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【ジャンル討論】2020年代のメタルシーンについて

はじめに

いつもご覧いただきありがとうございます!

今回は久しぶりのジャンル解説
...と思いきやジャンル討論という亜種です(笑)

HR/HMシーンひとつひとつのジャンル解説は構想中で順次アップ予定なのですが、
ほぼ歴史と哲学の授業なので時間が掛かりまして...

だったらそのまえに近年の動向をまとめて大枠から掴んだ方が体験価値が高いのでは無いかと思った次第です。特に今は中々の変革期ですからね。

前段はさておき、早速見ていきましょうか。


メタルシーンの変遷

まず、メタルシーンがどのような変遷を辿って来たのか改めて考えてみましょう。

年代や細かなジャンルのニュアンス違いについてはご了承ください。あくまで大きな年表です。

・1980~2000年
ヘヴィメタル スラッシュメタル パワーメタル
プログレッシブメタル デスメタル
メロディックデスメタル ブラックメタル

・2000~2010年
メタルコア デスコア ニューメタル
エモ スクリーモ ハードコアパンク

・2010~2015
エレクトロニックメタルコア ニューメタルコア
プログレッシブメタルコア

・2015~2020
ポスト・ハードコア

ざっくりこのような流れになっています。
今回は○○メタル・○○コアどちらに絞った話にするか悩みますが、この2つは必然的にクロスオーバーし合っているジャンルなので、この2軸でお話をしていこうかと思います。

メタル史における特異点はいくつかありますが、
現在進行形で影響を与えたジャンルは以下です。

・スクリーモ
エモにスクリームが加わったヘヴィジャンル。
Funeral For A Friend、SAOSIN、Sivler Steinなどを中心に地域を問わずに誕生・発展した。
叙情的・内向的な世界観にハイトーンクリーンとスクリームが基本的な要素で、当時はエモと同様に逆分け目の七三ヘア・アイメイクやスキニーのファッション、MVの雰囲気が特徴的だった。
時代を経てポスト・ハードコアと同義になる。

・ニューメタル
Slipknot、LINKIN PARK、Korn、LimpBizkit
の登場と共にカテゴライズされた革命児。
System Of A Down、Ill Ninoなども類似系統。
メタルにヒップホップ要素を織り交ぜたメロディックな音楽で様々なジャンルのファンを取り込んだ。
ニューメタルの登場により、それ以前と以降でメタル史が分かれると言っても過言では無い。

・メタルコア
ハードコアやメロデスがメタルとの融合により誕生し、メインストリーム化したジャンル。
As I Lay Dying、Unearth、Killswitch Engageを起点とし2~3段階の進化と深化を経た。
主な特徴はブリッジミュートとブレイクダウン。

・ニューメタルコア
ニューメタルとメタルコアが融合し誕生。
ニューメタルからクリーンを少なめにし、ヒップホップ成分はそのままにブレイクダウンを多様。
Dgentプログレッシブメタルコアもこの一部。
EmmureAttilaなどが主なバンド。

・ポスト・ハードコア
その名の通り進化したハードコア。
メタルコア、ニューメタル、スクリーモがそれぞれの要素を取り入れたことにより、かなり広義的かつ大きなジャンルとなって浸透した。
We Came As Romance、The Devil Wears Prada、Asking Alexandriaなどが先駆者。

以上が現代のHR/HMに取り入れられ続けているジャンルで、互いに要素を融合し合っています。
もはや全てが融合してポスト・ハードコアという呼称になりつつありますが、ざっくり見て上記の音楽性がメインストリームとなっています。


近年の動向

それでは、まずはここ3年くらいのメタルシーンの総評から見ていきましょう。

・トレンド
2010年頃から取り入れられたエレクトロ要素が定着し、どのバンドも電子音が入り込む音楽性を軸としています。電子音に限らず、ストリングスやシンセサイザーの使用はもはや主流ですね。
かつてはUS起点が多かったものの、現在はヨーロッパやオーストラリア、もちろん日本でも発展は凄まじく世界規模での群雄割拠時代です。

