見出し画像

「占いを科学する」最終回・科学的視点から見た占い

1.はじめに

皆さんこんにちは、中の人です。
今回は前回・前々回以上に気合い入れてます。
何しろ「占いを科学する」の核心に迫るのですから。

さて、第一話と二話でそれぞれ、占いの心理学的考察、多様性や普遍性・そして社会的・文化的な意義について見てきました。その結果、占いは単なる迷信ではなく、人々の生活と密接に結びついた文化的営みであることが明らかになりました。たとえ結果が吉凶いずれにせよ、我々は占いを尊重し、文化の一つとして受け入れてきた歴史があるのです。もちろん、魔女裁判や盟神探湯のようにマイナスな面もありましたし、前回書き洩らしましたが、平安貴族の方違え(かたたがえ)のように、人間の勝手な理由づけによる占いの利用もあったことは事実です。

では、最終的に占いは科学的に検証することができるのか、その効果を科学的に説明することは可能なのか。最終回の今回は、いよいよ核心に迫ります。果たして「占いは科学」できるのでしょうか。

2.占いの実証可能性と再現性の問題

まず、占いの実証可能性と再現性の問題についてですが、これらは科学的検証の重要な条件です。

実証可能性:ある主張や仮説が、観察や実験によって確かめられる可能性があること。
再現性:同じ条件で実験や観察を繰り返した場合に、同じ結果が得られること。
このふたつの項目が、占いを科学するうえで大きな障害となっています。

a. 対照実験の設定が難しい
科学的検証には、対照実験が必要です。たとえばワクチンの効果を検証するとします。同じような体調や体型・同じような年齢と身体的性別の実験群を用意することは可能です。しかし、占いの場合は、適切な対照群を設定することが非常に難しいことです。例えば、「今日は良いことがあるでしょう」という占いの結果は、人によって解釈が異なります。実験的に財布が落ちている状況をすべての実験群に故意に起こしたと想定します。しかし人によって(つまり主観によって)解釈が異なります。ちゃっかり財布を自分のものにしてお金が手に入ってラッキーと思う人もいれば、正直に交番に届けて煩雑な手続きを行わねばならず、疲れてしまってラッキーとは感じない人もいます。人間の主観が異なる以上、全く同じ状況を作り出すことはできません。

b. 結果の定義が曖昧
占いの「当たり」「外れ」の基準があいまいなため、結果を数値化することが難しいです。例えば、「今日は良いことがあるでしょう」という予言が、その日の出来事とどの程度合致すれば「当たった」と判定するのか。その基準は主観によって異なります。実験的に「今日の実験の報酬です」と500円もらって、帰りにコンビニスイーツが買えると喜ぶ人もいれば、たった500円、何の役にも立たないと思う人もいるのです。

c. プラシーボ効果の影響
占いの効果には、プラシーボ効果が大きく関与している可能性があります。つまり、占いの結果を信じることによって、偶然その通りの結果が引き寄せられるのかもしれません。一方でプラシーボ効果が全く現れず、いわゆる「外れた」となる人もいるでしょう。この場合、運という偶然性に左右されることになるため、占いの効果を科学的に検証することは非常に困難になります。

3.心理学という科学的観点から

占いの効果の一部は、以下のような心理学的メカニズムで説明できるかもしれません。あまり聞き覚えのない専門用語になりますが、簡単な解説を添えました。第一話でも触れたことですので、よろしかったら振り返ってお読みいただくと良いかもしれません。

・バーナム効果:誰にでも当てはまるような曖昧な占い結果を、自分だけに当てはまる特別なものだと感じる心理的傾向。メディアのざっくりとした星占いのようなもの。たとえば獅子座の人は何万人といるのに、その結果が自分だけのものであるかのように思い込むこと。
・セルフ・フルフィリング・プロフェシー(自己成就予言):ある事柄を強く信じることで、無意識のうちにその通りの結果を引き寄せてしまう現象。望む結果が出るようにと、無意識に行動をとることによって起きる現象のこと。
・プラシーボ効果:偽薬や偽の治療を受けたにもかかわらず、心理的な作用によって症状が改善されるように、ある事柄が起きても通常ラッキーとは思わないような事柄でもラッキーと思い込む効果のこと。

これらの心理的効果によって、占いの結果が当たったように感じられたり、実際にその通りの結果が引き寄せられたりする可能性があります。つまり、占いの効果の一部は、人間の心理的なメカニズムによって説明できるといえます。

ただしこれらだけでは、占いの効果のすべてを説明できるわけではありません。占いの効果には、まだ未知の部分が多く残されています。

4.統計学の観点から

統計学は、データを収集し、分析することで、対象とする現象の特徴や傾向を明らかにする学問です。この統計学的な視点から、占いの効果を説明する試みがあります。

a. 偶然の一致の可能性
占いの当たり外れを、偶然の一致として説明する考え方があります。例えば、占いで「今日は良いことがあるでしょう」と言われ、その日に実際に良いことがあったとします。しかし、これは偶然の一致である可能性が高いのです。多くの人が占いを受ければ、偶然にも占いの結果と一致する出来事が起こる確率は上がります。これはさきほど説明した星占いの例にあてはまります。

b. 疑似相関の問題
占いの結果と実際の出来事の間に関連性があるように見える現象を、疑似相関と呼びます。例えば、「星座Aの人は性格Bの傾向がある」という占いの結果があったとします。星座Aの人の中に、たまたま性格Bの人が多かったために、占いの結果と性格の間に関連性があるように見えるのです。しかし、これは見かけ上の相関であり、因果関係があるとは限りません。端的に言うと、これまでの占い結果の積み上げに基づいて出された占い結果であるため、疑似相関とすら言いきれないのです。

c. データの解釈の問題
占いの効果を統計的に検証する際には、データの解釈に注意が必要です。例えば、ある占い師の予測の当たる確率が50%だったとします。これは、偶然で当たる確率とほぼ同じです。コインの裏表を当てるゲームと同じようなものです。つまり、この占い師の予測は、統計的には意味がないと解釈できるのです。データを適切に解釈することで、占いの効果を客観的に評価することができます。

