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食品ロスの発生原因を調べる方に知って欲しい「知られざる発生要因3つ」

よく言われる要因

コンビニやスーパーの恵方巻や東京オリンピックで30万食のお弁当が廃棄された事例はそのセンセーショナルな映像などから「悪い事」として捉えられがちで、それゆえ学生さん等が食品ロスは何故起きるか?と考えた時に真っ先に挙げられる「作り過ぎ」「計画の失敗」等に分類されてくると思います。
他にも消費者庁や農水省など様々な所に記載のある「規格外品、返品、売れ残り、食べ残し、直接廃棄、過剰除去」このあたりが挙げられます。
今日はこれに記載される事が無いだろうなという、発生要因のケースを挙げたいと思います。

ただ、注意していただきたいのはこれから挙げるものは食品ロスがあるから悪いという事を言いたいわけではない、というのは前提にお読みください。

発生要因1:料理教室、学校系

自分は個人的には手打ち蕎麦の教室に6回程通うカルチャースクールを受講した事があります。
その時には生徒さんは1キロの蕎麦打ちをして、一部はその場で食べて残りは持ち帰る・・・事にはなっています。

生徒さんだけではなく、講師役の方々が見本で蕎麦打ちも披露するので、生徒さん30人と講師役10人ぐらいがそれぞれ蕎麦打ちした日には40キロ以上の蕎麦が発生します。
200gを1人前と換算するなら200人前の蕎麦が発生している計算になりますから「うちの蕎麦教室じゃ廃棄は絶対無い」言われがちですが、それでは辻褄が合わない要素です。
生徒30人と講師10人、それ以外の160人分はどうやって集められるのか。

別の要素に目を移せば調理専門学校や大学等といった教育機関も実習という名の製造を繰り返しますがそれらが全て食べられているかというと・・・
かといって生徒1人が食べられる量だけ製造したら実習になりません
パティシエを目指す生徒さんが一人で食べれる量にするためホールケーキを作らないという事は無いでしょう。

しかし、食品ロスを悪と捉えすぎるとこういった教育等の場面にも大いに制限がかかる事だと思うのです。
未来の食品業界を担う後進育成のための尊い犠牲の食品ロスだ、と主張すると必要悪だという話になっていきますが、これらを尊い犠牲とする事なく上手に活用できる方法があれば良いのではないでしょうか?

発生要因2:就労支援施設系

次に注目したいのは障害者さん達の支援施設です。
これは作業する事で賃金が発生する仕組みです。
普通のお店さんであれば売れ行きを考えて製造量の調整をします。
が、就労支援施設としては今日は天気悪そうだから10人中3人来なくていいよ、とは出来ません。
10人在籍なら10人が作業しないと賃金が全員に行きません。

食品ロスが悪だと捉えすぎると、障害者さんの就労支援施設では飲食関係をやるな!と飛躍し過ぎてしまってそれも危険だと思います。
ある程度売れ行き見込みに関係なく一定量を生産している事で障害者さんも生きていけるための就労支援施設なわけですから、もし余剰分があるのならそれも上手く活用できる方法があれば良いのではないでしょうか?

発生要因3:宅配業者系

ECサイト、通販の発展と冷凍冷蔵配送の発展で食品通販も増えてはいます。
ただ、そこで発生する食品ロスに注目する人は少ないです。
冷凍冷蔵系で発送はしたけど長期不在などで返送されてしまうケースがあります。
そうすると発送元のお店さんとしては返送されるとどっちみち賞味期限切れになるし返送料金請求されるので返送せずに配送店舗で廃棄してくれ、と言うケースが起こり得ます。
お店さんとしては廃棄してませんが、Y社やS社のような宅配便会社さんがその廃棄コストを肩代わりしている状態です。

プラスフード事務局の運営会社は洋服のネット通販もしています。
実体験として長期不在や受取拒否の発生率は大体0.1%です。
国土交通省の発表で令和3年は49億5323万個だったそうです。

その中で冷凍冷蔵の食品がどれぐらいかわからないのですが仮に20%とすると、9億9065万個。
弊社の長期不在率0.1%を掛けると99万個の荷物が対象になります。
あまり再利用されているとは考えられないので年間これだけの量が宅配業者さんで廃棄されたり、お店に戻ってから廃棄されているとすれば・・・。


解決の為に必要な2つの要素

一つは「プラスフード」のようなフードシェアリングサービスにより突発的な余剰分を吸収するセーフティネットだと思います。
実際に発生要因2に挙げた就労支援施設系の幾つかはプラスフードの加盟店さんとしてユーザーさんに余剰分を無料配布しているのです。
素敵な支援施設だと思いませんか?

解決の為に必要な二つ目は「善きサマリア人の法」の食品バージョンの制定だと思います。
これは発生要因1に挙げた学校系や要因3の宅配系の解決に必要だと思います。

学校側も実は試食してくれる人がいたらいたで有り難いんですけどね、と言ってくれる方はいらっしゃいます。
未来の料理人を育成するうえで食品ロスの削減も学校で教えられるならやりたいという方もいらっしゃいました。

が、障壁があるのです。
生徒さんが未熟な技量の状態で製造した物を第三者に提供した後のリスク。
専門学校等ではある程度のレベルまで行くと校内に設置した販売店舗で販売実習まで行えるのでそこである程度解決できる学校もあります。
が、その前段階での製造品や、課外で自習制作したものは販売出来ません。

宅配業者さんもそうです。
お店さんが廃棄してくれ、と言ったら所有権は無くなったと考えられますがそれを第三者に提供した後に何かあった時の責任の所在はどこになるか、というリスク。

これらを解決するための法律になり得るのが「善きソマリア人の法」の精神だと思います。
つまり、善意で余剰廃棄になりそうなものを希望者に配布した時に食中毒など何かしら問題発生した時に責任を問われない、という趣旨です。
※2023年の日本では存在していませんが海外にはあります。

総合学習等で食品ロスを調べたりする生徒さんやそれを指導する教員の皆様、もし本稿をここまでお読みいただけてたなら、凄く嬉しいです。
是非、こういった今まで指摘される事の少ない食品ロス要因も考えると一層深掘り出来ると思います。

これらの背景をよく見ると「食品ロスは悪・・・とは言い難い」という事で学校や支援施設、宅配業者さんを責める事は出来ない筈です。
そこから一歩進んで、これをどうやったら解決できる案があるのか、そこを皆さんに考えていただきたいと思っています。

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