・最前線
ニューメタルの登場から再興したメタルジャンルでは、なんと言ってもBRING ME THE HORIZONがシーンを牽引し続けてきました。
彼らの強さは時代の先取りで、前述のジャンルを全て辿って独自性を保ち続けている点です。
デスコア→メタルコア→ポスト・ハードコア→オルタナティブメタルという変遷でグラミー賞にまで辿り着き、今ではシーンの絶対王者です。

かつては各ジャンルでカリスマ的なモンスターバンドが2.3組立っていましたが、現在は数が増えた事もあり群雄割拠時代が続いています。

・評価軸
ここ数年のシーンを見て、どのようなアーティストが評価されて来たのか見ていきますが...
結論から言うと、包括的な言葉で"メタルらしくない"アーティストが大きく脚光を浴びました。

昨年度までの流れではBad OmensSleep TokenI PrevailSplit Boxなどのオルタナティブメタル、もといポスト・ハードコアのバンドが動員数・再生数ともに最前線まで踊り出ることになりました。

Sleep TokenのTake Me Back to Edenは2023年に最も再生されたメタル盤になり、長年玉座に君臨しているMETALLICAのそれを抜く記録に。
BRING ME THE HORIZONを筆頭に進化したメタルコア群が洗練され、メロディックでホーリーで、チルくて重い音楽がトレンド化したのです。
まとめると、壮大な音楽が評価されつつあります。

かつてのLINKIN PARKやEvanescenceの登場に近いムーブメントになっていて、源流となる純度100%メタリックなバンドはまだ下火が続く現状です。


近年の分布

・全体像
前述の様に"各ジャンルのオルタナティブ化"が進んだ近年ですが、シーン全体で見てどのようなバンドが序列を高めているのか見ていきましょう。

2024年4月現在、SpotifyのメタルプレイリストであるKickass Metalを参照して見ると
総再生回数:1,486,709回
楽曲の再生回数TOP10は
①Epitaph (Make Them Suffer)
②Suffocate feat.Poppy (Knocked Loose)
③Curse (Architects)
④This Is The Way feat.DMX
  (Five Finger Death Punch)
⑤Kool-Aid (BRING ME THE HORIZON)
⑥Sign Of Life (Motionless In White)
⑦HOUSE ON SAND (Nothing More&I Prevail)
⑧Screaming Suicide (METALLICA)
⑨Meat & Greet (Ice Nine Kills)

追従するのがBad Omens、Sleep Token、Spirit Box、Asking Alexandria、Avenged Sevenfold、Lamb of God、Judas Priest、In Frames、The Ghost Insideなどです。
Make Them SufferやPoppyが参加した2曲、Spirit Boxが最上位なので女性ヴォーカルを取り入れた楽曲がトレンドの一端であるとも読み取れますね。

・ニューサウンド化
繰り返しのような話で恐縮ですが、メインストリームのバンド群は"ニューサウンド化"が顕著です。

BRING ME THE HORIZONを追従するかのように、壮大な世界観を演出したDTMやストリングスによるトラックメイクが盛んになりました。
シアトリカル系も根強い人気ですね。

新世代メタルコア群を規模的にTier分けすると
以下のようなイメージになるのかなと思います。

<Tier1>
Bad Omens、I Prevail、Falling In Reverse
<Tier2>
Motionless In White、Sleep Token、Architects
Spirit Box、Ice Nine Kills、While She Sleeps
<Tier3>
Wage War、From Ashes To New、Dayseeker
Make Them Suffer、Crown The Empire
Beartooth、Holding Absence、The Plot In You、
Caskets、Alpha Wolf、Blind Channel

ある程度の異論は認めます。

・リバイバル化
前述の様に、時代を重ねて新たな試行錯誤が行われているのとは裏腹に、サブジャンルではリバイバルのようなムーブメントが起きています。
それが、かつてのニューメタル・ニューメタルコアの再興と多様化になります。

先駆者のSlipknot、Korn、LINKIN PARKほどのインパクトとキャッチーさを持ったバンドは多くは無いですが、似たような音楽性は時代を経て再評価されつつあるのです。

