2つの世界

私は40数年前の中学校の登校初日、
通学の坂道を登りながら、
「あ~これからまだ3年間、学校に通うのか、
そして高校へ行くと更に3年間。
自分には、更に6年間が待っているか...」と思い、
『絶望』という文字が頭に浮かんだ事を今でも思い出す。
しんどかった。
クラスの男子が声高に
「面白い事」を言い、みなが大笑いする。
しかし、私には「全く面白く無かった。」
「どこがおもろいねん。」
私は心の中で呟く。
「迎合」せねば生きていけない世界。
しかし、私には「もう一つの世界」があった。
敢えて作ったわけでは無い。
気がついたら、そこに居た。
そこでは意識しなくても息が出来た。
それが「漫画」と「ロック」である。
家に帰り、扉を開き、飛び込む。
そこには、フレディやエドガーやジルベールが待っている。
一瞬にして溶け込む。
その世界が有ったから生き延びれた。
しかし、大学生活が始まり、
現世でも、ようやく息が出来る様になると、
「もう一つの世界」の扉は閉められ、
30数年間が過ぎた。
その間、必死に生きねばならなかった。
自分以上に大事な存在、「息子」が出来た。
「息子を育てる。」
逃げる事すら許されなかった。
そして今、50半ばを超え、
現世での自分の燃料を使い果たした私に、
もう一つの世界の扉がゆっくり開いた。
「もうこっちに来て良いんだよ。」と、

フレディが細く長い美しい指で手招きしている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?