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2020 立川談吉年末放談①

昨年度、師走もピークに差し掛かるころ掲載させていただきました
立川談吉さんの一年を振り返る年末放談
今年もやろうということになりまして、
zoomを利用したリモートでお話を聞くこととなりました。
皆様におかれましても大変な一年であったであろうと想像できる2020年。
談吉さんにとってはどんな一年だったのでしょうか。
三回に分けてお送りいたします。
聞き手は±3落語会事務局の八百枝です。


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モニタ越しで久しぶりにお会いした談吉さん(リラックススタイル)



コロナ禍における落語家としての活動

—2月初旬に行われた談吉百席が終わった直後からコロナによって全ての芸能活動が自粛されるようになっていたわけですがその時は何を思われました?

立川談吉(以下談吉):あのときはどんどん仕事が無くなっていって、最初は4〜5つだったけど、全部なくなっていったのでね、「あれ?」とは思いましたけど、で、結局、仕事が全部無くなったので、テレワークを始めました。

—あの頃、噺家さんの動きとして、様子をみて動かない人と、いち早くオンラインで映像を公開し始めた人と二手に分かれたのに、談吉さんはそれ以外の「電話かスカイプを使った個人にむけた独演会」に行きましたよね?それは一体どうしてだったのですか?

談吉:ええ、一切映像を使わない方に行きましたね。落語をテレビで見て(本来の)楽しみ方をできないじゃないですか、工夫をしていけば変わると思うんですよ、背景・画角をかえたりズームアップ・効果音などを使っていけばそういう遊び方は出来ると思うんです。だけど映像だと落語本来の楽しさは多分、絶対に無理なんだろうな〜と思ってたんですよね。
でも(落語を)CDやラジオで聞いたりしてるわけですから、それは楽しめるじゃないですか、じゃあ音声は大丈夫なんだなとは思いましたね。

—ほほー、だから電話やスカイプを使った音声だけの独演会になったのですね

談吉:でも、私のアイディアではないですけどね、最初はね。

— …えぇ?えぇぇぇぇぇぇ??

談吉:あんまりにも仕事がないから「電話で落語できないの?」とかみさんに言われたので、「できるわけないだろ!」と最初は言ったんですけど、「待てよ?できるやつもあるかぁ〜」と考えていったときに、音声のほうがいいかと思っていきましたよね。

— 当初、テレワーク独演会の話を知った時は「映像付きじゃないの?」と思ったのですが、スカイプを使ったテレワーク独演会に参加させていただいて、映像付きだが投げ銭をどのタイミングですればいいのか?を気にしながら見聞きする落語と、映像はないが最初から一定額を支払ってじっくり落語を聞けるのとどっちがいいかと言われたら、人それぞれだとは思いますが私は圧倒的に後者が良かったです。

談吉:安心して聞けるのが一番ですよ。トラブルも少ないし。

— テレワーク独演会をしていて苦労した点などありますか?

談吉:仕草の入る噺は出来ないですよね、基本的には。とはいえ、私はなぜかだいぶ前ですが、ラジオの収録に呼ばれまして、「なんか落語をやってください」と言われて、本来なら仕草の入らない噺をやるんですけど、なぜか『ガマの油』をやってしまったという過去があります。

— ちょ……(笑)

談吉:「わぁぁ〜、血が止まらない!」とかやりましたけど、というのも私、「ガマの油」を最初、映像で見ていないんですよ。CDで聞いたので。だから音でもいけるのかなぁ〜とは思ったんですよ。表情や仕草で伝える噺、たとえば「強情灸」なんかはできないですけどね。
あとは落語の長さ、あんまり長いとなにかトラブルがあった時に次に予約している人に迷惑がかかってしまうとか、あんまり長いと通話が途切れてしまった時にどうしようとか色々あるので、なるべく15分くらいかなぁ〜とは思ってはいますよね。

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— 3月からテレワーク独演会を続けてきてトラブルが起こったことはありましたか?