統計学的な視点から占いの効果を説明する試みは、占いをより科学的に理解するための一歩です。しかし、統計学だけですべてを説明できるわけではありません。占いの効果には、まだ未知の部分が多く残されているのです。

統計学は、占いの効果の一部を明らかにする強力なツールですが、同時にその限界も認識しておく必要があります。心理学的な側面や文化的な側面など、様々な角度から占いを理解することで、占いと科学の関係についてバランスの取れた見方ができるでしょう。

5.占いの社会的機能と問題点

現代社会における占いの役割と影響

a. 不確実性の高まりと占いブームの背景
現代社会は、急速な技術の進歩や社会構造の変化により、先行きが不透明です。このような不確実性の高まりの中で、人々は自分の人生の指針を求めて占いに頼る傾向があります。占いは、不安な気持ちを和らげ、決断の後押しをしてくれる存在として、現代人にとって重要な役割を果たしています。

b. メディアとビジネスにおける占いの位置づけ
占いブームを反映して、メディアやビジネスの世界でも占いが大きな注目を集めています。テレビや雑誌では占いコーナーが設けられ、インターネット上には数多くの占いサイトが存在します。電話占いというものもあり、直接占い師と対面で占わなくてもよくなっています。また、占い師という職業も確立され、占いに関連する商品やサービスが数多く提供されています。パワーストーンをはじめとするスピリチュアルグッズも人気です。占いは、現代社会において一大産業となっているのです。

c. 占いの社会的機能と問題点
占いは、現代人の心の拠り所となり、人生の選択を助ける役割を果たしています。また、占いを通じて人々が集い、コミュニケーションを深める機会にもなっています。しかし、占いに過度に依存することで、自分自身で決断する力が弱くなったり、占い結果に振り回されたりするという問題点も指摘されています。占いの社会的役割を認めつつ、その限界についても理解することが重要です。

占いと科学の共存に向けて

占いと科学は、一見すると対立する概念のように見えます。しかし、両者が共存し、相互に理解を深めることで、人間の心や行動についてより深い洞察が得られるのではないでしょうか。

a. 占いを科学的に研究することの意義と可能性
占いを科学的に研究することで、占いの効果のメカニズムや、占いが人々に与える心理的影響などが明らかになります。これは、占いをより適切に活用するための指針となるだけでなく、人間の心理や行動について新たな知見をもたらします。占いを科学的に探究することは、学際的な研究の発展にも寄与するでしょう。

b. 占いを文化として尊重しつつ、科学的視点を持つことの大切さ
占いは長い歴史を持つ文化的営みであり、それ自体に価値があります。占いを一方的に否定するのではなく、文化としての意義を認めることが大切です。同時に、科学的な視点を持つことで、占いの効果や限界について冷静に見極めることができます。文化と科学の両方の視点を持つことが、占いと上手に付き合うための鍵となるでしょう。

6.まとめ

人々の中には、占いを信じ込みすぎるあまりに危険思想に走ったりする人が多々見受けられます。スピリチュアルグッズを高額で買い求める人も存在します。いわゆる「占いに騙されている」状態です。前述した占い依存からもう一歩進んでしまった状態です。
本来ならば人生の参考にとどめるべきところ、完全に依存してしまい、特定の占い師に操られたり、高価なスピリチュアルグッズに頼り切ったりするのです。また、そういった人々を利用した詐欺ビジネスも存在します。
これは極端かもしれませんが、占いにより重大な病気の標準医療をやめてしまい、占い師の勧めるままに偽薬を投与されるなどの例もあり、下手をすると命にもかかわる事態にもなりかねないのです。

そのような人々のストッパーになるために、占いを学問的に捕らえ分析することは非常に重要なことだと言えます。述べてきたように、科学で完全に占いを分析することは非常に難しい問題ですが、全くわからないということでもありません。重要なのは、科学から冷静に占いを俯瞰することは大切だということです。

しかし社会学的側面からすると、占いは人間文化の重要な要素となっています。たとえば様々なアーティストによる美麗なタロットカードは芸術的価値があり、またゲームのためのものだったトランプからいかにして占いグッズとしてのタロットカードが生まれたのかの歴史も興味深いものです。また歴史的に、タロットカードの人気ぶりに為政者がたびたびタロット占いを禁じたことすらもあります。そういった観点から、社会的に占いは人類史に溶け込んできた存在なのです。

ある人気のタロット占い師が著書の中で述べていました。「タロット占いは、当たり外れが重要なものではありません。自分を見つめなおし、自分を分析するためのものなのです」占いの存在意義を端的に表した言葉だと思います。
3回にわたるこのブログを通して、占いと自分との関係性のあり方について、一考してみるのも良いのではないでしょうか。

ここまで読んでくださってありがとうございました。引き続き、皆さんの知的好奇心を刺激できるブログを書いていければと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?