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SF名作を読もう!(5) 『惑星ソラリス』

SFとは科学を扱う作品であると定義すれば、当然科学には「生物学」も含まれる。

ということで、そして今回紹介するのはタルコフスキー監督による映画版も映画史における傑作の一つとしてあげられる「惑星ソラリス』です。

ここまで有名な作品であれば、ここまで行っても決してネタバレではないでしょうが、このソラリスという惑星、それ自体が一つの生命体です。しかし、生命体といっても、人間のように言葉を話すわけではありません。ただ、ある方法でその惑星を観測している人間にコンタクトを取ってくるというか干渉はしてきます。それに対して人間はただただ混乱することしかできないのだが、、、というのが基本的なストーリーです。

ここまで来るともうSFというよりも文学と言っていいてしょう。訳の分からない存在、圧倒的な他者に対してどう対応していいのか分からなくてもがくというのは文学におけるメインテーマの一つであります。文学という言い方が科学的でないのであれば、哲学と言ってもいいかもしれません。人は他者を通して自己を認識します。しかしその他者が捉えどころのないものであれば、自分自身も捉えどころのないものとなってしまいます。自我の崩壊や混乱、という言葉を使ってもいいでしょう。あるいはサルトル的には「実存」という言い方をしてもいいでしょう。『惑星ソラリス』はまさにその「実存」を扱った「科学」の小説であり、その意味でSF小説です。

そして同時にこの作品は「愛」についての作品でもあります。先ほども言ったようにSF小説とは基本的に「科学的」な小説です。よって科学で解決ができない「愛」についてはストーリ展開上での要素とはなり得ても主題とはなかなかなり得ません。しかし、この小説ではそれが実現されています。奇跡のように美しく、そしてそれ故に儚い小説であると言えるでしょう。

タルコフスキー監督の映画(本当に美しい名作です。宇宙の話なのに宇宙の場面がないというとんでもSF映画でもあります)とも合わせて、是非お読みください。




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