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IoT活用で顧客とつながる「場」を活用する【フレーベル館×+tech labo】

2020年6月より、+tech laboはフレーベル館様と連携し、顧客満足度向上を目的にIoT製品の実証実験を行っています。

具体的には、フレーベル館様が運営する室内遊戯施設「フレーベル館 Kinder Platz(以下、キンダープラッツ)」に、来店の目的などを問う2択アンケートが可能なボタン型デバイスを設置。来場目的や満足度といったユーザーの声を見える化し、課題抽出や新たなサービスの創出を狙いとしています。

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本プロジェクトは「キンダープラッツ トレッサ横浜店」で実施しました

本プロジェクトはどのような経緯で始まったのか。また、今後の展望とは。キンダープラッツを運営する、フレーベル館こども子育て研究室の田口将弘さん、大谷征巳さん、安藤志保さんに話を聞きました。

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田口将弘さん(こども子育て研究室長)

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大谷征巳さん(こども子育て研究室 こども施設開発チームリーダー 課長)

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安藤志保さん(こども子育て研究室 こども施設開発チーム)

+tech laboからは、ハードウェア開発に携わった北村侑大と、データ分析を担当した当社OMOプランニングセンターの堤禎盛が参加します。

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北村侑大(電通テック +tech labo 主任研究員)

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堤禎盛(電通テック OMOプランニング室 アクティベーションプランナー)

お客様と直接つながる「場」を活用するために

——本日は「キンダープラッツ トレッサ横浜店」でお話をうかがいます。こちら、キンダープラッツの1号店なんですね。

田口:そうですね。現在キンダープラッツは首都圏を中心に8店舗を展開しています。実はこうした遊び場施設の運営は、創業110年以上の歴史のなかで初めての試みなんです。

もともとフレーベル館は、幼稚園・保育所などの保育施設向けに玩具や教材などを販売する「保育用品販売」を主な事業としています。一般的には「児童書の出版社」かもしれませんね。ご存じですか、『アンパンマン』シリーズなどの絵本を……。

——もちろん存じております!

田口:ありがとうございます(笑)。 私が室長を務めるこども子育て研究室は、フレーベル館のR&D部門として立ち上がりまして、新規事業立ち上げや調査研究をミッションにしています。キンダープラッツも、我々が立ち上げた新規事業のひとつです。

キンダープラッツ立ち上げにおいては、「直接、保護者や子どもたちとつながる場を持ちたい」という思いがありました。100年以上続いている保育用品販売は、施設を相手にするBtoBのもの。BtoCの接点となる「場」を持つことで、保護者や子どもたちのことをもっと知り、新たな広がりを作っていく段階なのではないか、と。

——児童書もひとつのBtoCといえますが、より直接的な接点を求めた結果の「遊び場施設」だったわけですね。

田口:キンダープラッツの運営は大谷をリーダーとする「こども施設開発チーム」が行っているんですが、室内遊び場の施設づくりだけでなく、運営自体初めてのことで……。わからないなりに手探りで進めてきましたが、自社施設なのでチャレンジもできるんですね。

お客さんの反応を見ながら、空間作りやコンテンツにフィードバックをしていきたい。そのためにはアンケートを採る仕組みがほしい。そう思っていたところ、2020年2月に訪れたギフトショーで電通テックさんのブースに出会いまして。

——そこで+tech laboの「ボタン型デバイス」に興味を持たれたと。

田口:アンケート自体は会員向けのインタビューなどもありましたが、このデバイスならボタンを押すだけで、「現場の意見」の集計と分析ができる。課題感にマッチして、とても魅力的に映りました。でも、そのときはまだ開発中だったんですよね……?

