見出し画像

アマゾンプライムお薦めビデオ④ 164:最高にして最良のご当地映画。映画『あまろっく』

私事ではあるが、現在この近くの地域に住んでいることもあり、電車の吊り広告でこの映画のことは知っていた。しかし、「住民票をここに置いているだけで地元愛(というか沿線愛)はそれほどないので、映画館で見るほどのものではないかな」と考えていた。しかし、結果から言えばそれは間違いであった。このエリアに住むことになったのも何かの縁、であれば、この映画を劇場公開時に拝見していなかったのはもったいないし情けない。

まあ、この映画、ざっと言ってしまえばいわゆるご当地ムービーである。しかし、出演している役者陣は超一流である。以前もどこかで書いたが、この人が出ている映画は間違いない、という笑福亭鶴瓶師匠がでているし、そして今や鶴瓶師匠同様、この人が出ていれば間違いないという、江口のりこ氏も出ている。両者とも、この映画ではいわゆる期待されるキャラクターを演じているが、だからこそ当たり前に良い。鶴瓶師匠は鶴瓶師匠だし、江口のりこ氏は江口のりこ氏である。ある意味、役柄というかキャラを決めつけられるのは役者にとっては不愉快なことかもしれない。しかし、この両者は期待された役柄をしっかりと演じきっている。ベタと言えばベタかもしれない。しかしそれが「尼崎」というこの映画の舞台ともぴったり合っているのである。尼崎とは確かにベタな街かもしれない。しかしそれでもそこに生きる人にはそれぞれのドラマがあるのである。

一方、ベタではなく、ある意味意外な役どころを演じてくれたのが中条あやみ氏である。二十歳という設定は多少無理があるかもしれないが、しかし、鶴瓶師匠や江口のりこ氏との年齢差はやはり大きく、その意味で女優として、そして映画として成功している。実際、関西出身の彼女であるが、ここでは見事に関西の女性を演じきっている。関西の女性となると何歳までが女子で何歳からがおばちゃんになるのか、というのがよく話題にされるが、基本、関西の女性(もちろん全員ではない)はいい意味で実際若い時からおばちゃんなのである(というかいい意味でのおばちゃん気質を持っている)。ここでいう「おばちゃん」とは思ったことを正直に口に出す人、と言う意味である。だからこそ、皆、関西のおばちゃんが好きだし、それに憧れるのである。中条氏は見事にそれを体現している。

そして、この映画、まあ、ご当地ものの特徴であるが、その土地の特徴と歴史をしっかりと描いてくれている。「あまロック」(この映画のタイトルではなく実際に存在するある施設)については私も勉強不足で知らなかったが、この映画をみて「なるほど」と思い知らされた。そしてこの映画を語る時に忘れてはいけないのが、やはり関西淡路大震災であろう。この映画ではそれを見事に描いてもいる。東日本大震災がまだ記憶に新しいこともあり、その話になると耳と心を閉ざしたい人もいるのに対し、阪神淡路大震災は、振り返るのにある程度の時間を得ることができている(もちろん、まだまだ生々しくPTSDを抱えている人はいるであろうが)。つまり、我々は関東淡路大震災を語ることによって、今後起こるであろう、さらなる震災や自然災害に対しメッセージを送ることができるのである。そして、この映画はまさにそのメッセージである。生きるか死ぬか、それはまさに運でしかない。であれば生き残った者はその人生に起こることをなんでも前向きに楽しんでいかなければならない。それが亡くなった人に対する感謝であり、追悼である。あなたの死から私はこれを学びました。だから生を楽しみます。それは決して不謹慎なことではない。それは死者に対する感謝であり、また死者ができなかったことを死者の代わりにするという意味で追悼なのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?