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大企業とスタートアップのオープンイノベーションはなぜ難しいのか。成功の秘訣とは

+tech laboの高木です。

現在はIoTに関わる事業開発を中心に、+tech laboのオープンイノベーションの窓口として、様々な企業との連携を進めさせていただいております。

今回はそんなオープンイノベーションについてお話しします。

定義やメリットについては、Wikipedia含め他にも多くのサイトで取り上げられているので、いくつかオススメのリンク紹介に留めることにします。

オープン・イノベーション
https://bizhint.jp/keyword/12540
(2019年7月8日 BizHint)

僕はこれまで「オープンイノベーション」という言葉を認知する前から、自社ないしはコンサル先の企業で、それこそ大企業・スタートアップ双方の立場から数多くの協業ビジネスに関わってきました。

一方で、まあ難易度の高いこと。頓挫するケースもあれば、上手くいっているように見えて実態は企業同士が衝突しているケースもよく目の当たりにします。

20代の頃は、僕はそのようなケースに、「頭の古い大企業のせいだ」という固定概念からの苛立ちを感じることも多かったのですが、実体験や周囲との話の積み重ねで、具体的なボトルネックや、気付きとなるポイントを最近自分の中で整理できてきました。そこで自分たち含め、今後より実りある事例が日本で創出されることを願い、noteで発信しようと思いました。

スタートアップが主人公のプロジェクトは活性化する傾向にある

大企業とスタートアップのオープンイノベーションにおいて、最もクリティカルに影響を及ぼすのが、プロジェクトの意思決定権をどちらが握るか、です。例外はもちろんあると思いますが、より円滑に進める上で、僕は原則スタートアップ側に意思決定権を持たせる、つまり短期・中期で合弁会社を設立するとなれば過半数以上の株をスタートアップ側が保有することを前提とした取り組みが望ましいと考えています。

僕が大企業側の人間として事業を見ることになった今でも、スタートアップ側に最終的な権限は委譲するような仕組みづくりを心がけています。

理由として、よく「本気度」という言葉も使われますが、いくら大企業側が相対的に本気度高く臨んだとしても、もっと根幹の仕組みのところで大企業たるゆえの足かせが存在し、それが失敗の要因となることが分かってきたからです。

僕が考える大企業の足かせとは次のようなものです。

■スピードの足かせ
程度の差はありますが、役員数・社員数、すなわちステークホルダーが少ない企業の方が、物理的に意思決定のプロセスは短く早いはずですし、どんなに優秀な大企業でもそれは覆せません。もし大企業よりスタートアップの方が意思決定のスピードが遅いなんてことがあれば、そのスタートアップのCEOはとてつもなく優柔不断なただの無能です。
新しい事業はスピードが命です。1分1秒でも早く決断できる側に意思決定権があることは、とても強力な競争優位性の要素となります。

■リスクの足かせ
これも社員が増えれば増えるほど、その数に比例して、判断はどうしても慎重にならざるを得ず、大胆な意思決定をしづらくなります。
なぜなら、最悪自分たちが責任を取ればいい、という次元の規模ではなくなってしまうからです。同じグループ会社なだけで、業務内容も異なる、部署も名前も知らない海の向こうの人たちやその取引先にまで風評被害や金銭的損失が及ぶ可能性もあります。むしろ責任感が強い人ほど、会社の名前を背負って何かアクションを起こすことに対して、踏み出せなくなってしまうシチュエーションを数多く目にしてきました。
逆説的ですが大企業にとっては、自分たちのブランドの色が弱まり、主役の座がスタートアップ側に回ることで、実はより攻めの姿勢で挑戦的なリソース提供が可能となるわけです。

■プライドの足かせ
オープンイノベーションは大体の場合、根幹の技術・データ・経験はスタートアップ側が保有しています。大企業は0からそれを学ばせてもらう立場にあるわけで、そういう意味では、分かりやすくスタートアップの指揮のもと大企業が動いている、という構図を最初から明示しておいた方が、たまに生じかねない大企業側の「自分たちの方が格が上である」という悪いプライドのリスクを潰せます。そうはいってもこの悪いプライドは人間の性なのかもしれません(僕もプライドの高い人間なのですごく共感できてしまうのです)。少しでもそれが生じない仕組みを考えるのがマネジメントの役割なんだと、最近の僕の中では結論付けています。

さてこの件に関して裏を返すと、スタートアップ側は指揮権を持つに値する絶対的な強みを持っていなくてはいけません。この領域はこいつらに任せておけば安心だ、と全面的な信頼を置いてもらえるスタートアップでなければ、逆に大企業側に見限られ頓挫する可能性があります。

僕の経験上、最も感銘を受けたオープンイノベーションの取り組みは、テレビ朝日×サイバーエージェントで生まれたAbemaTVです。

テレ朝早河会長激白「ネットの中にテレビがある」 - サイバーエージェントと「AbemaTV」で協業するワケ
“お話を伺っていると、全体の方針や企画はサイバーエージェントに任せ、テレビ朝日は実現のためにリソースを提供している、という印象です。

早河会長:(AbemaTVに携わるテレビ朝日の)主要メンバーは社内会議に毎週集めて、作業を点検しながら、私も助言はしています。けれども、あくまで藤田社長の指示を優先すべきだし、「藤田社長の話をよく聞きなさい」というのが、口癖のようになっています。もう、藤田社長に全幅の信頼を置いていますので。”
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/090800067/090900001/
( 2016年9月12日 日経ビジネス)

