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顧客体験の向上に役立つ!ボタン式アンケートプロダクト「QAir」の実装に向けて【手元から考えるIoT 第3回】

「テクノロジーで生活者のしあわせを実装する研究所」とは、我々+tech laboのステートメントに書かれている一言。研究員たちは、各々のプロジェクトやサービスづくりを通じてその実現を目指しています。IoTプロダクトの開発を担当する主任研究員・北村侑大も、もちろんその一人。ただ、北村が他のメンバーとちょっと違うのは「作れてしまう」ところなのです。「こんなのあったら良いかも」というモノを、実際に作ってみて試してみるちょっとした職人技。この連載では、北村がこれまでに制作してきたIoTの試作品を紹介しています。北村が歩む手探りで手作りの道にぜひお付き合いください。

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北村侑大
豊富な紙加工の知識を有し、販促DMや店頭POP、パッケージやペーパークラフトコンテンツの設計、開発に携わる。+tech laboではその経験と開発力を活かし、IoTデバイスの開発、社会実装に取り組む。IoTに限らず、新しい技術によって人体デバイスや生活様式がアップデートされる事を願っているが、アナログな解決策も結構好き。

今回紹介する「QAir」は、ボタン1つで顧客の心情価値をデータ化し、店舗のサービス改善や、顧客の満足度向上につなげていく製品です。本プロダクト実装までの経緯と現状の取り組みについてお話します。

顧客の声・心の機微に着目し、店側の課題を解決

お店への不満を表明するときに、アンケート用紙に記入する人はごくわずかでしょう。その理由は明確で「書くのが面倒だから」というのがほとんどだそうです。

また、約56%の日本人は「この店は嫌だ」と思うと、そのお店に行かなくなる。人によってはお店への不満や怒りをTwitterなどのSNSにぶつけてしまいます(※1)。もちろんこのような現状は、お店側にとってデメリットしかありません。

「QAir」は、そんなアンケートへの課題にアプローチをかけたIoTプロダクトです。従来のように「書く」のではなく「ボタンを押す」というスタイルを導入し、顧客が意見や感情を表明する際のハードルを省けるようにしています。またお店側ではいままで知ることができなかった声や心の機微を把握でき、改善や防止に活かせるようになるはずです。結果、お客様とお店の両方にメリットがもたらされるのです。

最も重要なポイントは簡略化

初めに試作品として完成させたのは、2ボタン式の製品です。YES・NO回答用、ABテスト用として第89回東京インターナショナルギフト・ショーにも出品しました。

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我々の試作品では、顧客は質問を目視しYES・NOのボタンを押して答えるだけ。動線が短くアンケート用紙よりもコンパクトなサイズなため、設置場所の選択肢も広がります。例えば、レジ横に置けばレジの会計を待っている間に押してもらえるでしょうし、フードコートの受け渡し口なら商品が出てくるまでの時間に押してもらえるはずです。

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質問内容は、なるべく簡素にするのが理想です。上の画像のように冒頭から「本日はご利用ありがとうございました」などの挨拶文を入れると、認識に時間がかかり、時間がかかる事で手間が増え、回答へのハードルへなってしまうからです。率直に「本日は楽しんでいただけましたか?YES・NO」でいいと僕は思っています。

また個人的には、ボタンの数も2つでいいのかなと思っています。選択肢が増えることも回答へのハードルになりえますし、はっきり◯×出せない際に3つボタンがあると真ん中を押したくなるんじゃないでしょうか。顧客体験を向上させるなら、回答はYESかNOの2つにはっきり絞った方が良いはずだと考えています。

この製品で大事にするべきなのは“簡略化“です。可能な限り簡略化できる部分はしていきたいと考えています。

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こちらは初回の試作をバージョンアップさせたものです。ボタンを押したことがわかりにくい、という意見を採用し、押すとLEDライトが光るように改良しました。

電源に関しては、初代は電池式でしたが、こちらの試作では電源式を採用しています。

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これは、非接触型で回答を6択にした試作品です。時代はコロナ禍。ボタンを触ること自体がハードルになる、という意見を取り入れました。また+tech laboには“生活シーンに新しいテクノロジーを練りこみ、生活者の幸せを実装する”というスローガンがあり、「ボタン式だけだとアナログで未来感がないのでは?」という考えにも至り、試作をしてみました。ただ非接触型の場合、液晶ボタンの部分とセンサー認識の関係性をどうするかを詰める必要がありました。この部分は、非接触端末の制作においてを実績にあるアスカネット社さんに相談させていただきました。。非接触、空中タッチ端末の仕組みや作り方等、現在も引き続きアドバイスをいただいています。

現状の課題、これからの取り組み

まだまだQAirは試作の状態。ただ実装から市場に出すところまで考えると、今後は中身だけではなく外側の作りもしっかり整えていかなければと考えています。また優れたUIによるデータの見える化や、顧客の本音により迫れるような設問設計など、これから更に磨きをかけていきます。回答したくなり、離脱されにくいベストなインターフェース像を探し、導入しようと考えています。

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(C)2021 DENTSU TEC INC.

QAirは顧客体験の向上に役立つIoTプロダクト

現代は、商品やサービスの売り方のルールが画一化されつつあり、お店の差別化が難しくなっています。ではどうすればいいのか? 私が重要と考えるのは、顧客体験を向上させることで行きたくなる売り場になる事です。QAirを、顧客体験の向上に必要な顧客の声や心の機微をデータ化してくれるのに役立つデバイス、サービスにするべく、実装に向けて奮闘中です。

(※1)顧客サービスについての意識調査/アメリカン・エキスプレス 2017年
https://kyodonewsprwire.jp/prwfile/release/M101163/201706082520/_prw_OR1fl_Pv5OH5q0.pdf