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アマゾンプライムお薦めビデオ③ 102:伊藤沙莉の魅力爆発!でもそれだけじゃない映画『獣道』

今回お薦めする映画はこちら、伊藤沙莉主演、内田英治監督の2021年の作品『獣道』です。

この映画、はっきり言って上のタイトルの写真で損しています。これでは「ヤンキー映画」?と思われてしまうでしょう。しかしそうではありません。これは愛の映画であり、青春の映画であり、今の日本社会についての映画です!

この映画、実際にモデルになった人がいるとのことですが、まさに今の日本社会、表には出ることはないが裏では実際に、しかも根深く存在している日本社会のひずみやゆがみを描いています。しかし、それを正面切ってシリアスに取り上げるのではなく、一歩引いて、描いているのがいい!そしてそれを体現しているのが伊藤沙莉という女優です。まさに七変化というか、純粋(そうな)中学生から、ヤンキー娘にキャバクラ嬢、さてはAV女優までと恐ろしく幅の広い演技を見せます(しかしこの映画においてAV女優は落ちていく先ではなくむしろ登っていく先です!)。そしてそれがそれぞれはバラバラであってもやはり一人の女性なのです。つまり、表面的には変わっても中身は一つなんだ、と言うことをまさに身を持って伊藤沙莉は示しています。そしてそれこそがまさに「女優」であり「俳優」という存在なのでしょう。女優や俳優はいろいろな役を演じます。しかしそこにはあくまでその女優、俳優としての同一性があります。だから人はその役を好きになると同時に、その俳優を好きになるのです。そこがいわゆる「アイドル」とは違うところです。「アイドル」は常に「アイドル」という存在であるからこそ「アイドル」なのです(そしてそれ故に「凄い」のです)。一方、女優は、俳優は違います。むしろ常に違う存在であるからこその女優であり俳優なのです。しかし、いろいろな役を演じていても、あるいは演じるからこそ、人はその女優や俳優というものを一人の人として認識します。そう、人にはいろいろな側面があり、だからこその「人」なのです。その意味で「アイドル」を直訳すると「偶像」となるのにも意味があるでしょう。一方、女優は、俳優は決して「偶像」ではなく、「人間」なのです。女優の魅力、俳優の魅力はその「人間力」にあると言ってもいいでしょう。だからこそ、アイドルを卒業後に女優、俳優の道を目指す人は多いわけです。

と、伊藤沙莉を絶賛しましましたが、実はこの映画は、本当の主役=視点の中心は伊藤沙莉というよりも亮太役の須賀健太です。子役出身の須賀健太ですが、今後、大人の俳優としての活躍が期待できます。先の言い方に倣えばあくまで子役は「アイドル」です。しかし俳優になるのであれば、やはり役の幅を広げる必要があります。そして見事にそれに成功しています。

と、主役二人を絶賛したのであれば、当然監督についても触れなければいけないでしょう。監督はこの後、あの『ミッドナイトスワン』を撮ることになる内田英治氏です。割と多作ないわゆる職業監督ではありますが、怪作(というか奇作)『グレイトフルデッド』をはじめ、ここぞというときにここぞという作品を出してくれる監督でもあったりします。本作も、その「ここぞ」という一本です。是非ご覧ください。


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