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娘のための椅子を作りました

長野県で妻と二人で家具やお財布などを作っています。
PLYLIST(プライリスト)の小尾口(こおぐち)です。

10月に娘のために椅子を作りました。
この椅子ができあがるまでのお話をしようかと思います。

子ども椅子を作るきっかけ

わが家は床座り生活をしています。
居間にこたつはありますがダイニングテーブルや椅子がありません。
娘はバンボに座ってもらって、ごはんなどを食べてもらっていました。

ですが、そろそろバンボも窮屈そうだなという感じになってきて、
子どもの体格に合わせて椅子とテーブルをそろえてあげたいなという気持ちになりました。

そして、なにより「子ども椅子はかわいい」のです。
かわいいは正義なのです。
そして、小さな子ども椅子に座る小さな子どもというのはとてもかわいいのです。
子ども椅子を使う期間というのはとても短いことは分かっているんです。
でも「娘のためになにかを作ってあげる」という行為そのものが今の自分にとって一番幸せなことだと
以前、積み木を作ってあげたときに感じました。
ということで、
親の押しつけですが、子ども椅子を作ってあげることにしました。

デザイン

作ってあげることにしたはいいものの、
デザインをどうしようかとなかなか悩みました。
木製の子ども椅子というのはいろんなタイプがありますが、
ちょっと野暮ったいというか、
子どもらしさを出すために、丸っこいものが多い気がします。

どうせ作るなら誰も作らないようなものを作りたいと思いました。
子どもが成長して使い終わったあとは、
僕の作品例として展示してもいいくらいのものにしたいなと。

ということで、
普段とは違う手法でデザインすることにしました。
ずばり、「テーマを決める」ということです。
普段はオーダーメイドで家具やお財布を作っているので、
お客様の意向に沿う形でデザインします。
しかし、今回のお客様(娘)はまだあまり言葉を喋れないので、
完全に僕の好き勝手にやってしまいます。

まずはテーマ設定です。
娘のための椅子のテーマは
ワンワン」と「ゾウ」と「使徒
にしました。
「ワンワン」はEテレでおなじみの「いないないばあ」に出てくるキャラクターです。
娘も大好きです。
「ゾウ」は動物のゾウです。
これは様々な子供用品に見られるモチーフやイラストで、子供向け商品であることを想起させます。
そして最後は「使徒」。
これは「新世紀エヴァンゲリオン」に出てくるやつです。
「ワンワン」とはかけ離れた存在です。
小さい子ども向け商品とは相容れないものです。
完全に大人向け。
ではなぜこの3つをテーマに設定したのか。
そしてなぜ3つ選んだのかご説明しましょう。

落語との出合い

実は落語の三題噺(さんだいばなし)から着想を得ました。
3つのお題を決めてサゲ(オチ)を作るという落語の手法だそうです。
ちなみに僕は落語に詳しいわけではありません。
全然知らないですし、普段落語なんて聞きません。

実はたまたま落語家のお弟子さんにお会いする機会があり、
その時に三題噺の存在を知りました。
そして、三題噺のお題の一つを僕が提示するという経験をしました。
僕は家具を作る人なので、
じゃあ、家具で三題噺をやってみようと思いついたのがきっかけです。

3つのテーマは
娘が好きなもの
子供向け商品でありがちなイラストやモチーフ
それら2つの世界観をぶち壊すようなテーマ

という3つで構成することにしました。
噺家さんのお知り合いいわく
1つの話にまとめるのが難しいようなお題設定の方が噺家の実力が試されるというようなことを聞いたので、
こんな構成にしました。
ちなみにエヴァを思いついたのは、
完全にシン・エヴァの影響です。

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娘の椅子のスケッチ


どのへんが「ワンワン」なのか
どのへんが「ゾウ」なのか
どのへんが「使途」なのか
ということについては、皆さんのご想像におまかせします。
ちなみに「ワンワン」要素については
スケッチや設計をする段階ではわりとわかりやすい形であったんですが、
制作の時に急遽取りやめてしまったのでほぼ分からなくなってしまいました。

