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回想その3‥‥キャットニップ

7、8年ほど前からキャットニップを庭で育てている。

始めは外に小さなプランターに植えていた。キャットニップはシソ科で西洋マタタビまたは和名イヌハッカと呼ばれ、ミントそっくりの葉の形した猫の好きなハーブの一つ。ペットショップで売られている木のマタタビは別物だ。あれは山に行くと時々見かけるマタタビ科の蔓性低木で、小さなキウイフルーツのような実ができる。あまり知られてないが、実は食用のキウイフルーツもマタタビ科で、畑にキウイフルーツの木を植えていると猫がその木の下でゴロニャンしていたりする。西洋マタタビは木にはならない植物でプランターで育てると通常は30㎝程度に育ち、小さな白い花が咲く。地域にもよるが、私の暮らす地方では、冬になると地上部は枯れて春にはまた葉が出てくる。
我が家の猫達もこれが大好きなのだが、なぜか木のマタタビには反応しない。猫にも好みがあるようだ。

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↑ ゴロニャンするのが大好き!

引っ越ししてからこの株を露地に下ろしたところ、うちの庭のあちこちにはびこることとなった。キャットニップはとにかく繁殖力がスゴくて、一度種がこぼれだすと厄介モノ。そして越年すると株も丈も大きくなり、庭に生えた株は背丈が1メートルを超えるほどになった。その種が飛んで向かいのうちの野菜畑にも侵略してくるようになり、初めは抜いていたが、最近はコンパニオンプランツとして活用したり、虫除けとして利用したり、猫を飼っている家に株分けしたりして、減らすよう努力している。

うちの庭にはこの植物目当てによく近所のノラ猫さんたちがやって来て、食べたりにおいを楽しんだりして、窓越しに留守番で退屈してるうちの猫の刺激剤となってくれている。

先日死んだ我が家の猫は、この葉と花の独特なニオイが大好きだった。晴れた日には、身体にこすりつけてゴロゴロしたり、ハグハグ噛んでうっとりしたり。
でも彼女は見えないからか、そのニオイ以上に花に群がってくるミツバチの羽音を聞くのが大好きだった。初夏の6月頃から一斉に咲き始める小さな白い花にはたくさんの虫たちが寄ってくる。ハナバチやクマバチ、ミツバチがたくさん集まってきて、花粉を集めてブンブン飛び回る。

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花が咲くシーズンになると、彼女がキャットニップの前で佇んで、じーっと耳を凝らしてハチたちの羽音の競演に聞き入るのが日課だった。

キャットニップの花と盲の猫。
我が家の庭の夏の風景だった。

最近、春らしくなりキャットニップの芽が出てきた。まだうぶ毛の葉が土からちょこちょこ出てる程度。彼女が亡くなって初めての春。
大きくなってまた今年もたくさん花を咲かせる頃、キャットニップの前で佇む彼女の姿を思い出すと思うと、今でもやるせない。

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