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SF名作を読もう!(7) 『三体』

SF小説の名作を紹介しているこのNoteですが、今回紹介するのは2019年に日本語版が翻訳されたにもかかわらず、もはや「名作」という意味でのクラシックの枠にはいっている傑作SF『三体』です。

このNoteでは「SF」とは?というテーマでいろいろ考えてきましたが、「SFって?」と聞く人がいたら、「まずはこれを読んでみて」とこの『三体』を進めるのが正解でしょう。これぞSFであり、まさに王道SFであります。科学に基づく/科学についてのフィクション、科学に基づく/科学についてエンターテインメント、そして科学に基づく/科学についてドラマ、そのすべての要素がこの作品には入っています。そしてこの『三体』はこれに続く3部作の第一作目に過ぎず、ボリューム的に言えばいまだ5分の1の段階です。でも、すごいですし、もちろんこれだけ読んでも独立した作品として十分に楽しめます。

まあ、この『三体』を語る際には、現時点では「中国発の」という枕詞が付くことを避けることはできないでしょう。それはある種の意外性を示しています。しかし、今や「科学」の最先端はどこでしょうか。あのアーサー・C・クラークが『2010年宇宙の旅』において米ソを出し抜く国として描いていたように、もはや中国は科学の国です。しかし、この『三体』はそのような今の中国を描いているだけではなく、過去の中国もしっかりと描いています。具体的にはある意味黒歴史とされている文化大革命の時代です。その時代を知っているものが今の中国を見れば、これもSFのテーマの一つであるタイムトリップ感を感じざるを得ないでしょう。しかし、現実に一世代のうちに中国はそれを行ってきたのです。タイムマシーンを使うまでもなく、タイプスリップ的な大きな変化を体験してきたのです。

恐らく、もう数年もすれば「中国発の」という枕詞で『三体』が語られることもなくなるでしょう。だからこそ、今読んでおく価値があるとも言えます。このnoteで紹介しているSF小説はすべて名作であり、その意味で時代を超えた古典(クラシック)でもありますが、クラシックが生まれた瞬間にそれを体験していた人はどれだけいるでしょうか。『三体』はその貴重な体験をわれわれに与えてくれる作品です。敢えて中身については触れませんので、是非、今のうちにお読みください!

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