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今年もやられた!「SANRIO Virtual Festival 2023」でのキヌのパフォーマンス

1月23(土)、24(日)の2日に渡り開催された「SANRIO Virtual Festival 2023」ですが、すべての面で前回のフェスの感動を更新してきました。昨年の記事にも書きましたが、このようなバーチャルフェスをサンリオという会社がやってしまうことが凄い!ここまでくるともはやフェスという形での開催ではなく、バーチャル上のピューロランドをいつでもアクセスできる常設会場としてしまい、そこで常設イベントと特別イベントを開催するという形にしては、という夢と希望さえ出てきます。もちろんこのクオリティーですから、実際のピューロランドとほぼ変わらない料金設定でも行けるでしょう。個人的には年間パスポートを購入したいくらいです。

さて、今年は出演者のほぼすべてがバーチャル空間であることを意識したライブを行ってくれましたが、中でも注目したいのはやはり去年に引き続き「キヌ」です。恐らく彼(彼女?)が、今後のバーチャルアーティストによるバーチャルライブのスタイルをけん引していくでしょう。事実、去年の彼のパフォーマンスが今年のバーチャルフェス全体の構成にも大きく影響して(反映されて)いました。そしてそのスタイルとは一言で言うと、アーティストのパフォーマンスに加え、空間の演出、空間の変化を楽しむというスタイルです。こればかりは体験してもらわなければ言葉では何とも説明できないのですが、こちらのご存じmogura VRさんの記事が参考になるでしょう。

このような、その場自体を変えてしまう、その空間自体を変えてしまうという演出は現実の世界ではやはり限界があり(しかし、今後AR技術がより普及し、コンサートなどにおいても一般化すればまた話は別ですが)、VRならではのものです。いわゆるメタバースとよばれるものが、単なる「もう一つの世界」、この現実世界のある意味コピー(いわゆる「デジタルツイン構想」はその方向での発想と言えます)に過ぎなければ、それはそれで意味も需要もあるでしょうが、面白みには欠けます。メタバースはやはり、「もう一つの世界」というよりも「別世界」であった方が面白いです。言い換えればファンタジーの世界、魔法の世界です。この世界ではあり得ないことがそこでは起こるしそこではできる。それをエンターテイメントを通して体感させてくれたのが、今回の「SANRIO Virtual Festival 2023」であり、キヌに代表されるバーチャルアーティストたちのパフォーマンスです。

そしてここでいうアーティストにはいわゆる「ワールド」の製作者も当然含まれます。アーティストとしての「キヌ」自体は一人かもしれませんが、クレジットを見る限り、VR上での活動はチームで行っているようです。今後は「あのアーティストのステージを見に行こう」と同じレベルで「あのアーティストが作ったステージ=ワールドを見に行こう」という人もより増えてくるでしょうし、その制作者を目指す人も増えてくるでしょう。当然そこには技術力が必要で、より良い技術にはお金もかかりますが、そこで大切なのはやはり「想像力」です。あり得ない世界、ファンタジーの世界、魔法の世界。今まで人はその世界を小説や漫画やアニメやゲームで想像し、創造してきました。そして今やそこにVRワールドというものが加わったことになります。そしてそこにはまさに人が「入れる」のです。マンガやアニメやゲームを見れば明らかですが、それは今後商業化されることにより、即ちお金とつながることにより、ますます発展し、広がっていくことになるでしょう。しかし、VR空間はまだその商業化される前の熱というか、お金というよりも好きなことを好きだからしているんだよね、という初期衝動の熱に満ちています。例えて言えばコミケのような世界であり、空間です。そして、だからこそ面白いのです。

と考えると、このイベント、サンリオという会社が行った意味と今後の可能性というようなものも見えてくる気がします。会社である以上、利益を出さなければやっていけませんが、サンリオはまさに「ファンタジー」の会社です。そしてサンリオのビジネススタイルはどちらかというと商業的というよりもコミケ的です(キャラがキャラを生み、さらに何次的にも創作されるという意味で)。ただ、今まではそこでの商品でありスターはハローキティに代表される作家のいないキャラクターたちでした。正確に言えば作家というかデザイナーはいるでしょうが、作家の存在が前面に出てくると、こんどはそのキャラクターがキャラクターとして生きた存在としては見づらくなる、捉えづらくなるからです。そこにサンリオのある種の特殊性というか独自性があったのですが、しかし、キャラクターではなく「世界=ワールド」を、しかもファンタジーとしてのワールドを提供する、むしろそちらの方がメインとなるとなれば今度はどうでしょうか。そうなるとその世界ではそこの世界に存在するすべてのものがある意味キャラクター(=スター)になれるのです。そこに製作者はいるか、そこにいわゆる中の人はいるか、などはそこではあまり問われることはありません。例えば私たちは「キヌ」を「キヌ」(=キャラクター)というアーティストとして見ているのであって、「キヌ」の製作者やいわゆる「中の人」を見ているのではありません(というかその存在すら気にならないというか問題とはならなくなると言った方がいいいでしょうか)。事実、「SANRIO Virtual Festival 2023」を見に来ていた人たちは、VRチャットという空間での文化とさらにはサンリオ主催のイベントということも相まって(アバター付きの前売りチケットを買った人は元となるアバターの形態は限定されますが、サンリオキャラの着ぐるみが着れる仕掛けとなっていました)、全員それぞれがいわゆる「キャラ」の立った人たちでした。

ということで書き始めたらサンリオの企業論的なところにまで話が言ってしまいましたが、とにかく最高のイベントでした。次回の開催も楽しみにしています!


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