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SF名作を読もう!(4) 『デューン 砂の惑星』

もうすぐ ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による映画が公開される『デューン 砂の惑星』ですが、今日紹介するのは全3巻に渡るその小説版です。

このシリーズでは有名なSF小説を紹介すると同時に、「SFとは?」「SF小説とは?」について考えていますが(というか途中から必然的にこのテーマを考えざるを得なくなりましたが)、この小説に対する最初の印象はSFというよりもファンタジーではないか、というのが正直なところでした。この二つの違いは前者があくまで「科学」に基づくものであるのに対し、後者は想像的な要素が強いという点にあります。

しかし途中からこれもやはりSFだな、と思うようになりました。その理由は、この小説はタイトル通り砂に覆われた惑星が舞台ですが、そこでの生活やそこで使われている道具が十分に「科学的」に説明されているからです。ファンタジーは基本的に「魔法」で全てが片付いてしまいますが、SFはそうではありません。そこには「科学」が、「理屈」がなければなりません。逆に言えばそういううるさ方の読者を納得させるものがSFであるとも言えます。そしてもちろんそこにはエンターテイメント的な要素、読者の知的好奇心を満足させるだけでなく(それであればSF小説ではなく科学ルポルタージュで十分)、さらに読者を引き込む力がなければいけません。

そしてこの作品にはその「力」があります。それは神話的な力であり、その意味でもファンタジー的であるのですが、何度も繰り返すように「科学」がある神話であり、ファンタジーです。この小説はある意味おとぎ話的でもあります。しかし、おとぎ話だからこそ面白いし、人気があるのです。この作品は一言で言えば、選ばれた王子と、その母親(そしてこの母親自身も選ばれた人間であります)が、選ばれし者でありながらも、自分の力でも選びとっていく物語です。そしてそのおとぎ話の舞台となり、作品のタイトルである「砂の惑星」もまた魅力的です。ある意味この惑星自身がもう一つの主役であると言えるでしょう。SF小説一般に言えると思いますが、「惑星」は常に謎であると同時に可能性の象徴です。

ということで、人物と舞台とそこで用いられる様々な道具が神話と科学とおとぎ話を融合させる形で一体化した名作にして傑作、それがこの『砂の惑星』です。映画版も楽しみですが、その前後に是非お読みください。




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