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オープンソースロボット「OTTO」を使った取り組み(4)

こんにちは、ファブラボ神戸のシェアメンバー(運営)として活動しております、ysです。ファブラボ神戸内では、昨年頃からOTTOというオープンソースロボットを使った取り組みを行っています。

前回の投稿では、​ファブラボ神戸で行ったOTTOワークショップをきっかけにして実施できた、多拠点とのコラボレーションについてご紹介しました。本投稿では、同じく多拠点での連携をベースに子供向けに実施したリモートワークショップについてご紹介します。

ファブラボ西播磨さんとのワークショップ。題材としてOTTOを活用する。

ファブラボ西播磨さんは、兵庫県の西部に位置する佐用郡佐用町を拠点に活動されております。佐用町には廃校となった小学校を改装した公共施設「ふれあい長谷」があり、その教室の一室にファブスペースを構えています。
広いスペース、リノベーションされた清潔な校舎、山々に囲まれた環境があり、都会よりも自由なものづくりができます。そして何と言っても、マスター自作の自作大型CNCルーターを運用されているところが最大の魅力です。なんとサイズは4尺×8尺(シハチ)まで可能!

2020年末、ファブラボ西播磨さんから、OTTOを題材にしたワークショップ開催について相談を頂きました。同じく兵庫県の北部に位置する豊岡市さんが主催するワークショップです。
豊岡市(環境経済課/豊岡市工業会)さんは、街の課題解決をスタートアップと共に推進するためのマッチング・プラットフォーム「Urban Innovation JAPAN」の仕組みに参画しておらます。今回は豊岡市の子供達に、地元産業へ興味を持ってもらうことを目的としたワークショップを企画しているとのことでした。
もともと豊岡市さんは、「おっとろっしゃ!とよおかのものづくり」というワークショップイベントをここ毎年開催されていました。地元産業にまつわるワークショップブースが集まる盛大なイベントで、まるでローカルのキッザニアのような雰囲気です。地元の若者が就学のために都会へ越した後も、Uターンで地元企業に就職すること検討してもらいたく、この地元活性化イベントを重要視されておられるようです。
しかし、昨年2020年は​コロナ禍のため、中止となってしまいました。そこで、豊岡市では、リモートで開催できるワークショップを模索されており、Urban Innovation JAPANの仕組みを活用し、ファブラボ西播磨さんと共に活動を進めていくことになりました。

同じ兵庫県という繋がりもあり、ファブラボ西播磨さんから、我々神戸チームも参画しないかとお声掛けをいただきました。そして、神戸で開催したOTTOワークショップについての投稿をSNSで見ておられたため、OTTOをワークショップの題材としたいというご意見も頂き、もろもろ含めファブラボ神戸からも協力させていただくことになりました。先の投稿にもあるように、OTTOは3Dプリント部品を使い、Arduinoベースの電子回路で動作します。また、ブラウザベースのブロックプログラミング体験も可能で、子供に向けたワークショップとしてかなり有用ではないかと考えられました。

OTTO改良! より作りやすく、より安定設計へ。

しかし、私達が事前にOTTOを組み立てた際の本音の感想は、「大人でも、電子工作に慣れてないビギナーにとっては難易度が高い」というものでした。今回、ファブラボ西播磨さん中心に、OTTOへ更に改良を施して組立難易度を下げて、より子供向けワークショップを開催しやすいものを製作して頂きました。詳細はFabbleにて紹介しています。(なお、OTTOの設計はオープンソースとなっています。クリエイティブコモンズの”CC-BY-SA-4.0”で、原作者のクレジット表示、改変した場合には元の作品と同じCCライセンスで公開、営利目的での二次利用も許可。)改良点の概要としては、概ね以下の点です。

・FOOT・LEGのサーボモータをLEG内に集約
・超音波センサ固定具の追加
・LEGモータのサーボホーンをBODYに移設
・基板レイアウトの変更
・電池ボックスの固定ブラケット追加

この改良によって多くの困難が解消されました。しかしArduino Nanoの拡張Shieldへのピン接続等は避けては通れません。配線作業に慣れていない人は接続場所の間違えてしまうことが予想されたため、西播磨さんの方で可能な限り配線の目印等を準備していただきました。

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リモートワークショップの下準備

今回のワークショップは、もともと豊岡市の施設でオンサイト(実地)開催する方向で検討を進めていました。しかし、2020年年末年始にコロナ感染者数が大きく増加したこともあり、ファブラボ西播磨さんやファブラボ神戸のサポートメンバーが豊岡市に出向くことは取り止め。その代わり、現地では市のスタッフの方々がサポートを行い、我々は講師としてZoomで会場と接続する形ですすめることになりました。