この話は、当時サイバーエージェント側の人間として現場で働いていた僕からしてみても、とても印象的でした。藤田晋社長に対してのみならず、20代後半そこらの僕みたいな一社員に対してもテレビ朝日の方々は、当然年上でキャリアに長けた方がほとんどなのですが、とても熱心に、低姿勢で耳を傾けてくるのです。

「低姿勢」という言葉は、その年のサイバーエージェント側のスローガンにもなりました。

新しいスローガンは「低姿勢」 (藤田晋氏の経営者ブログ)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO02706040U6A520C1000000/
(2016年5月25日 日本経済新聞 電子版)

シンプルにお互いを尊重し合うだけの話なのですが、その構造をつくるのがいかに難しいのか。「低姿勢」というスローガンは僕がサイバーエージェントに在籍していた中でも、最も記憶に残るスローガンであり、今なお自分の考え方や行動の根底となっています。

もちろん僕たちはこの過去を塗り替える事例を創っていかなくてはいけません。

大企業に求められるのは、スタートアップと共通の言語を話せる人

さて、いざ大企業がスタートアップに全体方針を任せるとなった時に課題となってくるのが、本当にこの会社に任せても大丈夫なのか、を誰がどう判断するかです(もちろん逆も然りでスタートアップ側にも、組むべき大企業を目利きする力はとても重要となってきます)。

通常取引の与信調査であれば、帝国データバンクや東京商工リサーチなどの企業信用調査会社でこと足ります。

ただしスタートアップの場合、大幅な赤字を計上していることは日常茶飯事です。そうすると資金調達の状況などから判断することもありますが、いずれにせよ財務的な評価に留まってしまいます。しかもベンチャーキャピタリストなど、プロの投資家ですら明確な正解のフレームを持ち合わせていないわけですから、定性的かつ属人的な判断も必要になってくるのは明らかです。

95%のVCが目標未達――投資エコシステムの現在とこれから
https://jp.techcrunch.com/2017/06/08/20170601the-meeting-that-showed-me-the-truth-about-vcs/
(2017年6月08日 TechCrunch Japan)

そういう意味においては、まずは大企業の中で、属人的な判断をくだせるに値する人間が必要となってきます。いわゆる、オープンイノベーションの窓口になり得る存在なわけですが、僕はこの人材が大企業には圧倒的に不足していると、強く実感しています。

どういうことかというと、先日、同じサイバーエージェント出身で、今はパイオニアのCDOに就いている石戸亮さんのパネルディスカッションを聞いていた時に、うんうんと頷いてしまったのが、彼はパイオニアでは「宇宙人」のような存在であると。

大企業にこそベンチャーと渡り合える「宇宙人」が必要 4者対談
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/casestudy/00012/00441/
(2020年07月29日 日経クロストレンド)

どういった側面で宇宙人と表現されているのかは、とても興味あるところではあるのですが、実際多くの大企業からしてみれば、スタートアップは宇宙に点々とする未知なる星のように感じられると思います。

ともすれば、どの星と交流を深めればよい?と聞かれても、地球外に住んだこともなければ、地球から出たこともない人たちは、全く持って判断しようもありません。必要なのは宇宙で暮らしたことのある人間です。

大企業からスタートアップに流れることはあれど、スタートアップから大企業に流れていったり、スタートアップから大企業に戻ってきたりするケースは稀です。しかし、そこは大企業側が、スタートアップから人材を引き寄せる努力や仕組みの改革を行う必要があると感じています。

スタートアップ側からしてみても、自分たちの理念・思想・文化を理解し、金銭的パートナーを越えて、共通のビジョンを掲げて世界を変えるために大企業のリソースを斡旋してくれる人材(大企業の中のスタートアップ人材)と組むことは重要です。そうすることで初めてその取り組みはブーストします。

僕自身は、この大企業⇔スタートアップの人材流動を一方向ではなく、双方向に活性化させるために、今、汗を流しているといっても過言ではありません。これは、日本という国のリソースの全体最適という観点で絶対的要件であると確信しています。

大企業とスタートアップの壁を破ってワクワクする未来を創りたい

+tech laboの「テクノロジーで生活者のしあわせを実装する」というミッションのもと、僕はこれからもあらゆる可能性の実現に向けて奔走してまいります。

そしてそれらは、やはり自社のリソースだけでは叶いません。

現在、スタートアップから大企業、日系から海外企業まで、それこそ網羅的にお付き合いの機会を拡げていますが、共通しているのはいずれも素晴らしいテクノロジーとビジョンを保有している企業ということです。弊社含め、それぞれのリソースを2社間・3社間と組み合わせて、これまで困難だった大企業とスタートアップの壁を破ったワクワクする未来を創っていきたいと思っています。

いかんせんまだまだ組織人数も限られているため、なかなか短期で協業パートナーを急速に増やしていくことも難しいのですが、中長期的なご相談含めディスカッションは大歓迎です。

僕たち+tech laboに対してオープンイノベーションのパートナーとして、少しでも可能性を感じていただけたのであれば、サイトよりお問い合わせください。お待ちしております!

高木さん

高木 僚平
サイバーエージェントでBtoCサービスのデータ分析やプロダクトマーケティングに従事。2016年に電通デジタルへ移り、グロースハックプロジェクトを立ち上げる。2019年より+tech laboに出向し、ライフハックをテーマとした新規事業開発に取り組んでいる。

https://plustechlabo.jp/

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株式会社電通テックの開発型組織「+tech labo(プラステックラボ)」のnoteです。日々の開発プロセスの中で得たたくさんの発見や学びを、この場でどんどん共有・発信していければと思います!