君の背中

君の背中はいつも遠い。追いかけても届かない。それなのに、時折こちらを振り返ってはわたしがいることに心底安心した顔で笑う。
近づかないで、という願いにも見える。
離れていかないで、という祈りにも見える。

にゃー
その鳴き声が寂し気に聞こえるのはわたしの思い違いだろうか。

死期を悟った君はわたしの前からいなくなると確信している。臆病で、けれど気高い君のことだ。わたしなんかに弱った姿を見られたくない。そうでしょう?

君の背中はいつも遠い。追いかけても届かない。それなのに、時折甘えたようにこちらに身を寄せてはそっとわたしを温める。
大丈夫だよ、とでも言うように。
離れちゃ嫌だよ、とでも言うように。

いつまでも届かない君の背中が、今はとっても愛おしい。

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