北村:そうですね、まだコンセプトの展示でした。アンケートは、強い熱意や不満を持った人が答えがちで、その中間にある人の意見をすくいにくい。アンケートに答えるハードルを下げることで、これを解決できないかという内容で。

当時は販促での用途を想定していたんです。スーパーの売り場で「どっちの味がいいですか?」とか。ところが、ギフトショーでは幅広い業種の方にお声がけいただいたんですよね。そのひとつがフレーベル館様だった。

田口:面白そうだなと(笑)。電通テックさんならノウハウもあるし、新しいことをやれそうだなと思いまして。

北村:ありがとうございます。そこから月1回のペースで打ち合わせを続けさせてもらって、ちゃんと動くものができたのが今年の5月のこと。新型コロナウィルスの影響はもろに受けましたよね……。

田口:5月いっぱいまで臨時休業していましたので、実際にボタンを設置したのは営業再開後、6月中旬くらいからでしたね。

2択のアンケートで意識すべき「次につながる質問」

——デバイスには2つのボタンがあり、2択の評価を割り当てることができます。店舗にはどのように設置したのでしょうか?

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実際に店舗に設置したデバイス

大谷:まず知りたかったのは「来店のきっかけ」でしたので、入場カウンターに「本日ご来店いただいた理由を教えてください。あそび場に来るため/お買い物のついでに」のボタンを設置しました。

コロナ禍で外出を控える傾向があったので、遊び場にくる意欲がどれくらい回復するのか見えるのではないかと思ったんです。受付に並ぶタイミングで押してもらえればと。

安藤:お子さまに向けたボタンも設置しています。「今日はどちらのあそびがたのしかった? うんどうあそび/おちついたあそび」ですね。

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お子さまに向けたボタンも設置

大谷:最終的にもう2つ追加して、計4つのボタンを横浜店に設置しました。お客様には見慣れないものなので、やはり最初は打鍵数が少なかったですね。スタッフが声をかけてうながすようにして、徐々に常連様を中心に抵抗なく押してくださるようになりました。

——アンケートは2択で答えるものなので、質問の作り方にも気を使ったのではないでしょうか。

安藤:キンダープラッツの対象年齢は「6ヶ月〜12歳」と幅広いので、できるだけ簡潔に、わかりやすいよう心がけました。北村さんにも相談に乗っていただいて。

北村:単純なYES-NOではなく、答えやすく、次の施策につながるような質問であることを重視しました。

例えば、乳児コーナーに求めることを聞く質問で「広々と遊ばせたい/おもちゃで遊ばせたい」というものがあります。もしこれを「おもちゃで遊ばせたい/おもちゃで遊ばせたくない」にして、「遊ばせたくない」が多数になったとき、どういう施策をとればいいかわかりませんよね。また「ではどんな遊びをしたいですか?」という答えにくい質問になってしまいます。

1つの項目だけにフォーカスすると、クローズドな質問になってしまいます。後に施策を入れることを考えて、道ができるような質問を考えないといけません。

安藤:実際、この質問は「乳児コーナーにおもちゃが少ないのでは」という声を受けて設けたものだったんです。皆さんはどう思っているか、聞けるチャンスでした。

結果は「広々と遊ばせたい」が圧倒的多数。乳児コーナーのリニューアルも検討していたのですが、アンケートの結果を受けて延期することにしました。お客様のリアルな声をサービスに反映できた事例かと思います。

「肌感覚が数値によって裏付けられた」

——アンケート結果の分析についても教えてください。ボタンから取得したデータは、どのような観点で分析されたのでしょうか?

堤:通常の効果検証では、複数店舗での立地の違いや、店舗タイプなどを基準にすることが多いのですが、今回は横浜店のみでの実施なので、時間軸の比較になりました。平日なのか、土日祝日なのか、どの時間帯なのかという観点で分析をしています。

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分析の例(画像は加工しています)

——分析結果の印象はいかがでしたか? 想定通りなのか、それとも意外な結果だったのか。

田口:感覚的に「こうだろう」と思っていたことが、具体的に数値で裏付けられた印象ですね。オープン直後にいらした方は「遊び場に来るため」を押されていたり、週末は大きな子も増えるので「うんどうあそび」の数が増えていたり。

