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アマゾンプライムお薦めビデオ③ 123 :俺たちの電エースに間違いはない!『電エース中野 大江戸温泉物語の謎』『電エース下関』

鬼才、というかバカの天才(もちろん誉め言葉!)、河崎実監督のライフワークとも言える「電エース」シリーズ。なかなか目にする機会はないが、アマゾンプライムビデオはそれを可能にしてくれる。

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今回紹介するのは、ある意味リブートというか「電エース」シリーズ新世代の作品、2015年公開の『電エース中野 大江戸温泉の謎』と『電エース下関』である。あれ、『電エース』は一度完結したんじゃないの、ファイナルと謳った作品があったんじゃないの、と思われるかもしれないが、ウルトラマンの次世代がウルトラマンタロウであるように、今回は電エースの次世代である「電エース太郎」の物語であり、『電エース』がもはやシリーズ化したこと、そしてシリーズ化した以上はもはや終わることはないことを暗に物語っている。さらには、『電エース中野 大江戸温泉の謎』では、当時はまだ知る人ぞ知る存在だった「純烈」を「悪列」として出しているところも憎い。売れている人を使うのはある意味簡単というか楽だが、あまり有名ではない人を使い、その人が後にブレイクするのも河崎監督の目の付け所というかキャスティングセンスのすごいところである。しかも舞台は「大江戸温泉物語」(このあたりのタイアップ能力も凄い!)、この手の温泉施設において人が求めるのは温泉だけではない。そこで行われるショーもその魅力の一つであり、それはいわゆる大衆演劇=チャンバラである。そしてチャンバラとは、大衆演劇とは分かりやすい娯楽としての正義と悪との闘いの世界であり、そこではいかにヒーローと悪役を輝かせることができるかが勝負なのである。そう、まさに『電エース』が、そしてすべての特撮ヒーローものがそうであるように。

そして、もう一方の『電エース下関』『電エース中野』に続く、いわゆるご当地映画だか(親戚関係かなんかの縁故というかコネがあった模様)、ここに出てくるのはなんと既に電三十二郎で河崎実監督演じる電一(はじめ)から数えると31人目の弟である。しかもこの間には妹たちもおり、なんという大家族なのか!(当時は大家族ものがテレビで流行りだったから?)ということになるが、実はこの映画、というかその数本前の電エース作品からクラウドファンディングを利用して撮影していたようで、どうやら、ここに出てくる兄弟たちはその出資者達(つまりは素人)のようである。そう、もはやファンは見るだけでは飽き足らず、この世界に入りたいのである。そしてそれが実現できてしまう、その敷居の低さ(これも誉め言葉!)も『電エース』シリーズの魅力である。

しかし、「電エース」は決してワンパターンではないという点もここで強調しておきたい。常に何らかの新しさがある。河崎監督の作品には当時、世間を騒がせた時事ネタが入っていたりすることも多いが(つまり河崎作品を見ると時代が分かる!)、この、『電エース下関』では、なんと変身の仕方が、今までとは一味違っている。今までの『電エース』シリーズはひと仕事後のビールだったり女性関係だったりなどの「気持ちいい」、つまりは何らかの達成感がその変身の合図となっていたのだが、今回はなんと、「ダンスが気持ちいい」「ダンスで音楽に合わせて体を動かすと気持ちいい」といういわゆる自己満足だけで変身できるのである。自己満足、そう、ある意味自慰行為である。しかし、それでいいのである。それが気持ちよければ誰がそれを非難できるのだろうか。

恐らく、河崎監督自身にとってはこの『電エース』シリーズこそが「気持ちいい」ものなのだろう。だからライフワーク的に続けられるのだろう。しかし、それが自慰行為であったとしても決して自己満足で終わらせないところがこの人のすごいところである。あくまでエンターテイメントであり、常に見る人、お客さんを意識している(そう、まさに大衆演劇におけるチャンバラのように!)。あのエヴァの庵野監督と特撮オタク出身という点では何の変りもない河崎監督だが(なのになぜこうも世間の評価は違うのか!)、庵野監督が「シン・エヴァンゲリオン」でようやくたどり着いた暗黒の無限ループを抜けた開かれた世界に、河崎監督はもう、既にスタート時点からたどり着いていたのである!

ちなみにおまけとして、こちらの知る人ぞ知る河崎実監督作品(というかすべての作品が「知る人ぞ知る」なのであるが)もお薦めです!アマゾンプライムビデオで見られるうちに、是非!これらの作品もその超絶なキャスティングとその演技に驚かされるはずです。


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