかった。ただシリウス様のお願いだったから渋々承諾したんだ。それだけでも十分ではないのか」

ドゥーべ「確かにそれはそうですが……」

カペラ「変化をしないつもりですか。安定こそ安全だと思っているのですか。違う。安定は、ただゆっくり衰退を待つだけです。真に国民の幸せを願うと言うのなら、安定よりも発展を目指すべきなんじゃないですか」(有無を言わせぬように)

メラク「そうですよ。それに、戦乱の世の中でモノガタリを禁止するという決断ができた方が、今この平和な世の中でモノガタリを解放するという決断が、なぜできないのかわかりません」

シリウス「うーむ。ならば、試験的に導入ということでどうだ。もし再び争いが起こることがあれば、そのときはまたモノガタリを禁止する。それでどうだ」

カペラ「っ!?」

リゲル「本当ですか」

メラク「ありがとうございます」

ドゥーべ「よし、これでみんなにいい報告ができるぞ」

カノープス「失礼ですがシリウス様、わたくしは認められません。安定した世の中にこそ平和は存在します。モノガタリは規制を続けるべきです」

シリウス「だから試験的にだと言っているだろう?それとも私のいうことが聞けないというのかね」

カノープス「シリウス様のことは信頼しております。この決断も素晴らしいものなのかもしれません。ですがいくらシリウス様の頼みでも、これだけは譲れません」

シリウス「どうしてそこまで強情なんだ」

カノープス「大切な人との約束なので」

シリウス「その人物は私よりも大切なのかね」

カノープス「……はい」

シリウス「よろしい。ではこの件については後でゆっくり話し合うことにしよう。君たち、ここまで来てくれたことには感謝する。だが今日はもう帰ってくれ。おい、私が許可するまでこの部屋には誰も入れるな」

門番2「かしこまりました」

カペラ「どうしてもだめですか」

シリウス「頼む、この通りだ。帰ってくれ」(頭を下げる)

(カノープス焦る)

ドゥーべ「今日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございました。さ、戻るぞ」

(登場とは逆の順番で退場。渋々感をだす)

シリウス「さて、モノガタリは試験的に解放する。これは決定事項だ。それで? カノープスは何が問題なんだ」

カノープス「彼らが信用できないからです。モノガタリを禁止して平和になった。そこに因果関係があったかはわかりません。ですが事実として争いはなくなりました。再びモノガタリを許せば、また争いが生まれます」

シリウス「確かにそなたのいうことは一理ある。だがなぜそこまで争いが起こることを懸念しているのだ。責任を負うのは私なんだから」

カノープス「だからですよ。シリウス様、わたくしはあなたから離れるわけにはいかないのです。これは父との約束なんです。王様として輝いているあなたをずっと近くでみていろという約束を果たさなくてはならないんです。この命が尽きるまで」(うっとりと)

シリウス「気持ちはありがたい。だが、たとえ私が王の立場でなくなったとしても、私が私であることに変わりはない。そなたの横で、誰よりも明るく輝いて見せようぞ。なあカノープス。私の決断を受け入れてくれないか」

カノープス「シリウス様……。かしこまりました、そこまでおっしゃるのでしたら、最後までこの目で見届けます」

シリウス「よし、ではモノガタリの制限を一時的に解除する。良いな?」

カノープス「かしこまりました」

シリウス「それでは、民衆を広場に集めてくれ」

(暗転)

(場面転換)

(リゲル、カペラら9人と門番あたりが聴衆で良いかと)

シリウス「愛すべきベロモクの民よ。本日より、モノガタリの制限を解除するものとし、個人での所有も可能とする」

フェクダ「本当に?」

メグレズ「ありがとなドゥーべ、カペラ」

アルカイド「ついに戻ってくるのか。メラク、リゲルもありがとう」

ミザール「やった!」

シリウス「(咳払い)ただし、条件がある。もし、また争いが起こるようなことがあれば、その時は再びモノガタリを制限する。反対意見のあるものは挙手を」

全員(水を打ったように静か)

シリウス「よろしい。では決定だ」

(シリウス退場)

メラク「よかった。これで一安心だ」

ドゥーべ「ああ本当によかった。これで外でも楽しめるな、カペラ」

カペラ「はい! 今からとっても楽しみです。みなさんありがとうございました。モノガタリが戻ってきたのはみなさんのおかげです。本当にありがとうございました」

アリオト「カペラさんもありがとう。今度モノガタリを楽しむときはぜひ私も誘ってね」

ミザール「アリオトだけじゃなくてビッグディッパー全員を誘ってくれたら嬉しいな」

カペラ「ぜひ! お願いします!」

アルカイド「盛り上がってるとこ悪いがそろそろ帰らないと暗くなるぞ」

フェクダ「いいじゃんまだ。今日くらい祝杯をあげたって誰も怒らないよ」

メグレズ「だめだ。俺たちは大人だからいいが、カペラとリゲルはまだ子どもだろ? 帰ったほうがいい」

アリオト「なんなら家までついて行こうか?」

リゲル「ご心配ありがとうございます。流石に二人で帰れるので大丈夫です」

ドゥーべ「じゃあもう帰るぞ。今日は本当にありがとな。また何か縁があれば、そんときはよろしく」

カペラ「はい! よろしくお願いします」

ドゥーべ「どこかで見かけたら声かけろよ? じゃあな」(ビッグディッパー退場)

リゲル「さて、俺たちも帰ろうか」

カペラ「うん。あそうだ、追いかけてきてくれてありがとね」

リゲル「あ、当たり前だろ? お前を一人にするのは危険すぎる」

カペラ「その割には絶対一緒にいかないとか言ってたけどね」(ニヤニヤ)

リゲル「ごめんって、悪かったってば。でも、そろそろ駄々をこねるのはやめてほしいな」

カペラ「分かった。リゲルの前だけにする」

リゲル「いや俺の前でもやめてほしいわ」

カペラ「ふふ、冗談だよ。ほら早く帰ろう?」

リゲル「ん。帰ろうか」

(二人退場しながら)

リゲル「それにしても、今日のカペラはかっこよかったな」

カペラ「ほんとに? やったリゲルに褒められた!」

リゲル「別に褒めてないし?」

カペラ「えー? まあいいけど。リゲルもかっこよかったよ!」

リゲル「ん。ありがとう」

(完全退場)

(おわり)


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