14. 楽器としての声:フィロソフィのダンスの『愛の哲学』
今回お薦めするのは久々のアイドル!フィロソフィのダンスの『愛の哲学』です。
あの鬼才、ホドロフスキー監督の傑作映画『リアリティのダンス』が名前の由来になっているアイドルグループ「フィロソフィのダンス」の存在は知っていました。また、アイドルらしからぬ、というかアイドルだからこそのファンクディスコ路線をやっていることも知っていました。しかし、しっかりと聞いたことはなかったのですが、この度メジャーレーベルからは初のアルバムとなる『愛の哲学』が発売されたので聞いてみました。
結論から言うと最高です!アイドルがファンクというと、「LOVEマシーン」に代表されるいわゆるハロプロファンクが有名ですが、ハロプロファンクがアイドルがファンクをやるというギャップをいわゆるコメディ的に(ファンクというよりファンキーに)演出しているのに対して、フィロソフィのダンスは確かにアイドル的要素もありますが、より本格的です。特にメインボーカルである日向ハル氏は本格ロックバンド、本格ファンクバンドで十分にやっていけるでしょう。しかし、彼女らはアイドルである道を選んだのです。そこがすごい。アイドルとはつまりはスターです。当然音楽だけではなくダンス等も含むビジュアルも大切です。つまりよりハードルが高いわけです。敢えてその道、より厳しい道に進むこと自体がかっこいい!
ということで本来「フィロソフィのダンス」の曲目はアルバムというよりは映像向きなのですが、敢えてアルバムで音だけを聞くと、メンバー4人の個性がしっかりと声でも提示されていることに気づかされます。先にも述べた日向ハル氏はもちろんですが、他の3名の声にもそれぞれ特徴があり、そのフォーメーションにしびれます。ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムスを抱えていた頃のマイルス・ディビスの黄金のクインテットのよう、と言えば言いすぎでしょうか。当然マイルスのソロは最高ですが、ウェインが前に出てきても、ハービーが前面に出てきても、そして機会としては少ないですがロンやトニーが前にでてきても、ファンは「待ってました!」となります。当然、マイルスクインテット場合はそれぞれ担当楽器が違うのでその「音」が違うのですが、フィロソフィのダンスの場合は全員がボーカルです。しかも同じような年代の女性たちですから、本来そんなに差は出ないはずでしょう。にもかかわらず、彼女たちはしっかり声、歌い方を含む声で変化を付けてきます。まさに声が彼女たちの楽器であり武器であると言えるでしょう。そしてそれは当然姿かたちも美しい楽器です。
ということでアイドルのアルバムを超えたアルバム、しかしそれでもあくまでアイドルのアルバムとして『愛の哲学』は最高の完成度です。是非お聴きください!
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