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アマゾンプライムお薦めビデオ③ 132 :日本版アメリカンニューシネマ、つまりはジャパニーズニューシネマ! 神代辰巳監督作品『宵待草』

今回ご紹介する映画はこちら。下の案内画面には「カルト映画」などと書かれていますが、「隠れた名作」と言った方がいいでしょう。1974年の日活作品『宵待草』です。

ポスターは何ともさわやかですが、実際の映画は全然さわやかではありません。当時の日活は既にロマンポルノ路線に入っており、神代辰巳監督はその路線で活躍していた監督です。ただ、日活も神代監督もロマンポルノばかりやっていたのでもなく、ときどき思い出したように一般映画も制作します。これもその一作です。

タイトルからも想像つく通り、舞台は大正時代です。が、いわゆる大正ロマンとは程遠いアナーキストたちの話です。この映画が公開された当時の学生運動(74年にはもう衰退がはじまっていたが)とアナーキストたちが活動(地下活動)すると同時に権力側からの迫害も受けていた時代をうまくリンクさせています。つまりこの映画は敢えて大正時代という過去を舞台にすることにより、現代(当時の現代)の若者の閉塞感、行き詰まり感を描いた作品です。そして見事にそれに成功しています。

さて、この映画、60年代末から70年代初めにかけてアメリカで勃発した、いわゆる「アメリカンニューシネマ」の影響を色濃く受けているのは間違いないでしょう。一言でいうと、若者ならではの刹那的な衝動(性的にも、また暴力的にも)をストレートに描くとともに、最後も決してハッピーエンドでもない、というような一連の映画です。また、画面自体にも、いかにもハリウッドといった豪華セットではなく、むしろロードムービーものに代表されるような実際の街やそこに生きる人々が映されます(「イージーライダー」なんかがその代表作です)。そしてそのような若者たちの「リアル」は、日本ではロマンポルノと相性が良かったのでしょう。事実、日活ロマンポルノは神代辰巳・曾根中生・村川透・根岸吉太郎・長谷川和彦・石井隆らの天才、鬼才監督を誕生させています。彼らの作品群は日本版アメリカンニューシネマ=ジャパニーズニューシネマと言えるでしょう。

なお、神代辰巳監督は、ショーケンこと萩原健一氏と桃井かおり氏と組み、同じ1974年に東宝で『青春の蹉跌』という作品も撮っており、こちらは同年のキネ旬の日本映画第4位を記録していたりもします。まだ未見の映画ですが、いずれアマゾンプライムビデオで観られるようになることを強く期待しています。


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