補足としてGoogleの定量的評価では、2023年には「New Metal」「Nu Metal」の検索数が過去20年間で最多を記録した模様です。

規模感が似ているのでTier分けは難しいですが
Falling In Reverseを筆頭に各国で跋扈しており
AttilaDarkoUSWARGASMTen56.Graphic NatureStatic-XNothing,NowhereSoulkeeperovEvolaSeeing Thingsなどなど多数活躍しています。

Falling In ReverseとFrom Ashes To Newはニューサウンドとリバイバルを兼任する巨頭ですね。

・日本国内のシーン
こちらは別途で記事を作成予定ですが、
日本ではどのような動向なのか簡潔に補足します。

2010年以降、長らく3CとONE OK ROCKが牽引してきたメタルシーンですが、基本的にはその勢力図からあまり大きく動いていません。
しかし、近年では間違いなくアジアの中でも抜きん出てシーンが活性化しています。

世界的メタルクイーン: BABYMETAL
国宝メタルコア: Crystal Lake
ポスト・ハードコアの王: coldrain
ニューサウンドメタルコアの王: Crossfaith
唯一無二のレゲエパンク: SiM
モダンヘヴィネスの特異点: Paledusk
メロディックメタルの超新星: Sable Hills
JAPANメタルの台風の目: 花冷え。

メインはこの辺りで、直近では花冷え。の爆発的な躍進やKnosisの登場(Ryo Kinoshitaの帰還)、
METAL BATTLEではDjentバンドPARENEMAの優勝など色とりどりのトピックがありました。

V系ではDEXCORE、JILUKA、Deviloof
ニューメタルコア系統ではPrompts、Evilgloom、正統派ではNEMOPHILAの活躍が目覚しく、ガールズユニットではPalene∅、PassCode、我儘ラキア、MAZE、全部君のせいだ。、その他ではSailing Before The Wind、GREEN3YED、C-Gate、A Ghost Of Flare、In For The Kill、KRUELTY、VMO...などなどかつてない群雄割拠時代です。

ニューサウンド化の波は海外ほどは見られず、取り入れているのは3CやPaledusk、CVLTE、一部エクストリーム系統ぐらいでしょうか。
どちらかというと国内もニューメタル/ニューメタルコアのトレンドが若干優勢な気がします。
BABYMETALやSable Hillsのようなあの頃のメタルが人気なのも良い兆候な気がしますね。

全然簡潔ではありませんがざっくり見てこのような全体像です。かつてないほどに熱いですよ!


総括・今後の予測

シーン全体で見て、総括としてはやはりニューサウンド化とリバイバルの風潮が強いです。
簡単に言うと、"○○っぽいバンド"が増えた印象。
それはBMTHしかり、LINKIN PARKやSlipknotであったり様々なのですが、音楽性が似ているバンドが多くなって来ていますね。
音楽は実験とリスペクトの繰り返しなので必然の道なのかもしれませんが、そろそろまた限界が見えて来るのでは無いかと思っています。

かと言ってスラッシュメタルやメロディックメタルコアのような完成されたジャンルはなかなか再興しづらいのも現実です。
若い世代がPriestやMaiden、Killswitchのような音楽を新しく目指すかと言われると難しい...

やはりメタルのような難解な音楽・リフ物は今現在が佳境なのかもしれませんね。

薄い壁を隔てたパンクというジャンルではオリジナルの形を保ったまま現在まで成長していて、大きな味変や細分化はしていないですよね。音楽はどれも似ているのに評論家は湧かないですし。
メタルも一部そういう姿で良いんじゃないかと。

もうしばらくは電子音・チルサウンドを織り交ぜたムーブメントが続くとは思いますが、もしかするとメタリックな音楽性のリバイバルも起こりうるかもしれません。もしくはこのままカオティックに進化と深化を繰り返していくのか...


おわりに

以上が、直近のメタルシーンの所感でした。
やっぱり長くなってしまいますね。

なるべく客観的に書いているつもりですが、
もし「それってあなたの感想ですよね?」的な部分があれば気兼ねなくご指摘いただけると。

後ほど国内シーンのまとめもしようかと思います。

皆さんにより良い音楽ライフが訪れますように。

それではまた!👋

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