このとき危惧されたのが、リモート接続ゆえの会話のミスコミュニケーションや、実物を使った指導ができない等の問題です。パンデミックが始まってから既に半年が経過していた当時、リモート会議の便利さが周知された一方で、その限界にも既に多くの人が気付き始めた時期でもありました。況してや、ものづくりのワークショップを遠隔で実施する事は、相当の準備が必要なのは明白。そのため、ファブラボ西播磨さんはその点にも十分フォーカスされ、準備を進められました。

まず、現地のサポートメンバーさんとの交流と教育です。Zoomを使った接続を想定していたため、西播磨さんはサポートメンバーの市職員さんへZoomの使用方法をレクチャーして頂きました。Zoomは参加者に応じて管理者権限を付与し、拡張機能を利用できるため、それら複雑な機能を活用するためにも必要でした。
次に、OTTOキットをまず先行して組み立ててもらい、その反応を確認するとともに、実際に組み立てを体験して頂きました。難易度を落としたOTTOの組み立てはかなり単純化されており、純正設計よりはスムーズに進みました。それでもやはり配線には苦労されたようです。
次に、ワークショップの会場設営です。豊岡市の市内会場は1つの施設内で、当日は十数名の子供達が参加することになっておりました。そこで感染対策のため、3つの部屋に会場を分けて各部屋4人前後のグループとし、それぞれリモート講師を割り当てて実施することになりました。講師だけでなく、拠点内でも会場が分割されるため、通信環境、レクチャー環境などを事前にチェックしました。幸い、現地のサポーメンバーさんが会議用のスピーカーマイクを準備してくださり、Wi-Fiについても事前の段取りを行って頂けたため、リモート環境の課題は概ね解消されました。また、必ず1室に1名以上のサポートメンバーが常時待機できる体制ををとって頂くことになりました。
今回のワークショップに参加する子供達のうち、希望者は自宅からの参加も可能とされていました。自宅参加を希望された方には、市のサポートメンバーさんらが中心となり、事前に1on1のZoomのレクチャーを行って頂きました。


これらの動きが事前に行われ、その際に吸い出された問題点は、キットや当日の説明書(OTTOおよびZoom)に反映されています。振り返ると、これらの下準備は、かなり効果的だったと言えます。
当日、神戸在住の私だけはファブラボ西播磨へ移動して参加することになりました。3チームにそれぞれ講師が1人つくような編成となりましたが、講師だけは1拠点に集まり、3つのアカウントで各担当会場へリモート接続することになりました。これにより、講師同士の連携だけはつかめるようにしました。(感染対策として、マスク着用と講師同士のディスタンスは確保する条件です。)

ワークショップ当日

このような準備の上で当日を迎えました。当日の行程は、西播磨さんが大まかに計画されており、「①組み立て」、「②プログラミング」、「③実技体験」の構成です。①では、メカの組立と電気配線。②では、Otto Blocklyを使ったブロックプログラミング。③は主に自由時間、プログラミングでもデコレーションでも好きなことしよう、といったものです。
殆どが大きな脱線は無く、計画通りに進められました。Zoomの操作も、スタッフ・リモート参加者含め概ね運営はスムーズでした。
それぞれの作業時間ごとに難易度が高い作業ポイントがあり、事前確認できていたこと、説明書が作り込まれていた事なども功を奏しました。

問題があったのはOTTOの技術面で、モーターや基板等の故障によるトラブルが数人の子供のキットで発生しました。キットは西播磨さんによって全数品質チェックを行った上で現地へ供給されたようですが、現地での発生を完全には防ぐことが出来なかったようです。現地におられるサポーメンバーさんは、先述の通りOTTOの組み立てを体験していたもののの、決して専門家ではありません。トラブル発生時にどのように原因調査し、対策をするかまでは流石に行えず、講師が遠隔で状況確認をする必要があり、解決に時間がかかりました。1人の参加者のペースが極端に落ちることで、グループ全体の進行に大きく影響してしまい、あまり自由時間がとれないグループもありました。
運営面の事前準備としてはかなり実施できていたと思いますが、OTTOをビギナーだけで組み立てるには、まだまだエンジニアリング面で改善の余地があるのかなとも感じました。

後日に市の方で確認していただいたアンケート結果を拝見すると、概ね好評であった結果と伺え、胸を撫で下ろしました。やはり、数あるオープンソース電子工作キットとの比較という観点ならOTTO完成度の高さは間違い無いですし、見た目のキュートさも好評だったのだと思います。ここまでハードルを下げて下さったファブラボ西播磨さんには感謝の気持ちで一杯です。

今後のOTTOの活用について

OTTOをつかったワークショップは、これ以後も国内で行われているようです。Official側も、Blocklyのアップデートを定期的に続けているようで、更に使いやすくなってきています。ファブラボ西播磨さんは、さらなる改良を続けておられ、西播磨版OTTOとしてスピンオフされるようです。

神戸としては、もちろん多拠点との協力体制をこれからも維持しつつ、子供が楽しめるようなワークショップをソフト面で追求していきたいと考えています。

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では、今回はこの辺で。おやすみなさい。。。。。

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