最終的なデザインになるまでと設計に結構時間がかかりました。

制作

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まずは木の板を切るところから。
板も場所によって木目が違います。
どの部分を椅子のどのパーツにするか決めます。

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座面は一枚の板では幅が足りなかったので、
2枚の板を接着して幅を広くしました。

制作途中で体調悪化

そして、ここまで作ったところで
僕の持病の潰瘍性大腸炎が酷くなって、制作は一旦ストップしました。

国で難病に指定されている病気で、
僕の場合は出血がひどくて貧血になるし、は出るし、
肝臓の数値はバカ高くなっているしでちょっと大変でした。
大腸カメラやったりとかしました。

幸い、薬のおかげで1か月くらいしたら落ち着きました。

他のオーダーを受けているものも制作が止まっていたので、
そちらを優先して制作してから娘の椅子の制作を再スタートしました。

再スタート

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脚と座面をどう接合するか。
今回はこんなオスとメスの形状に欠き取って

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こんな感じで接着しました。

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脚と座面を仮組してみました。
カクカクしてますね。

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では背もたれも接着していきます。
背もたれは曲面にしたいので、斜めに接着しました。

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後ろ脚と背もたれを一体化。

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さて、ざっくりと削りまして丸っとしました。

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後ろ姿。

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だんだん丸みを帯びてきました。

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さらにスリムに。軽やかに。

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座面も削ります。

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電動工具で削った後は、鉋を使ってさらにきれいな曲面に整えていきます。

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この鉋で削る音が気持ちいいんです。

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ひたすら無心で削る私。
このあと、研磨して塗装して完成です。

完成

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完成した椅子がこちら。
めちゃくちゃ削りまくりました。
最初のカクカクしい姿はどこえやら。
丸みを帯びたフォルムは我ながらなかなか美しいと思います。

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正面から見るとこんな感じ。
うちの奥さんからは「なんか歩き出しそう」と言われました。

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なんか生き物っぽい感じ僕も分かります。
テーマがね。あれですから。

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ディティールのこだわりは縁のラインでしょうか。
平らではなく少しえぐるように削ったことで、陰影が出てよりエレガントな印象です。
子供用の商品だと、ぷっくりと丸みを帯びさせることが多いと思いますが、
こういう、えぐりと柔らかな曲面があることで、
小さいというサイズ感のかわいらしさもありつつ、
ディティールはエレガントというちょっとしたギャップが生まれたような気がします。

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ちなみに大人が座っても全然大丈夫です。
一応僕、ちゃんと大人の椅子とか家具作れるので。

なんか、大人の僕が子ども椅子に座ると、急に巨人感出ますね。

娘の反応

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ちなみに娘に見せたところ、ちゃんと気に入ってもらえました。
毎日座ってご飯食べてくれます。
「パパ!パパ!」
といって、椅子をアピールしてくれます。
お客さんが来た時にも「パパ!パパ!」と言いながら椅子を持っていって、
「パパが作った椅子だよ」ということをアピールしてくれます。
商売上手な看板娘です。

父親の僕が娘のために作るということ

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やはり自分の娘のためになにか作ってあげるという行為
とても自分にとって心を豊かにしてくれることだと改めて感じることができました。
とにかく今の僕が一番幸せを感じる瞬間です。

もちろん市販品を買ってあげることもありだとは思うんですが、
僕は結構なんでも作れちゃうタイプなので、
せっかくなら作ってあげたいんですよね。
その方が思い出もいっぱい増えると思うし。
父親の僕も何か作ることで成長できるし。

今回は結構自己満のデザインでやっちゃったけど、
娘が椅子を気に入ってくれたことが本当にうれしいです。

将来勉強机とか本棚とか必要になったら
ちゃんと娘の意見も取り入れてあげようと思います。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
僕の作品やオーダーのものはSNSにも投稿しています。
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