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水兵リーベ僕の舟 (65)

水兵リーベ僕の舟、名前があるシップスクラークか、スコッチびっくり待ってコニャックジン、ガリ、ゲリ、汗が出てブルくる。

子供の頃に覚えた化学元素の語呂合わせだ。特に化学の成績が良かった訳ではなかったが、何故か頭にこびりついている。化学では他にもこんなのがあったはずだ。

変な姉ちゃんある日暗闇でキスして絡んだ。

確かHe(ヘリウム?)から始まるやつだった気がするが、水兵リーベほど定かではない。

ふっくらブラジャー愛のあと。

これに至ってはもう何にも覚えていない。覚えているのは思春期の子供たちを前に黒板を指差し、この呪文を唱えていた化学の先生の満面の笑顔のみである。

これらは大変に重要だから忘れてはいけないよと、散々念を押されたからか未だに忘れられなくなってしまっている。確かに受験では役に立ち、自分の将来の職業が化学関係ならば、絶対に忘れてはいけないレベルのものなのだが、化学関係の道を選ばなかったとするならば、もう忘れても良いのではないだろうか。それぞれの選んだ道に必要不可欠な知識が、もっと他にあるはずなのである。もし人間の記憶の許容量が決まっているとしたら、早く忘れた方が良い知識もあるのではあるまいか。

こんなことを言うと”あなた偉そうに記憶の許容量などと宣っているけれど、読書家でも勉強家でもないのだからまだスカスカじゃないの”と思われるかもしれないが、筆者の許容量を読書家や勉強家などの大容量メガボックスな人達と比べないで欲しい。そんなGoogleドライブみたいな無限の容量ではないのだ。それが証拠にすぐものを忘れるし、人の名前も覚えられない。落語会でも来てくれるお客さんの顔はわかるが、何度もお会いしないと名前となかなか一致しないので、いつも困っているくらいだ。これは恐らく無駄な知識(主観により無駄と思うだけで無駄な知識などないのかもしれないが)が邪魔をしているからに他ならないのではないか。

さて、せっかくなので無駄な知識を少し掘り起こしてみることにする。

ひとよひとよにひとみごろ?
(上辺+下辺)×高さ÷2
なんときれいな平城京
以後予算が増えた?鉄砲伝来
さいならっきょ
赤い悪魔へらちょんぺ

なんてことだ、忘れたいものを思い出したことでますます脳にこびりついてしまった。

無駄なものなどないとは思わないし、無駄なものが愛しいとさえ思う時もある。昔覚えた無駄な知識が、この先何かの役に立つのだろうか。役に立とうが立つまいが、己を形成する何かにはなっている気がする。せっかくだ、最後につの丸先生の漫画”モンモンモン”の中に確かあったような気がするフレーズを一つ載せて、文章を締めさせてもらおう。

あをによし 水兵リーベの イエスアイドゥー

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この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com