談吉:今日は(スカイプの)電波が悪かったです〜みたいなこともありますし、トラブルではないんですけど、自宅で気軽に聞けるのがテレワーク独演会のいいところなんですけれども、
ご家族で聞いてくださっていて、スピーカーかなにかに切り替えて聞かれているけれども、(電話の向こうで)喋りながら聞いている場合もあるんですよ。その場合、どうしよう…と思うときはありますね。ちょっと間を開けた方がいいのかな?とかですね、テレビみたいに楽しんでるな〜と思う時はあります。
いいんですよ!自由に楽しんでいただけるのが一番なので。
でもそれが、音声トラブルがおこっているんじゃないかしら?と不安になるときはあります。お金を頂いている以上、やはりそれは心配になりますね。

あとスカイプがつながらないというのもありました、そうなると電話に切り替えていただいて、公演を続けます。一番、トラブルがないのはずっと電話の方ですね。でも最初は電話を離して固定して落語をしていましたから顔の方向を変えた時に、音量が変わるという指摘をいただきました。それから物理的にマイクに近づきました。

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物理的にマイクに近づくの図


— それはテレワーク独演会を始めてからの気付きですね。来年もテレワーク独演会は続けるのですか?

談吉:続けるんじゃないですか。やってて変わったんですよね、落語の意識とか色々と。音だけだから、音だけでその状況をやらなきゃいけないっていう時に変わってきましたよね。

— 根本的なことに立ち返るということなのでしょうか?

談吉:そうですね…、基本ですね…。
基本を、やってこなかったんですね(笑)

— (笑)笑い事じゃないですよ!

談吉:いや、大事な基本っていうのがあって、それを思い出したなぁっていうところですかね。

— 思い出しましたか。

談吉:思い出しました。で、こないだ前の師匠(立川談志師匠)の「子ほめ」をYouTubeでみて、「基本はこれだ」と思ったりして、ちゃんと腹から声出してるなーとか。「こんちわ」って最初言うじゃないですか、ものすごい勢いで言ってますからね「こんちわ」って。

— 声の塊みたいな感じですよね、家元の声って。

談吉:そうですね。ちゃんと基本ですよね、(家の)中にいる人に声を掛ける威勢のいい八五郎が。ちゃんと基本をやっているなというのをまざまざと、ここいちばん大事なとこだ!とか思いながらね。

— 小手先に行きそうな時に、今、基礎を。
談吉:そうですね。うん…、やってこなかったんでしょうね(笑)

— …確かに、今「牛ほめ」が来てるとか、談吉さんは後に回した部分が昨今来ているのかもしれないですね。

談吉:今来てますね、だいぶ「牛ほめ」が。
やっと与太郎が出来るようになってきたかなーってところですね。

— では今までの与太郎はどのような感じだったのですか?

談吉:そうですね、まだ音のみかなーって、まだ(自分の中に)入ってなかった。未だに入っていないキャラクターはいっぱいいますよ。一番如実なのが、侍。侍は次勉強しようというところですね。田舎者とかは大丈夫です。あと町人はどうにかなると思うんですよ。侍は別物なんですよ。侍は数と慣れだと思うんです。

— ということは談吉さんは侍の噺をしていないということになりますよね?

談吉:ええ、してないです。侍もしてないし殿様もしてない。(きっぱり)

— 三太夫、入れましょうよ!

談吉:「妾馬」はやりましたけど…うん、必死でしたね。やっていいな、この噺はと思いましたけど、もう一回、また別の話で侍を入れ直したいなというところですね。侍が上手いなと思うのはうち(立川流)だと談四楼師匠ですかね。侍は形と説得力、きれいな形がふっと出来るかっていうところなんですよね。背筋を伸ばして肩を大きく見せるとか瞬間にふっとやるっていうのがもっと入ってこないと侍は出来ないですね。今後の課題ですね。気付くの遅かったというよりは手を付けてこなかったなぁと。

— 避けてきただけですよね?(笑)

談吉:(笑)やらなくても他に面白い噺がいっぱいあるんですよ。

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本日はここまでとなります。
この続きは明日の21時頃の更新となります。
お読みいただき誠にありがとうございました。

明日も引き続きお楽しみください!

この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com