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アマゾンプライムお薦めビデオ④ 154:旧作アニメシリーズと原作漫画をつなげてくれたことに感謝!アニメ『うる星やつら』(2022-2024版)

2022年10月に始まった新生『うる星やつら』アニメシリーズがとうとう終わってしまった。前作アニメシリーズでは描かれることがなかった(その後『うる星やつら 完結編』として映像化はされたが)かの「ボーイミーツガール」まで描き切ってくれて、ファンとしては感謝の想いしかない、と同時にこれで終わってしまうのがなんとも寂しいというか切ない限りである。そう、「終わらない日常」これこそが宮台真司氏の言葉を借りるまでもなく、オリジナルのマンガ版、旧アニメ版における「うる星やつら」の基本コンセプトであったのだから。

その「終わらない日常」を見事に作品に昇華したのが押井守版の「うる星やつら」である『ビューティフル・ドリーマー』なのであるが、原作者の高橋留美子先生はあまりお気には召さなかったらしい(ファンは大いにお気に召したが)。であれば、記憶喪失装置というギミックを取り入れることで終わらない日常に終わりを付けようとしたのかどうかは分からないが、とにかく「終わる」ことを前提で、しかし結果としては「終わらない」話をちょうどコミック1冊分という形で描いたのが名作にして傑作である「ボーイミーツガール」編である。そして、今回の新作アニメシリーズでもそれを描き切ることによって、終わることと終らないことの感動、というか心の震えを我々に与えてくれた。アニメシリーズとしては確かに終わるかもしれないが、しかし『うる星(ほし)』こと『うる星やつら』は我々の脳内では、永遠に終わらないのである。

思えば本作(=新作アニメシリーズ)は、敢えて漫画原作に忠実に描くことで、ある意味では行き過ぎた前アニメシリーズを方向修正、というか元に戻したものであるとも言える。かの千葉茂氏演じるアニメオリジナルキャラクター、マンガ版ではあたるのクラスメートの一人にしか過ぎなかった「メガネ」をフューチャーすることは決してなかった。それはそれで残念なのだが、しかし、だからと言って旧アニメ版との接点がないわけではない。アニメを見るとき、我々はその「声」を強く意識している。今回、諸星あたる役を演じた神谷浩史氏も、ラム役の上坂すみれ氏も忠実に我々ファンの思う「あの声」を再現してくれた。さらに言えば面堂終太郎、三宅しのぶ、藤波竜之介、龍之介の父、錯乱坊(チェリー)、サクラ、テン、弁天、おユキ、ラン、といった主要キャラたちも皆そうである。そう、これは単なる続編でもリブートでもなく、まさに我々の「終わらない日常」を掘り起こしてくれた作品なのである。これを見ると、いまや立派なオジサンである私であっても、あの頃、あの中高生の頃に戻れるし、事実、戻れたのである。そして、それこそがまさに「終わらない日常」なのである。あの頃の日常は決して終わっていない、日々の日常の積み重ねこそが「終わらない日常」であることに改めて気づかされる。中二病とはよく言ったものである。我々はあのころの、中二の頃の気持ちをいくつになっても持っている。それは決してノスタルジーではない。現在も進行中の「日常」であり、今後も続く「日常」なのである。




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