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コロナ禍に誕生した2つのハンドソープ型プロダクト「CounTe」「Utatte」

コロナ禍で改めて気づかされた、感染予防行動の大切さ。この1年半超で、多くの人が手洗いとアルコール消毒を継続してきました。

ただ、コロナ禍になった当初は「なぜアルコール消毒までしないといけないのか」「手洗いの回数が増えて面倒だ」と思った人は多かったはず。+tech laboでは、そんな思いに焦点を当て、社内発のアイディアから一人ひとりの感染予防行動に意義をもたせて楽しくしっかり手洗いができるIoTプロダクト「CounTe:カウンテ」と「Utatte:ウタッテ」の実装に取り組んでいました。

2つのIoTプロダクトはどうやって作られていったのか。本記事ではその点を中心にお話します。

億劫だったアルコール消毒を、少しでも前向きに行えるように

まず「CounTe」について。こちらは感染予防対策の1つ、“アルコール消毒”に焦点をあてて開発されたプロダクトです。いまや、どこでもアルコール消毒をするのが当たり前になりましたが、コロナウイルスの流行初期はアルコール消毒の習慣は定着していませんでした。そのため億劫に感じ、どうしても前向きに消毒をしようという気持ちになれない人もいたのではないでしょうか。

「何とかアルコール消毒を意義のあるものに、前向きな習慣にできないか?」という課題に“アルコール消毒×募金”の掛け合わせというアイディアがありました。当時の具体的なイメージは、人が多く集まる商業施設や公共施設に「CounTe」を置いてもらい、アルコール消毒をしてもらう。すると、消毒された回数に応じて募金額が設定され、「CounTe」を置いた店舗から、医療施設や医療従事者に募金を届けてもらうものでした。

そのような仕組みがであれば、店舗側は消費者から状況改善に積極的なイメージを持ってもらえるでしょうし、施設利用者側もアルコール消毒をするだけで、社会を応援する活動に参加している意義を見出せるようになるはずです。

プロダクトの構造としては、さほど難しくありません。ユーザーが手をかざす部分にカウンターセンサーを取り付けられており、消毒液が出れば画面上の数字が1つ増えるというもの。設置場所ごとの噴射回数は自動で集計され、募金規模が決まる仕組みも考えており、自動集計などの機能が盛り込まれれば、残量検知や入場者数測定など、副次的な機能も付け加えることができそうでした。

子どもに楽しくしっかり、手を洗ってもらいたい

「Utatte」も「CounTe」と同様に、感染予防行動に消費者の実態に即した要素を掛け合わせたプロダクトです。掛け合わせたのは「楽しさ」と「しっかり手洗いが可能」の2つ。

一般的に石鹸で手を30秒ほど揉み洗いして流水で15秒ほどすすぐと、手に付着したウイルス残存率は手洗なしの状態の0.01%まで下がると言われています。ただ、常に時間を正確に数えて手を洗えている人は、ほとんどいないのではないでしょうか。特に子どもは、途中で飽きて短時間で手洗いを終わらせてしまう可能性が高い。親としては、感染力が強いウイルスである以上、子どもにはなんとかしっかり手を洗って感染対策をしてほしいと思うもの。「Utatte」は、そんな思いに着目し作られたプロダクトなのです。

飽きずにしっかり手を洗ってもらうために取り入れたのは、30秒間のメロディを流すという仕組みです。子どもの年齢や性格によって多少のブレはあるものの、石鹸を出してから30秒間手を洗いたくなるようなメロディが流れれば、子どもに楽しく手を洗ってもらえるのではないかと考えました。

構造も「CounTe」同様、難しくありません。上の写真は、市販のハンドソープ機器にマイコンをつないで、泡が出てから数秒後に30秒間メロディが流れるように設定された試作です。試作環境が進化したことによって、高度なプログラミングを行わなくても、ここまで解像度が高く具体的な施策を作ることができました。またマイコンボードの中心には、ニコちゃんマークの絵が出るように設定されており、目で見ても楽しめる仕組みも取り入れています。

ちなみに数秒後にメロディが流れるのは、子どもに落ち着いて手を洗ってもらうための時間を作ったからです。子どもの年齢が低いほど、不安定な台の上に乗って手を洗うことになりますよね。そんな状態でハンドソープが出た瞬間にメロディが鳴ると、子どもはびっくりするはず。転倒事故に繋がりかねないため、あえてひと呼吸おいているのです。

試作品は、解像度を上げてクライアントとのイメージのブレも軽減させる

「CounTe」の場合、試作品としてプロダクトを作れば、手をかざして画面に映る金額や消毒回数が+1する瞬間を体験できます。体験できれば、本プロダクトの主旨でもある「はたして、アルコール消毒をして画面の数字が増えると意義を感じられるのか?そもそも募金できて嬉しいのか?」を再考できます。また「カウントが+1された瞬間に『チャリーン』と音を出せば、よりリアルな募金体験になるのでは?」といったアイディアもわきやすくなりますし、具体的な改善点なども見つけやすくなります。

「Utatte」に関しても、試作品があれば子どもに使ってもらえます。彼らのリアクションから課題や修正点を浮かびあがることもあるでしょう。デザインや仕組みについても、私たちの試作品をもとに話し合えば、クライアント側のイメージ像にかなり近づけられるはずです。

試作品の役割は、製品の解像度をあげる役割とクライアントとのデザインイメージや仕組みに対するズレを軽減してくれる点にあると私は考えています。

データをもとに、消費者にとってより良い製品を開発・提供できるサイクル作りへ

今後の展望としては、開発したプロダクトをそれぞれに適した場所で試してデータを取り、そのデータをもとに質の高い体験やサービスを生み出す、というサイクルが作れればと考えています。

特に、実店舗や公共施設で実証して得られたデータは、製品開発・改良に必須な“ユーザー像”の解像度をあげてくれるはずです。こうすることで、POSから得られない消費者の行動なども見え、ユーザーに向けたより精度の高い施策を行えるようになるのではないかと考えています。マーケティングプランをクライアントへ提供する際の説得力も高めてくれるため、非常に重要です。

今後も、「CounTe」や「Utatte」のような消費者の課題や実態に則した製品を開発するとともに、消費者にいち早く届けられる環境(サイクル)作りにも力を入れていきます。

北村侑大
豊富な紙加工の知識を有し、販促DMや店頭POP、パッケージやペーパークラフトコンテンツの設計、開発に携わる。+tech laboではその経験と開発力を活かし、IoTデバイスの開発、社会実装に取り組む。IoTに限らず、新しい技術によって人体デバイスや生活様式がアップデートされる事を願っているが、アナログな解決策も結構好き。