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アマゾンプライムお薦めビデオ③ 144:傑作!「ゴジラ」というレガシーの終わらない再誕(再生産ではない)!『ゴジラ-1.0』

この作品、既に映画館では見ており大きな拍手を送っていたのであるが、こんなに早くアマゾンプライムビデオで観ることができるとは思ってもいなかった。

とにかく凄い!ゴジラ作品は近年、ハリウッドでのモンスターバースシリーズ、日本では、あのエヴァの庵野秀明監督による『シン・ゴジラ』が記憶に新しいが、そのような状況の中でまた『シン・ゴジラ』とは別の角度から作られたこの『ゴジラ-1.0』は、これまでのゴジラ映画の集大成にして、山崎貴監督作品としてもその集大成であると言えよう。第96回アカデミー賞においてハリウッド映画と比べれば超低予算ながらも日本映画・アジア映画史上初の視覚効果賞を受賞したという実績はさておいても、とにかく映画として素晴らしい!一時は過剰演出が過ぎるとして低評価(というか、ある意味嘲笑された?)山崎貴監督においても、起死回生というか汚名返上の大傑作である!というか山崎監督においてはこれまでの作品はこのゴジラに至るまでの長く険しい道のりだったのだろう。

強いて言えば、ゴジラ映画はある意味ゴジラが主役であるべきなのに、今回はわき役に徹し、人間ドラマとなっている点が、唯一のマイナスポイントであろうか。もう少しゴジラを観たかった、恐竜としてのゴジラ,、さらに言えば恐竜の突然変異系のゴジラではなく怪獣としてのゴジラを観たかったしゴジラ側の事情も描いてもらいたかったというのが本音ではあるが(恐竜は基本的に動物であり、怪獣は動物とはまた別の何かとしての存在である)、それはさておいてもやはり映画としての完成度は高い。これは特撮というよりもVFX作品であるが、日本のVFXは特撮の流れの下にあるということを改めて確認させてもらった。そして演技、という点からは主役の神木隆之介氏はさすがの安定した、誰でも信頼できる演技力であるが、ここで注目したいのはヒロイン役の浜辺美波氏である。あの『シン・仮面ライダー』ではある意味棒演技が魅力だった彼女であるが(というかそれが演出だったのだろうが)、この間に大きく女優として成長している。なんせ、あの、安藤サクラ氏と対峙しても全く引けを取らないのだから。

さらにこの映画、他の俳優陣もいい。戦後を舞台にしているので、基本的に役者たちの顔や服が汚れているからだろうか、皆、いい貌(かお)をしている。以前もこのマガジンで書いたと思うが、例えば黒澤映画の傑作「七人の侍」は決して「七人のいい男」「七人のイケメン」ではない。これは多くのメジャー映画作品に言えることだが、いわゆる「スター俳優」を使う以上、どうしてもに映像に出てくる人たちは基本的にみな「美しい」人たちである。もちろん我々はそのような「美しい」スターを見にいくわけであるが、しかし、それ故にリアルさを欠いてしまうという欠点もある。「いやいや分かるけど、こんなに美し人ばかりというのはありえないでしょ」というあの感覚である。しかしこの作品では「汚す」という手を使ってそれを補っている。確かに出てくる人たちはみな基本的にはいわゆる美男美女だが、汚れているため、そう見えないのである。

さて、こうなると気になるのはこの後だが、個人的には庵野監督によるゴジラが『シン・ゴジラ』1本で終わったように(まだ終わったのかどうかは分からないが)、山崎監督によるゴジラもこの1本で終わって欲しいと思う。そう、ゴジラはもはや日本映画の、というかハリウッドも含む全映画産業の共有財産なのだから。ゴジラというレガシーを使うことで、新しい才能が出てきてほしいし、既に世に出ている才能達も新たな可能性に挑戦してほしい。そう、今やゴジラは一つの「素材」なのである。その素材をどう味付けするか、そこにこそ監督の力量が問われているのである。



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