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吾輩は (103)

男は度胸女は愛嬌と聞いたことがある。男の大事なものは動じない胆力であり、女の大切なものは好感を催させる愛想であるとのことだ。こういう決めつけみたいな言葉は世間にいくらも溢れているので、さほど驚きはしない。そもそも度胸や愛嬌なんてものは、男女ともにあればあるだけあった方が良いとも思うし、人生それだけでは色々と足りない部分もある。因みにこの言葉には続きがあり、男は度胸女は愛嬌、坊主にお教となるそうだ。

女性というくくりにして良いかはわからないが、プロ野球西武ライオンズのマスコットで”ライナ”というのがいる。手塚治虫先生デザインの白いライオンの女の子で、踊りを踊ったり愛想を振り撒いたりしている。見てもらえればわかるが、不思議な可愛さがあり、まさに愛嬌なのだ。しかし顔はライオンで体は人間だというのに、何故可愛いのだろうか。ひとえに、ライオンが猫科だからではないだろうか。猫は可愛いのだ。

猫の可愛いさは異常である。地球上で一番可愛い生き物といっても過言ではない。もちろん成猫も可愛いが、仔猫ともなると手のつけられない可愛さになる。目が大きくて動きがぎこちなく、ふわふわしていて手足が短い。鳴き声はまだ”にゃあ”とも言えず、”みゃあ”もしくは”みゅう”と高音で鳴く。悔しい、猫の可愛いさを文章で伝えるのが難しい。とにかく猫は底抜けに可愛いのである。

それにしても、”目が大きて動きがぎごちなく、ふわふわしていて手足が短い”と書いたものの、これだけでは全く可愛いさが伝わらないのだと痛感した。文章とはかくも難しいものか。仔猫を知らないという人がほぼいないだろうから良いものの、仔猫もしくは猫を全く知らない人からしたら、何がどう可愛いのか伝わらないのではないか。大体が可愛い可愛くないはその人の主観である。自分が可愛いと思うものを相手にどう上手に伝えたとて、そう感じなければどうにもならない。ならないのだがしかし、猫だけは別である。百聞は一見にしかず、猫の可愛さは見れば必ずわかるものだ。

今回、何故に猫について書いているのか。理由はまだ無い。どこで思い至ったか見当がつかぬ。非常に獰悪な思い付きかもしれない。しかしだからと言って怒ってはいけない。まして筆者への苦情などもっての外だ。ただただ猫の可愛いさを改めて確認出来たことに、感謝すべきである。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたいありがたい。

この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com