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34. 終わりの始まりと始まりの始まり。ビートルズの『アビイ・ロード』と『レット・イット・ビー』

さて、このところビートルズに関してあれこれ書いてきたが、これで一区切りとしたい。最後に紹介するのはもちろん『レット・イット・ビー』と『アビイ・ロード』の2枚である。

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前回ビートルズの集大成として紹介したいわゆる『ホワイトアルバム』の発表後、いろいろとありメンバー内での不和が表面化したことは確かに歴史的な事実ではあろう。そのあたりは最近再編集され8時間にもわたるドキュメンタリーとなった『Get Back』で描かれているようだが、筆者はまだ見ていない。とにかくその映画撮影の間に行われていたのが(というか映画制作とアルバム制作を同時進行的に行おうとした試みだったと言える)アルバム『レット・イット・ビー』に向けて行われたいわゆる「ゲットバックセッション」であり、あの有名なルーフトップコンサートもこの映画の一環として行われた。一方の『アビイ・ロード』は発売こそは先だが、録音自体は「ゲットバックセッション」の後に行われている。

と、なぜこのようなことを書いたのかと言うと、「ゲットバック」「レット・イット・ビー」「ロングアンドウインディングロード」とシングルとしては名曲(有名な曲)が入っているが(個人的にはジョージ作の「アイ・ミー・マイン」がお薦め)、アルバムとしては解散したので残っていた音源を取り集めました的な感が否めない『レット・イット・ビー』は、やはりごたごたした時期に作られていたものであり、しかし、一方その後で『アビイ・ロード』のような17曲入りの名盤をつくれるような力とモチベーションをビートルズはしっかり持っていたということを確認したかったからである(これで最後の一枚としよう、だからこそ納得のいくものにしよう、という強い思いがメンバーの中にあったが故かもしれないが)。

そしてこの『アビイ・ロード』、特に前半=A面はそれまでの明るいポップバンドとしてのビートルズとはまた一味違うダークでハードな色合いも持っているアルバムである。1曲目である「Come Together」もブルース的な色合いが濃いし、その後も全体的にマイナー音階でのスローな曲が多い(あるいは曲中にその要素が含まれている)。中でも7分47秒という当時のポップソングとしては常識外の時間を持つ「I Want You(She’s She’ so Heavy)」はもはやプログレの域に達している(と思えばもちろん「Here Comes The Sun」のような明るく優しい曲もあるが)。そして後半=B面に入るとこんどはジャンルレスというかジャンルミックスというか様々な音楽要素が様々な形で展開される。そしてもはや曲という単位などどうでもいい、このアルバムを音として音楽として聴いてほしい、という意味なのか、最後の方は1曲1分半程度の長さの曲が次々と展開されるという圧巻の展開となる。まさにこれが最後なのだから持っているものをすべて出そう、というところなのだろう。しかしここにこそ、希望と可能性を感じるのもまた事実である。ビートルズというバンドがなくなっても、それぞれの個人がそれぞれに活動し、また融合することもあるだろうという可能性である。ジョンの死によってその可能性はなくなったのだが、しかし、このアルバムがあることで、我々はそのあるかもしれなかった世界というこれもある意味現実の世界に生きることができるのである。過去のある時点で、その可能性があり、その可能性が何らかの残されていれば、我々が生きているその後の世界はその可能性の世界の一部なのである。


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