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SF名作を読もう!(18)『ユービック』

このマガジンも18回目となるが、フィリップ・K・ディックを紹介していなかったことに改めて気づきました。

ということで今回紹介したい作品はフィリップ・K・ディックとはこういう作家だという面で入門編とでもいえるような作品『ユービック』です。

「目くるめく」という表現がSF小説においてはよく使われますが、この『ユービック』そしてディックの小説は「目くるめく」というよりも「めまいがする」という感覚が近いでしょう。一言で言えば「現実とはなにか」「あなたが現実と思っていることは本当に現実なのか」というのが彼の作品の中にはあると思います。よく言われているように彼自身のドラック経験がそこにはあるのでしょうが、結局、我々が現実と捉えている「認識」というのはあるひとつの次元で見ている「認識」に過ぎず、その次元自体がそもそもどうなのか、というのが彼の問いであり、彼の作家としての原動力になっていると思います。

そしてこの問題意識は、SFというジャンル自体の問題意識であるとも言えます。SFというものは現実ではない世界と現実(と我々が考えている世界)とのずれや遭遇や摩擦を描くものだからです。その意味でディックはSF作家になるべくしてSF作家になったと言えるでしょう。

ちなみにこの作品ですが、映画化も企画されており、それをもとにした『ユービック:スクリーンプレイ』という作品もあるそうです。

ただ、この映画化自体は頓挫して、この『ユービック:スクリーンプレイ』もあまり評価は高くはありません。でも、我々SFファンは小説を読むことで自分の頭の中に映像を、映画を描くことができます。そしてそれぞれ読む人によってその映像は違うでしょう。特にSFというジャンルでは。

ということでこの本はまずは原作小説で読むことをお勧めします。そしてそれをどのように脳内で映像化するかはあなた次第です。


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