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アマゾンプライムお薦めビデオ③ 124 :「不思議惑星」という名の不思議で魅惑的な映画!『不思議惑星 キン・ザ・ザ』

今回ご紹介する映画はこちら。ソビエト時代の映画と言うこともあり日本では幻の作品とさえ呼ばれていた『不思議惑星 キン・ザ・ザ』です。これがお手軽に自宅のテレビで見れる時代になったとは!

タイトル通り、SFものと言えばSFものだが、同じソビエト時代のSF映画の名作『惑星ソラリス』同様、宇宙自体は画面にはでてこない。それゆえ日本では、というか世界の映画史的にもほぼ同時期に公開された『スターウォーズ』の陰に隠れてしまっているが、このことは、別に宇宙を映さなくても別惑星の話は描けるということを、CGのない時代に証明してしまっているとも言える。また、この映画、コメディーと言えばコメディーとも言えるが、むしろその作風はコメディーというよりも風刺であろう。当然この映画から当時のソビエト体制への批判や皮肉も読みろうと思えば読み取ることもできるが、むしろそれは考えすぎなのかもしれない(事実、ソビエトの検閲を抜けて公開され、ソビエトでは大ヒットしたのだから)。この映画が風刺していりるのは、社会や体制というよりも、人間そのものと言える。宇宙人も含む人間そのものの愚かさや可笑しさ、そしてそれ故の愛らしさ。これがこの映画のなんとも言えない魅力となっている。

そしてこの映画、なんと言ってもタルコフスキーの『惑星ソラリス』同様、絵が(画が)美しい。映像が美しい、奇妙な宇宙船や奇妙な異星人も含めて、みな美しいのである。当時のソビエトの映画技術と監督のゲオルギー・ダネリヤは、フィルム撮影という技術がほぼなくなってしまった今こそ再評価されてしかるべきであろう。そこにはフィルムだからこそ出せる美しさがあり、しかも、それはハリウッドと接触することなく、ソビエト独自に発達してきた技術であり美学である。

さらには、この映画、単に映像が美しいだけではなく、そしてそこに皮肉が混ざっているだけでもなく、タイトル通りなんとも不思議であり、またなんとも魅惑的である。そう、惑星とは魅惑的な星なのである。人を惑わす星なのである。魅惑とは決して楽しいだけではない、そこには不安もあるし、緊張もある。そう、そこにあるのが何か分からないからこそ、人はそこに魅惑を感じ、それに惹かれるのである。この映画、一応のストーリーはあるし、最後も「なるほど」という作りになっており、その意味では、決して難解な映画ではなく、むしろシンプルな映画である。しかしそれでもなおかつ、そこには「不思議」がある。映画の魅力はストーリーではない、ということはこのマガジンにおいて再三書いてきたことではあるが、この映画を見るとまさにそこに思い致らされる。「わけの分かる中にあるわけの分からなさ」この映画の場合、宇宙船のデザインであり、宇宙人の格好であり、彼らの話す言葉だったり、ということになるのだろうが、そのような分析をしていってもおそらく答えは見つからないだろう。そう、映画とは要素要素の集合体、結合体ではなく、映画という全体が全体としてそのままあるものであり、要素というものはその後から見る側の都合で取り出されるものに過ぎないのだから。

と、とにかくこの映画、一見ふざけたタイトルだったり設定だったりしますが、実は映画として素晴らしいものとなっています。是非、ご覧ください。

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