見出し画像

62. ジャッキー・マクリーン、この人が参加していれば間違いない!:ソロ名義でのアルバム『Jackie's Bag』(1960)『Demon's Dance』(1970)及び、リー・モーガンの傑作アルバム『Charisma』(1969)

今回は久々に正統派ジャズのアルバムを何枚か紹介したい。「正統派ジャズ」といっても何が「正統派」なのかは人によってそれぞれだが、名サックスプレーヤーであるジャッキー・マクリーンが参加している一連の作品は、そのすべてが私にとっては「正統派ジャズ」である。よく人に「ジャズって難しいんでしょ?」とか「何がお薦めなの?何から聴けばいいの?」と聞かれるが、その度に「演奏メンバーの中にジャッキー・マクリーン(Jackie McLean)という名前が入っていたら、外れはないよ」と答えることにしている。とにかくこの人、本人名義でのアルバムも多いが、それ以上に二十歳そこそこの頃から、ソニー・ロリンズ、アート・ブレイキー、マイルス・デイヴィス、チャールズ・ミンガス、ソニー・クラーク等、多くのレジェンドジャズミュージシャンのアルバムに参加し、存在感を放っていたまさに「天才」である。

しかし、どの道でもそうだが、20代のころはやはり周りの先輩方に揉まれる時期で、本領を発揮するのは30-40代の時期であろう。そしてその意味で、1960年に発表された『Jackie's Bag』はまさに「俺がジャッキー・マクリーンだ!」とその名を売った一枚であると言えよう。1931年生まれということなので録音されたときはまだ30歳には達していないが、それまでに前述のレジェンドたちに揉まれた成果がここでは見事に発揮されている。その前年の1959年にはマイルスが、かの『カインド・オブ・ブルー』を発表しているので、時代はコードからモードに移ったとも言えるが、それはやはりマイルスを中心にジャズ史を捉えた場合であり、やはり正統派はまだまだこちら、ジャッキー側であった。しかし/そして、もちろんそこにはそれ以前のビバップもハードビバップも超えた新しさがある。そう、それは一言で言えば「クール」である。マイルスがモードによりクールを表現したのであれば、ジャッキーはあくまでそれまでのジャズの流れにこだわりながらもクールを目指したと言えよう。

その後も、ソロアルバムや他のジャズミュージシャンのアルバムに主要メンバー(つまりはバンドメンバーの一員)として参加していたジャッキーだが、一時は音楽活動を離れ教職についていた時期もあったらしい。その音楽活動を離れる前か戻ってきた後かははっきりしないが(このあたり、是非皆様の見識をお聞かせいただきたい)、『Jackie's Bag』から10年経って発表された『Demon's Dance』も個人的にはお気に入りの一枚である(もちろんこの間にも本人メイン名義でのアルバムは発表している)。このアルバム、ジャケット的、及びタイトル的には多少おどろおどろしいが、中身はこれもいわゆる「正統派」のジャズアルバムである。このジャケットやタイトルも『Jackie's Bag』の時と同様、前年の1969年発表のマイルスの伝説的アルバム『ビッチェズ・ブリュー』の影響を受けていることは間違いない。が、ジャッキー自身が意識していたかどうかは定かではないが、マイルスのやろうとしていることは、いわゆる「正統派」ジャズの中でもまだまだできる、ということをジャッキーは訴えたかったのではないだろうか。マイルスがエレクトロニック方向に進むのであれば、俺たちは旧来のアコースティックジャズのままで新しい道を行く、という意気込みである。そしてそれにはその前年発表のリー・モーガンの傑作アルバム『カリスマ』(1969年発売、1966年録音)からの影響もあるだろう。リー・モーガン、ジャッキー・マクリーン、そしてハンク・モブリーという豪華3管メンバーによるこのアルバム(名義的にはリー・モーガンのソロアルバムだが、この3名を中心としたスーパーバンドと言っていいであろう。ちなみにこのメンバーでは全3作発表しており、本作がそのラスト作品である)だが、今となっては(というか当時でもすでに)クラシックとなっていた「これぞジャズ!」という音を聞かせてくれる。そして結果としては今でもこれこそが「これぞジャズ!」なのである。そう、「クラシック」とは決して「古い」のではなく、永遠に歴史に残る「古典」なのである。

https://amzn.to/4cTXDZa



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?