堤:お昼を挟んで、午前と午後でもだいぶ潮目が変わりますよね。お昼前後は「うんどうあそび」が多くて、閉店が近くなると「おちついたあそび」が増えてくる。

——お子さんも疲れるんでしょうね(笑)。

大谷:意外だったのは、コロナ禍にあって目的来店(あそび場にくるため)の方が7割くらいいたことでした。「買い物のついで」のほうが多いと思っていたんですよね。常連の方が定着してくださっている、ということなのかなと。

——先ほどの「乳児コーナーのリニューアル延期」のように、分析結果から施策につなげた例はありますでしょうか。

安藤:来店目的の「お買い物のついでに」が多かった時間帯に、再来店をうながすクーポンを配布しました。次回来ていただいたら割引する、という内容にしたところ、かなりクーポンの戻りがよかったんです。「ついで」から目的来店につなげられたのではないでしょうか。

——一方で、アンケートの反省点や課題などはありますでしょうか。

大谷:満足度が90%を超えていたことですね。サービス業は60%を超えれば合格ラインなのですが、あまりに高すぎるなと。好意的に思う人は喜んで押してくれても、そうではない人はそもそも押さずに帰ってしまうケースがあったのかもしれません。

——怒りをこめてボタンを押すとは限らない、と。

大谷:「来店の動機」や「遊びの種類」など、行動を伴うものは比較的リアルな数字を拾えていると思うんです。そうではなく、「満足か不満足か」といった感情を伴うものは、やはり難しいのかもしれませんね。押さなかった人がどういう感情だったのか知るのは、今後の課題になると思います。

デバイスから拾った声を、どう活かしていくのか

——最後に、今回のプロジェクトを今後にどう活かすのか、+tech labo側、フレーベル館様側、それぞれお聞かせいただければと思います。

北村:+tech laboとしては、肌感覚をきちんと数字で実証できたことは大きな成果だと思っています。弊社はメーカーではないので、開発したデバイスを現場に置かせていただいて、データを取得すること自体がチャレンジでしたから。

堤:実際に生活者様の生の声を拾える場をご提供いただけたのは、とてもありがたいことでしたね。(おそらくボリュームゾーンである)30~40代の親御さんの声はマーケティングにも大いに活用できると思います。

北村:お客様理解を進めるためにも、よりお客様にとって使いやすく、よりお客様のことを把握できるソリューションを開発していきたいですね。ボタンを非接触にする、カメラとAIを活用して分析するなど、まだ工夫の余地はありますから。

——フレーベル館様はいかがでしょうか。

安藤:お客様のリアルな声を聞けるデバイスですので、分析結果を活用して、お客様のご要望に添ったサービス展開ができればと思います。横浜店以外の店舗にも設置して、店舗の特性の違いも把握したいですね。

大谷:ただ、お客様のご要望を聞くのはもちろんなのですが、その全て受け入れるのは簡単なことではありません。お客様の声を真摯に受け止めながらも、「キンダープラッツの在り方」をきちんと伝え、理解していただくことも大切だと感じています。スタッフの育成など、もっともっと力を入れていきたいですね。

田口:先に申しましたとおり、キンダープラッツには「保護者や子どもたちとの接点」を期待しています。お客様の声を聞ける手段として、引き続きボタン型デバイスを活用できればと思いますし、ひいてはキンダープラッツという「場」を活用するヒントになればと考えています。

お客様とつながる「場」から、お客様のことをより深く知り、さらにビジネスへと活かす。そうしたサイクルから、また新しいものが生まれたら嬉しいですね。

フレーベル館 Kinder Platzとは?
フレーベル館が展開する子どもたちのための遊び場。絵本の中の森をイメージした空間デザインで、絵本の世界に入り込んだような世界が体験できる。現在、関東圏内に8店舗を展開している。
https://www.froebel-kan.co.jp/shop/platz.html

構成・文=井上マサキ+TAPE

※本記事の取材・撮影は、マスクの着用や消毒等、感染症対策を十分に行った上で実施しています
※顔写真の撮影時のみ、対象者はマスクを外しています

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